カラット探偵事務所の事件簿2 乾くるみ

●カラット探偵事務所の事件簿2 乾くるみ

  シリーズ2作目の短編集。前作は6編だったが、今作は7編。

 

 「小麦色の誘惑」

 古谷の従兄弟の高校生が、兄たちと遊んだ際にハート型の日焼けができるイタズラをされる。その犯人を突き止めて欲しいと依頼される。ポイントは「サンオイルの成分」

 

 「昇降機の密室」

 カラット探偵事務所のあるビルでエレベータ点検が行われる。その時間帯に4階のデザイン事務所からあるものが盗まれ、捜索を依頼される。ポイントは「ヘビーな事件」

 

 「車は急に…」

 依頼者のために車を他の駐車場に移動させた井上がその駐車場の入り口で揉める二人に出会う。古谷はその事件に興味を持ち現場へ行くことに。ポイントは「映画の料金は高い」(笑

 

 「幻の深海生物」

 ネット検索で見つけたページが示しクイズの答えの魚を特定して欲しいとの依頼。古谷はそのページを作成した人間に会いに行く。ポイントは「脂肪、燃焼、深海、模様、釣針、地域」

 

 「山師の風景画」

 長い間音信不通だった弟が死亡したと知らせを受け、その友人が絵を持ってきたのだが真相を確かめて欲しいとの依頼。ポイントは「諏訪湖を描く画家、科学が絵を壊す」

 

 「一子相伝の味」

 井上の前職場での後輩が食堂のソースに関わる謎を解いて欲しいと依頼してくる。ポイントは「のれんに描かれたマーク」

 

 「つきまとう男」

 探偵事務所のあるビル2階のパブ竜宮城の西田カレンがストーカー疑惑の犯人を突き止めて欲しいと依頼してくる。ポイントは「不可能犯罪」

 

 

 このシリーズは、現代にホームズのような探偵が実在したら…と思わせる設定である。当然のことながら、謎解き専門の探偵へ依頼されるような事件はあまり多くなく、あったとしても今作のような事件が多いだろうという皮肉かもしれない。

 つまり大掛かりな謎はなく、日常生活の中で起こりそうなちょっと不思議な事件、を探偵古谷が解決して行くパターン。そのため、スゴい驚きはないが、解決シーンを読んでクスッとなるものが多い。

 また、前作もそうだったがこの作者は言葉遊びのレベルが高い。「幻の深海生物」は唸る作品だった。なるほど、そんな視点で言葉を観ている人がいるのかと驚いた。

 一方でラストの「つきまとう男」は、ホームズのアイリーン・アドラーまで出してきての「西田カレン」だったが、ちょっと肩透かしだったかな。まぁ仕方ないか。

 前作の最後にあった驚きのトリック、今作でどう扱われるのかと思い読み進めるが、それに触れたものは出てこない。あれ?と思っていたところへラストの「つきまとう男」の「P」と「E」。あぁなるほど、そういうことだったのね。ダメじゃん、次も読みたくなっちゃうじゃん(笑