奈緒と磐音 居眠り磐音 佐伯泰英

奈緒と磐音 居眠り磐音 佐伯泰英

 磐音シリーズ終了3年後に書かれたスピンオフ作品。

 「赤子の指」

 磐音、琴平、慎之輔9歳の頃の話(慎之輔のみ1つ年上)。3人は藩内の無人島魚島に泊まるが、そこへ坂出進太郎がやってくる。進太郎が琴平の諸星道場入りにかこつけ琴平を痛めつけようとするのを磐音が助ける。島から戻った3人は生まれたばかりの奈緒と対面する。

 「梅雨の花菖蒲」

 12歳となった3人が中戸道場入りを許される。磐音の家に遊びに来ていた奈緒と舞。そこへ琴平がやってくるが、縁者の永崎平助とその借金取りも一緒に家へ。その借金取りを磐音が成敗する。

 「秋紅葉の岬」

 17歳となった磐音たち。豊後国で行われる18歳以下の若侍たちが参加する「豊後申し合い」に出場することに。試合に向け稽古をしている際に慎之輔から琴平の父が病気だが医者に診せていないことを聞いた磐音は父正睦に頼み、琴平の家へ医者を向かわせる。試合では琴平の意外な活躍もあり見事優勝する。

 「寒梅しぐれ」

 磐音22歳。雪の日道場で中戸と二人雪見酒を飲みながら話をする。藩の国家老宍戸文六の悪政が酷くなって来ており、反宍戸派や磐音は狙われ始める。江戸行きを命じられた中居半蔵も狙われるが、磐音が助ける。磐音が隠れていた寺へ赤星左源太と坂出進太郎がやってくるが、磐音は返り討ちにする。

 「悲劇の予感」

 24歳となった磐音は江戸へ。佐々木道場に入門し、玲圓に厳しい指導を受ける。琴平の父が宍戸に隠居を命じられるが、江戸にいる磐音の計らいで助かることに。磐音は江戸で修学会を開き仲間を募る。

 

 やはり人気シリーズのためか、スピンオフが3年後に刊行。シリーズの前の時代の磐音とその仲間たちが描かれる。奈緒が生まれた日、幼い頃の約束、そして若い磐音が剣術を目指し始める。本シリーズであまり描かれなかった磐音、琴平、慎之介の幼い頃からのエピソードも盛りだくさん。シリーズファンにはたまらない作品となっている。

 シリーズの中でちょっとでも前振りがあったエピソードならもっと深みが出たと思うが、そこは仕方なしか。幼い磐音がもうすでにファンが知っている「坂崎磐音」を担っているのがちょっと可笑しい。幼くして人間出来過ぎ(笑

 他にもスピンオフが出ているようだ。やはり空也シリーズよりもこちらが読みたいと素直に思う(笑