東京家族

●370 東京家族 2012

 広島の島に住む平山家の年老いた両親が子供たち(長男、長女、次男)が住む東京へ出てくる。新幹線で品川に着いた両親を迎えに次男が車を出すが、間違えて東京駅へ行ってしまい、両親はタクシーで長男の家へ。

 長男の家に兄弟が揃い皆で食事をする。そのまま両親は長男の家へ泊まる。翌日長男が両親をドライブに連れて行こうとするが、医者をしている長男の元へ急患の知らせが入りドライブは中止となってしまう。

 次に両親は長女の家へ泊まりに行く。美容院を経営する長女も忙しく両親に東京案内ができないため、次男に連絡、次男が両親を東京見物に連れて行くことに。長女は夫と相談し、両親を横浜の高級ホテルに泊めることに。両親はホテルに泊まるが高級すぎて落ち着かない。そのため両親は2泊3日の予定を取りやめ、長女の家に戻ってしまう。しかしその日は長女の家で町内会の集まりがあるため、両親を家に泊めることができないと言われてしまう。父親は東京に住む友人の案内で亡くなった友人宅へ。母親は次男の家に行くことに。

 父親は亡くなった友人宅を訪れた後、案内してくれた友人と居酒屋へ。長男から禁止されている酒を飲んでしまう。母親は次男の家へ行くが、そこに次男の恋人が現れ紹介される。その夜母親は次男の恋人と多くの話をする。翌日母親は恋人に何かの時のためにとお金を渡す。

 そして両親が長男の家に戻ってくる。しかし母親は階段の途中で倒れてしまい病院へ。長男の知り合いの医者に診てもらうが、持って明日の早朝だろうと診断されてしまう。集まる兄弟たち。医者の見立て通り、翌朝早朝母親は亡くなってしまう。

 母親の火葬を済ませ父親は広島へも帰る。次男と恋人も一緒について行く。そして実家で葬儀が行われ兄弟が揃う。しかし天候が悪くなり、長男夫婦と長女はその日のうちに帰ってしまい、次男と恋人が実家に残ることに。

 数日が経ち次男と恋人も東京へ戻ることに。そのことを告げた恋人に父親は礼を言い、母親が30年来着けていた腕時計を形見だと言って渡す。2人は帰って行く。実家では父親が隣の娘と会話しながら普段通りの生活を送っていた。

 

 山田洋次監督が小津安二郎監督にオマージュとして作った作品。オリジナルを観たのは随分と昔なのでよく覚えていない。それでも田舎から子供たちに会いに来た老夫婦、という設定や父親と息子の嫁の愛情などは覚えていたが。

 オマージュ作品なので、いつものような山田監督の明るさはない。前半、子供たちの家で邪魔者扱いされる老夫婦があわれだし、ホテルに泊まってもらおうとする長女の考えも痛々しい。救いは次男の恋人蒼井優で、これがオリジナルの原節子さんの役割かと思うが、蒼井優に救われたのは母親でオリジナルとは異なるのかな?

 後半、母親が倒れてからはさらに暗いイメージとなる。病院での診察、早朝の死去、田舎に戻っての葬式、葬式後の遺産分け。以前観た時は自分の母親が元気だったのでそんなに感じなかったが、現在母親も弱ってきているので、この後半は観ていて辛かった。

 

 山田監督が大事にしている映画作りの基本、観終わった後に元気になるものを、というメッセージが、オマージュであるこの映画では出来なかったようだ。その埋め合わせにこの映画のキャストをそのまま使った「家族はつらいよ」を作ったのかしら?