本所おけら長屋 畠山健二

●本所おけら長屋 畠山健二

 おけら長屋の騒動を描いた短編集。

 「だいくま」

 大工の熊五郎ことだいくまに長屋の皆が上手く騙される。みんなでだいくま一家をとっちめてやろうとすると、だいくま一家が心中したと知らせが入る。そいてその縁者が金をせびりに来るが…

 「かんおけ」

 長屋の左官八五郎の娘お糸の友達、閻魔長屋のお幸が父の病気のためにした借金の身代わりとして女郎となることに。しかし病気の母親お菊に会いに逃げて来る。

 長屋の浪人鉄斎はスリにあった東州屋善次郎を助け、女スリの手に怪我を負わせる。

 お幸を助けるために、長屋の面々、東州屋、女スリが動く。

 「もののふ

 万造と松吉が仇討ちを探す清水寿門と出会う。鉄斎が師範代をする道場の門弟、京谷信太郎と内田重計に仕官の話が持ち上がる。寿門が京谷と内田の果し合いの場に立会い、二人の戦いを止める。仕官の行方、寿門の仇討ちは…

 「くものす」

 長屋のたが屋の佐平が丁半博打にのめり込む。負けて居酒屋で飲む佐平の前に老人が現れ、博打について講釈する。その後、佐平は博打で金を失い自殺しようとしている伊三郎と知り合い、彼のために50両をかけた大勝負に挑む。その場にいた老人のとった行動は…

 「おかぼれ」

 長屋の手代久蔵は隣に住むお染に惚れており、盗み聞きをしていた。ある時久蔵はお染の所に来た客の話から、彼女が盗人の仲間だったことがあり、今それを理由に脅されていることを知る。困った久蔵は万造と松吉に相談、久蔵は一世一代の大芝居を打つ。

 「はこいり」

 長屋の佐平の妻お里は成戸屋に奉公している。その店に本家のお嬢様お静を預かることになった、お静は箱入り娘のため店で騒動ばかり起こしてしまう。お里は店からの帰り道で店の手代美濃吉と会う。彼は博打で店の金を三両横領してしまっていた。ある時お静は店で浪人相手に無礼を働いてしまい、それを納めるために美濃吉が浪人に金を差し出すが…

 「ふんどし」

 長屋対抗の相撲大会が開かれることになり、万造と松吉は八五郎、佐平、喜四郎を担ぎ上げ大会に出ることに。

 長屋の表具師卵之吉の娘お千代が湯屋で男に襲われ子供を身籠ってしまう。お千代が久蔵に惚れていることを知った万造と松吉は久蔵にお千代と一緒になるように、と話す。久蔵は話を受け入れるが、相撲大会で優勝したら、という条件を出す。順調に勝ち進んだおけら長屋だったが、決勝戦前日の祝いの品で食あたりとなり、3人は参加不可能に。代わりに万造、松吉、久蔵が出場することになるが…

 

 偶然このシリーズのことを知り、落語好きな自分は早速飛びついた。これが見事に落語。落語の世界そのもの。それが小説になっているだけでなく、一話一話が一筋縄ではいかず、必ず一捻りある話になっている。しかもそれが短編ながら見事に解決して一話が終わる。これを原作として落語として噺家さんに喋って欲しいぐらいだ。

 長屋ということで登場人物も多いが、見事にキャラも立っている。この本はシリーズの第1巻ということで、登場人物紹介も兼ねているが、その性格などをわかりやすくするための事件も次々と起こり、見事に解決していく。

 あまりに出来が良い小説でビックリ。しかも短編でスイスイと読める。既に十数冊のシリーズとなっているので、この先じっくりと読んでいきたい。あぁ楽しみだ。