鬼平犯科帳 第7シリーズ #12 あいびき

第7シリーズ #12 あいびき

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 お徳は花売りを待っていた。いつもの花売りから買う花には付け文がされていたからだった。それは神主朋斉からのものだった。二人は出合茶屋で密会する。朋斉はお徳に図面を持ってくるように願う。それはお徳の夫で大工仁兵衛が普請したお店の図面で、お徳はそれを写し取って朋斉に渡していた。朋斉は江戸で一二と言われる仁兵衛親方の図面を真似した家を田舎の父親が作りたがっているという理由でお徳に無理をお願いしていた。色男の朋斉に頼まれたお徳は断れなかった。

 両替商相模屋に盗賊が押し入り奉公人が一人殺される。鬼平は最近起きた伊勢屋、越後屋に押し入った盗賊と同じ一味の仕業だと考える。パッと見た目に金蔵とわからない場所にあるのをこの盗賊はあっさりと見破り金を奪っていたためだった。店の主人の話から普請したのが仁兵衛だとわかる。鬼平は伊勢屋、越後屋の普請したのが誰かを調べさせる。

 鬼平は仁兵衛のもとを訪れ、相模屋の一件を話す。仁兵衛は自分の身内に悪い奴はいないと怒る。鬼平は図面がまだ仁兵衛の元にあることを確認する。そして忠吾に仁兵衛と一緒に仕事をした仲間、仁兵衛のもとを辞めた大工を調べさせる。

 お徳は鬼平が来たことで自分のしたことを恐れ朋斉に話すが朋斉は否定する。二人が出合茶屋で会っていたのを文吉に見られてしまう。文吉は仁兵衛のもとを首になった元大工だった。文吉はお徳に声をかけ、10両を払うよう脅す。お徳は着物などを売って金を作る。

 粂八たちの調べで賭場に出入りしている文吉の名前が上がる。鬼平は文吉が仁兵衛のもとを放逐されたのが、相模屋の普請の前年であることから辻褄が合わないと話すが、彦十粂八に文吉を張り込むよう命じる。

 文吉は朋斉も脅し金を脅し取っていた。文吉はその金で賭場で遊ぶ。その賭場で粂八は文吉と仲良くなる。彦十はお徳を脅す文吉を見かける。文吉はお徳を脅し今度は20両を払えと要求する。鬼平は報告を受けるが、文吉がお徳を脅すネタがわからなかった。

 お徳は店の金に手をつけ20両を用意し文吉に会いに行く。しかしその場で文吉は何者かに刺されて死んでしまう。驚いたお徳は家に帰り、お金を店に戻す。そこへ花売りの花が届き付け文がしてあった。

 盗賊改方は朋斉を見張る。彼は盗賊たちがいる宿へ行く。そこにいたのは盗賊疾風の陣内だった。彼は配下の者に文吉を殺させていた。そして朋斉に次の店の図面をお徳に持って来させるように話す。朋斉は断ろうとすると、そこへ鬼平たちが踏み込む。その時お徳は出合茶屋で朋斉を待っていた。

 翌日鬼平は仁兵衛の家へ行く。そこでお徳と話すが、仁兵衛が留守と聞き家を後にする。何事もなかったように振舞っていたお徳を見て、鬼平は忠吾にそれにしても女は怖いと話す。

 

 鬼平では珍しい、推理小説でいう倒叙タイプの話。夫ある妻が美男子の若い男に惚れ夫の仕事図面を手渡してしまう。その店に盗賊が入り、夫の元へ鬼平が現れ妻の不安は爆発する。

 倒叙タイプの話なので、鬼平たちがいかに犯行の内幕を暴くかが焦点となるが、夫の元部下を洗っているうちに文吉の名前が出て来てあとはいつも通りの展開。話としてはそれなりに面白く、ドラマ化が遅れた理由がよくわからない。

 ただ文吉と仲良くなった粂八が珍しく鬼平にその過程で文吉の財布を盗み、しかも女郎屋の金を奢るためにそこからいくらか失敬した、と告白する場面がある。これまでの話でも似たようなことはいくらもあっただろうに、この場面は鬼平にはちょっと珍しいと思える。強引に推測すれば、このような場面を入れなければいけないほど、原作が短いのではないだろうか。朋斉とお徳の出合茶屋のシーンもちょっと長いような気もするし。そう言えば、最近読んだ江戸のことを記した本に記載があった、湯屋の二階で彦十が将棋を指す場面も出てくる。江戸庶民の憩いの場だったそうで。

 しかし竹本孝之にしろ、桜木健一にしろ、三遊亭金馬にしろ、とても懐かしい役者さん落語家さんが出演しているのにちょっと驚いた。1970、80年代によくTVで見た顔ぶれだ。本当に懐かしい。金馬さん(現金翁)まだご存命なのね。またTVで見たいなぁ。