ホタル

●432 ホタル 2001

 山岡は鹿児島で妻と漁業をして生計を立てていたが、妻の病気のため遠出をすることはなくなった。

 一方北海道では藤枝が昭和天皇崩御を聞いた後、雪山へ登山しに出発する。

 昭和天皇崩御を受け、山岡の元に新聞記者が取材に来る。彼は特攻の生き残りだった。しかし山岡は何も答えなかった。

 藤枝は孫娘とともに知覧にやって来る。藤枝は山岡と特攻隊で一緒だった。知覧の母に会い、山岡宅へ連絡をするが山岡が留守だったため、藤枝は山岡に会わなかった。知覧の母は孫娘に特攻隊の仲間が出撃前夜、ホタルになってでもきっと戻って来ると話し、その翌日本当に皆の元へホタルが現れた話をする。山岡は藤枝のことを聞き、会わずに帰った藤枝のことを不審に思う。

 しばらく後、藤枝が雪山で亡くなったと連絡が入り、山岡と妻は葬式へ参加する。山岡は藤枝が知覧に来た際、会いに行けばよかったと後悔する。

 知覧に戻った後、山岡の妻の病状が悪化し入院することに。一方、知覧の母から呼ばれた山岡は知覧の母が仕事を辞めること、ついては特攻の仲間だった金山の遺品を遺族がいる韓国に届けて欲しいと頼まれる。金山は山岡の妻の許嫁だった男で、戦死していた。

 山岡は家に戻り探し物をしている時に、妻が遺書のような書置きをしているのを見つける。また医者から妻がこのままでは持って1年半だと宣告される。腎臓移植が必要と言われ、山岡は自分の腎臓が適応しているか検査を受けることに。

 そんな山岡の元へ藤枝の孫娘が訪ねて来る。藤枝が書き残したノートを持って来る。そこには昭和天皇崩御とともに自死を選んだ藤枝の思いが書き残されたいた。山岡は金山が残した遺言を思い出す。

 知覧の母の引退日がやって来る。藤枝の孫娘も参加する。その孫娘の前で知覧の母は涙の挨拶をする。山岡は孫娘に特攻隊時代の思いを語る。孫娘を見送った後、山岡は妻に金山の遺品を届けに一緒に韓国へ行って欲しいと頼む。

 二人は韓国の金山の遺族に会いに行く。厳しい対応をされるが、山岡は金山の遺言と遺品を渡す。金山の家族の墓参りをすると、そこへ一匹のホタルがやって来る。

 そして20世紀最後の年末、山岡と仲間達は山岡の漁船を燃やすために集まっていた。山岡は炎に包まれる船を一人で眺めていた。

 

 健さんの映画は随分観てきたつもりだが、これは初見。健さんがこんな戦争をテーマにした映画に出演していたとは。しかも昭和天皇崩御と特攻隊を組ませるとは。厳しいテーマのためか、全体的に明るさはない。

 さらに言えば、エピソードがとっ散らかっている感じも否めない。序盤にあった密入国してきた外国人の話や山岡の漁船の話など、伏線かと思いきやそのままにされてしまっていたり、藤枝の孫娘が山岡の元でしばらく過ごす時間もテーマからはピントが外れている感じ。

 アメリカにはベトナム戦争帰還兵の苦悩を描く映画をいっぱいあるが、日本にはこの手の映画はあまりないように思う。健さんを観たかったので観たのだが、観て良かったと思える一本。