本所おけら長屋 二 畠山健二

●本所おけら長屋 二 畠山健二

 「だいやく」

 前作の「ふんどし」で身籠ったお梅も7ヶ月に。島田の元へお梅を襲った千吉が現れお梅に会いたいと言い出す。一方万松は父親になることに不安な久蔵のために、お梅を襲った男を仕立て上げる芝居打つことに。何も知らない島田が千吉の元へ。万松の芝居は久蔵にバレていたが…

 「すていし」

 ニセ占い師雲堂庵竹前、高学、俊学が隠居の与平をだまし金を巻き上げる。そのことを知った島田は万松に占い師のことを調べさせ、偽物であることを見抜く。島田たちはニセ占い師たちを同じ方法でだまし、金を奪い返す。

 「まよいご」

 万造が仕事帰りに勘吉を拾ってくる。自分も捨て子だった万造は勘吉の親を探し、小間物問屋北総屋の子だとわかり届ける。しかし勘吉は北総屋の実の子ではなく、貰い子で、その後実の子供が生まれたためひどい扱いを受けていた。夜勘吉は万造の家に戻ってくる。島田は偶然にも勘吉の実の親を知っており、幼い頃に神隠しにあったことを知る。それは誘拐だった。島田は勘吉のために動く。

 「こくいん」

 島田の元勤めていた黒石藩の藩主高宗が島田の家を訪れる。島田が留守だっため高宗は長屋の住民と酒盛りをする。回向院前の煮売屋おけい婆さんと孫娘おたまは店でゴロツキに脅されていた。ゴロツキは巾着を盗まれたと訴える。その場に呼ばれた高宗はお付きの真之介を人質に差し出しその場を収める。一方島田は藩のお目付工藤と会っていた。次席家老狩野が密貿易をしていると打ち明けられ不正を暴く手伝いをしてほしいと頼まれる。ゴロツキたちが探している巾着に不正の証拠となる刻印が入っていることと睨んだ島田は、巾着を盗んだ少年京太に会う。

 「あいおい」

 八五郎の女房お里はケンカをしてお染の家へ逃げ込む。八五郎は師匠文蔵の元での修行時代後継を巡って為三郎とコテ勝負をしていた。後継=師匠の一人娘お豊との結婚だと考えた為三郎はわざと勝負に負けていた。お里は万年長屋に移り八五郎と一緒になった時のことを思い出していた。八五郎の娘お糸は八五郎にお里のどこに惚れたかを尋ねる。それをお里も聞いていた。文蔵は未だ独り身の為三郎とお豊のために為三郎ともう一度勝負をすることに…

 「つじぎり」

 本所で辻斬りが発生。長屋の佐平も被害にあい、聖庵堂で治療を受けていた。万松と八五郎はバカの金太を囮に辻斬りを捕まえようとする。そんな時島田が辻斬りの疑いをかけられ捕まってしまう。長屋の住民は島田を助けるために動き出す。万松と八五郎は島田が指南役をしている誠剣塾の門弟と組んで辻斬りを捕まえようとする。徳兵衛は刀屋から情報を得る。久蔵と辰次は島田が捕まった際の目撃者丑松について調べる。お里、お染、お奈津は辻斬りの着ていた着物柄を古着屋で調べる。皆の情報から辻斬りは一柳半十郎と判明、その手助けをしていた丑松に罠を仕掛ける…

 

 おけら長屋シリーズの2作目。前作に劣らず見事な短編集となっている。事件を解決する「すていし」「こくいん」「つじぎり」の3作品も楽しいが、人情話となっている「だいやく」「まよいご」「あいおい」の3作品も素晴らしい。そのまま落語の人情話になりそうな話。

 2作目となり、登場人物のキャラも固まってきている。何かと騒ぐ万松コンビ、事件解決の中心となる島田。女性陣も魅せてくれる。「あいおい」のお里の不安な気持ちは年齢が行った人間なら誰しも一度は思うこと。

 いやぁ楽しいシリーズだ。寝る前に読むのにちょうど良い。