声なき蟬 下 空也十番勝負 青春篇 佐伯泰英

●声なき蟬 下 空也十番勝負 青春篇 佐伯泰英

 寛政7年1795年冬、渋谷重兼とその孫娘眉月は川内川で瀕死状態の空也を見つけ家に連れて帰る。眉月の献身的な看病もあり、2ヶ月後空也は目を覚ます。

 空也は重兼の家に滞在、約1年後彼らと一緒に加治木へ旅をする。野太刀流薬丸道場で、空也は薬丸新蔵と出会う。

 寛政9年1797年年明け、空也一行は島津藩演武館の具足開きに参加、空也は新蔵と立会い稽古をする。これをきっかけに、空也は外城衆徒に狙われることに。

 外城衆徒は御春屋衆有村勘左衛門配下となっており、有村は先代と現藩主の仲を裂こうとしていた。磐音が現藩主に送った手紙もその一つとして利用されるところだったが、有村の思惑と異なり、空也が生き残ったため、外城衆徒に空也を襲わせていた。

 有村たちは藩に終われる身となったが、勘左衛門の息子太郎次は眉月を誘拐し、空也に勝負を挑んでくる。曽木の瀑布で空也は太郎次たちを倒す。空也は眉月たちに別れを告げ、薩摩から旅立って行く。

 

 空也シリーズ開幕の下巻。上巻の最後で滝壺に落ち、霧子が空也は死亡したと判断された空也だったが、下巻では川内川で藩の実力者に発見され、生死を彷徨いながらも、息を吹き返すといったところからスタート。口をきかない空也に対し、重兼や眉月が誠意を持って対応、空也は念願の薩摩藩での剣術稽古を行う。

 おそらくシリーズのヒロインとなる眉月との出会い、良きライバルであり仲間になるであろう薬丸新蔵との出会いなどが描かれ、シリーズの全体像が少しずつ見えてきた感じがする。

 しかし上巻でも書いたように、南九州の土地勘がないため、ストーリー上で重要な意味を持つであろう場所のイメージがつかめなかった。磐音シリーズの隠れ里はあくまで創造上の土地だったであろうからこちらの勝手なイメージで良いのだろうが、このシリーズではそれはダメなのだろう。

 さらに時間の経過(下巻だけで2年近い時間が経っている)の記載が曖昧な部分や登場人物のセリフとの整合性がズレている?と思われる部分もあり、本来その重みが持つであろう時間経過もよくわからなかった。

 途中何度か江戸の磐音たちが登場する場面があり、懐かしく思うところもあったが。正直、空也シリーズ、ちょっと馴染めない感が強い。この先のシリーズはしばらく読まなくても良いかな(笑