眼下の敵

●377 眼下の敵 1957

 第二次世界大戦中の南大西洋沖、アメリカの駆逐艦ヘインズが航行していた。乗組員は新しい艦長が素人だとバカにしていた。

 レーダーが潜水艦を発見、艦長は直ぐに追うように指示。潜水艦はドイツのUボートだった。Uボート側でも駆逐艦を確認、進路を変更し駆逐艦を欺こうとする。艦長はそのままの進路をとり、Uボートに騙されたふりをする。Uボートは進路を元に戻す。艦長は翌早朝Uボートとの遭遇を想定し戦闘態勢をとる可能性を示唆する。

 Uボート側の任務は暗号の受け取りでそのため浮上していた。ただUボートの艦長は息子を戦争で失っており、ナチスへの嫌悪感を抱いていた。

 翌朝駆逐艦Uボートの姿を確認。潜水艦は潜行を開始する。駆逐艦の艦長はUボートに先に攻撃をさせ、再攻撃の準備の間に攻撃を仕掛けるつもりだった。Uボート駆逐艦を攻撃、艦長は寸前にUボートの攻撃を回避し、攻撃を仕掛ける。Uボート側も潜行距離を変えるが駆逐艦は精密に狙って爆弾を落とす。Uボートは偽装気泡を排出しつつ逃亡、駆逐艦レーダーはUボートをロストしてしまう。

 艦長はUボートの進路を予測、そこへ進路をとる。その間に本部から敵艦隊が向かっているとの知らせが入る。Uボートは艦長の読み通りの場所に現れる。駆逐艦は攻撃を開始、Uボート艦長は潜水艦の能力を超えるが海底へ潜行、そこへとどまることに。

 艦長はUボートはそこにいるはずだと見抜き海上で待機。時間が経過し、Uボート側は移動を開始する。それをとらえた駆逐艦Uボートを追うことに。しかし艦長は敵の艦隊が迫っていることから時間稼ぎのために1時間ごとの攻撃を指示。Uボート艦内にも焦りが出始める。艦内の喧嘩を納めたUボート艦長はレコードをかけ歌を歌わせ乗組員の士気を高める。駆逐艦側はその音をとらえており、攻撃を継続する。

 Uボート艦長は駆逐艦の攻撃時の移動の癖を見抜き、魚雷で一気に勝負をつけることに。魚雷全弾を発射し駆逐艦は損傷を受ける。艦長は一部の乗組員を残し退避を指示する。Uボートは海面に浮上、5分間の退艦猶予を与えるが、その間に駆逐艦は最後の攻撃を仕掛ける。駆逐艦Uボートに突撃、両艦とも航続不可能となり全員退避、Uボートは自爆装置を作動させる。

 皆が避難する中、艦長はUボートの艦長のためにロープを投げ助け出す。二人ともが助かった後、両艦とも沈没する。二人の艦長はアメリカの船の上で会話をする。

 

 これは初見だったが、見事な一本。戦争映画はあまり好みではないが、これは傑作と言っていいだろう。駆逐艦Uボートの戦いを描いた映画だが、実情は両艦の艦長による頭脳戦。お互いの次の一手を読んで戦う様は将棋やチェスを思い起こさせる。

 途中に描かれる二人の艦長の戦争に対することへの思いも良い。決して国のために戦っているわけでもなく、個人的な復讐のためでもない。むしろ戦いを毛嫌いしている二人が全力で戦っていることに共感が持てる。駆逐艦の艦長が戦闘中に怪我した乗組員と会話するシーンも良い。戦争の残酷さをさりげなく表現している。

 もちろんラストの二人の会話も素晴らしい。健闘を讃え合うわけではなく、それでいて相手の人間性を讃えている。

 

 ロバートミッチャムはフィリップマーロウのイメージが強かったが、さすがにこんな冷静な強い男を演じさせたら上手い。彼のマーロウものがまた観たくなった。