マディソン街の千一夜 オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション

●マディソン街の千一夜 オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション

 オーヘンリーの全8編からなる短編集。特に良かったものを2つ。

 

 「あやつり人形」

 医師ジェームズは開業医として成功していたが、天才と呼ばれた金庫破りでもあった。ジェームズが仲間とともに金庫破りをし800ドルを稼いだ夜、道を歩いていると黒人のばあやに呼び止められ助けを求められる。

 家についていくとチャンドラーという主人が死にかけていた。ジェームズはばあやからこの男は妻に酷い仕打ちをしていると聞く。彼は男にニトログリセリンを打ち、部屋にあった金庫を開けるが中は空っぽだった。やがて男は死に、ジェームズはその妻に、ご主人が奥さんのために金庫の中の800ドルを残していたこと、これまでのことを謝罪していたことを告げ、家から去っていく。

 

 「それぞれの流儀」

 マロニーは元警部だが、今は職も失い落ちぶれていた。若者マレーは富豪である叔父から勘当され落ちぶれていた。二人は仲良くなった。

 ある時マロニーはこんな状況から抜け出るために、女にプロポーズするがフラれてしまう。マレーはマロニーのことを警察に売ろうとするが、警察に相手にされなかった。

 マロニーはギャングから元上司をハメる企みに誘われるが、仲間を売ることだけはしないと突っぱねる。マレーは叔父が進める結婚を承諾するなら許してもらえると聞くが、あんな女と結婚するぐらいなら、とその話を突っぱねてしまう。

 

「マディソン街の千一夜」富豪が浮浪者にご馳走をしお返しに女の顔を描いてもらうが

「都会の敗北」ロバートは富豪の娘と結婚、妻を自分の田舎に連れて帰るが…

「いそがしい株式仲買人のロマンス」株式仲買人ハービーは速記者にプロポーズするが

「愛の女神と摩天楼」NYで働くジョーがデイジーにプロポーズするが恋敵が…

「パレードのしくじり」チャンドラーは10週に一度の贅沢の日、若い女性に出会う

「ジャングルの青二才」西部からNYに来た二人の詐欺師がJPモルガンと会うことに

 

 オー・ヘンリーの短編集6冊目だが、初めて表題のタイトルの小説をピックアップしなかった。「マディソン街の千一夜」は富豪が浮浪者にご馳走し、そのお返しに写真の女性を見せその顔を描いてもらうのだが、浮浪者はモデルの本質をなぜか描いてしまうという特徴を持っていた。富豪は出来上がった絵を怖くて見ることができず、別の絵描きに見てもらう。絵描きが絵の顔は天使のようだと話すと、富豪はそれは私の妻です、と喜ぶ、という話なのだが…。伏線がしっかりしているので、絵のモデルが富豪の妻であることは推測できたし、結果的に顔が天使のように描かれていて、疑いを持っていた富豪が安堵する、という話なんだろうけど。富豪、ちょっと気が小さ過ぎ(笑

 上で取り上げた2作もスゴい傑作、だというわけではないが、登場人物である男たちの流儀がカッコよくて取り上げた。他の作品も小粒ながら良いオチの話が多い。ちょっとひねった作品が多い感じもしたが、ラストの「ジャングルの青二才」のオチがキレッキレでさすがに笑った。

 残りは2冊。