●掌の中の小鳥 加納朋子
加納朋子の駒子シリーズを読み終えてしまったので、別のものを読んでみた。
5編からなる連続短編集。「掌の中の小鳥」「桜月夜」「自転車泥棒」「できない相談」「エッグ・スタンド」の5編。
表題にもなっている最初の1編「掌の中の小鳥」だけは2章仕立て(SCENE1/2)。これが章ごとで全く別の話になっており、SCENE1で登場する冬城圭介がSCENE2で穂村紗英とパーティで出会う。2編目以降はこの二人の会話で物語は進行する。
各話での謎は
「掌の中の小鳥」〜圭介の学生時代の女友達の落書きされた絵と紗英の祖母との会話
「桜月夜」〜紗英の子供の頃の友人との狂言誘拐
「自転車泥棒」〜紗英の自転車から盗まれたバックミラー
「できない相談」〜紗英の友人が仕組んだまションの部屋消失
「エッグ・スタンド」〜圭介の幼馴染が起こした指輪盗難
謎はどれも事件と呼ぶほどの大きいものではなく、やはり「日常の謎」系と言える。
2編目以降はバー「エッグ・スタンド」で語られ、そこの女性バーテンダーや常連客も会話に参加してくることになる。
平凡に見えた事柄が事件を解く謎になっているのが共通した特徴。加えて、1編目で知り合ったばかりのふたりの恋が進展して行く様子も描かれ読者を楽しませてくれる。
残念なのは、2編目「桜月夜」で展開されるパターンがあまりに特徴的で〜二人の会話に登場するキャラクターがその後の展開に必ず絡んできているため、3編目以降での展開が予想されてしまうこと。一見関係なさそうに見える事柄もきっとこの後話に絡んでくるんだなと予想できてしまった。推理小説ではよくあることだけれど。
それでも「エッグスタンド」で交わされる会話はオシャレであり、凝った作りの話ばかりで意外な展開も十分楽しかった。
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