私は告白する

●401 私は告白する 1953

 ケベックの街で夜、殺人事件が起きる。犯人は教会へ。犯人は教会で夫婦共々働く移民のケラーだった。彼はローガン神父に殺人を犯したことを告白する。相手はビレットでケラーはビレットの家の庭仕事をしており、金を盗むために法衣を着てビレットの家に入ったが、見つかり警察を呼ばれそうになったため殺人を犯したのだった。

 ケラーは妻にローガン神父に告白したことを告げる。妻はローガンが警察に知らせるのではと心配するが、ケラーは神父には守秘義務があるため警察には何も言わないとケラーは答える。

 翌朝ケラーはいつも通りビレットの家へ。教会ではケラーの妻が朝食の準備をしながらローガンのことを気にかけていた。ローガンはビレットの家へ行く。そこでけ刑事にビレットと約束をしていたと話す。刑事は家を出たローガンが女性と話しているのを偶然目撃する。ローガンが女性にビレットが死んだことを告げると女性はこれで自由だと話す。女性はルースといい、議員の妻だった。

 ケラーが教会に戻って来る。ローガンと二人きりになったケラーはなぜビレットの家に来たのかと尋ね、自首するのは嫌だと話す。

 警察は手がかりがなく困っていた。そこへ昨夜ビレットの家から出て来る人物を見たという少女たちが連れてこられる。彼女たちは昨夜11時から11時半の間にビレットの家から神父がでて来たのを目撃したと証言する。警察は街にいる神父たちの昨夜の行動を調べる。

 ローガンが警察に呼ばれ、今朝ビレットの家の外で話していた女性のことを聞かれる。さらに昨夜の行動についても。ローガンは女性のことも、昨夜会っていた相手のことも黙秘する。刑事は神父がビレットの家から出て来たという証言があったことを告げる。

 刑事は検事に連絡をする。検事はルースの家のパーティに参加していた。検事は殺人事件の容疑者としてローガンの名前を夫婦に告げる。皆が帰った後、ルースは夫と話し始める。ルースは今でもローガンを愛しており、夫のことは愛していないと話す。ルースはローガンに連絡し、翌日会う約束をする。

 翌日二人は会うが、警察に尾行されていた。ルースは警察に呼び出される。警察にルースとその夫、ローガンが集められる。その場でルースは事件当夜ローガンと9時から11時まで会っていたこと、ルースとローガンは戦争前恋人だったが、戦争に行くことになったローガンはルースに別れを告げたこと、ルースは今の夫と結婚したこと、戦争から戻って来たローガンとルースが会った時に嵐が来て他人の家の東屋で一夜を過ごしたこと、その家がビレットの家で彼からその後脅迫を受けていたこと、を全て話す。検事や刑事はローガンの疑いが晴れたことを確認し、3人を帰すが刑事は検死報告から犯行時間は11時半だったと話す。

 翌日ルースの夫に警察から連絡が入る。ルースの証言と犯行推定時間から、ローガンの犯行である疑いが強まったこと、つまりルースの証言がローガンに不利に働いたことが知らされる。ルースはローガンの元へ行き全てを話すが、何もできることはなかった。警察に呼ばれたローガンのことをケラーが不審がる。ローガンが逮捕されそうだと聞くと自分が犯人であることをローガンが喋ってしまう、あなたは臆病者だと話すが、ローガンは何も言わなかった。ケラーは危なくなったら拳銃でローガンを殺すと言い出す。

 ローガンは教会から出かける。刑事がやって来るが、ローガンは留守だった。ローガンは警察に現れる。

 ローガンの裁判が始まる。犯行時に着ていたと思われる法衣が彼のトランクから見つかる。ケラーも証言に立ち、真実とは異なることを証言する。検事はルースも証人として呼び、ローガンとルースの関係を話させ、ローガンには神父としての倫理や責任を追及する。ローガンは事件当夜のことを聞かれるが、自分の行動についてのみ話し、ケラーのことは一切喋らなかった。

 陪審員たちによる評決が下り、証拠が何もないため無罪となる。ローガンは釈放され裁判所から外へ出るが、市民の目は冷たく彼を見ていた。車に乗り込もうとするローガンを市民たちが非難する。裁判中から彼を見ていたケラーの妻がローガンに駆け寄り、ローガンは無実、主人が…と言いかけたところ、ケラーが拳銃で妻を撃ち殺し、ホテルに逃げ込む。刑事とローガンはホテルへ。ケラーはホテルの従業員も撃ち、ホールへ逃げ込む。そこで刑事に撃たれてしまう。ローガンはケラーに駆け寄り話しかけるが、ケラーはローガンが有罪だったほうが良かっただろうと話し、ローガンを撃とうとする。刑事が再度ケラーを撃ち、彼はローガンに許しを請いながら死んでしまう。

 

 ヒッチコック円熟期の1本とされる作品。神父の守秘義務がテーマであり、日本人の自分には少し違和感があったが、これがキリスト教の理想なのかなとも思った。単に犯人の告白を黙っていただけではなく、自分が容疑者となってしまうのがさすがヒッチコックといったところ。

 途中から当の犯人本人から責められても、裁判が不利な状況になっても、告白については何も語らない主人公。実際にこんなことになったら、守秘義務なんてそっちのけになっちゃうんじゃないの。どうなんだろうか。

 映画冒頭からローガンとルースの関係が謎めいており、3分の2が過ぎたあたりでそれが明かされ、ローガンの容疑も晴れてめでたしメデタシ、かと思いきや、そのルースの証言がローガンに逆に不利なものになってしまう。見事な展開ですなぁ。

 ラスト、自身の良心からいたたまれなくなったケラーの妻の行動からの急転直下の展開もスゴい。ご都合主義的なところもあるが、映画として良い落としどころだったのでは。1時間半の短い映画だったが、見所は多く良作だと言える。