レジまでの推理 本屋さんの名探偵 似鳥鶏

●レジまでの推理 本屋さんの名探偵 似鳥鶏

 青井くんは書店のバイト。仕事をあまりしない店長を助けながら働いている。その店に客が謎を持って相談に来る。青井くんは他のバイトとともに謎解きをしようとするが、解決するのは店長だった。以下の4編からなる短編集。

 

「7冊で海を越えられる」

 客の整理屋氏(バイト内でのニックネーム)が7冊の本のタイトルが書かれたメモを持って青井に相談に来る。恋人からもらったものだというが、何を意味しているのかわからないという。店長は7冊が店に揃っていたことなどから、メモの意味を解き明かす。

 

「全てはエアコンのために」

 島尻という客がバイトの池部を訪ねて店にやって来る。彼は引越しを池部に手伝ってもらったのだが、その際に本が1冊なくなったと主張する。しかし状況から池部が本を盗むことは不可能だと思われた。店長は書店員ならではの推理を披露する。

 

「通常業務探偵団」

 前章の事件がきっかけで人気作家蓮見喬のサイン会が店で開かれる。その翌日、店の入り口にぬいぐるみと、蓮見がサインしたポスターに落書きされているのが発見される。前夜、不審人物がいたこともあり、監視カメラの映像を見てみるが、ポスターへの落書きをするタイミングがないことに気づく。店長は青井くんたちとともに夜店の裏に張り込むことにするが…。

 

「本屋さんよ永遠に」

 青井くんがバイトしている書店は売り上げが伸びずに悩んでいた。店長も万引き犯を見逃すなどやる気がなかった。そんな中、返本する本の中に警告文が挟まれている事件が連続して起こる。気になった青井くんは夜店を見張るが…。

 

 Amazonからオススメされた一冊。著者があとがきで書いているように、大崎梢さんの「配達あかずきん」に触発されたものらしい。大崎梢さんの著書と同じように書店が舞台のため、内容が似通ってくるのは仕方ないだろう。1章、3章のネタはどこかで読んだようなものだし、2章のトリックは書店員ならでは、とはいえ、あまりに強引なトリック(笑

 それでもこの本が秀逸なのは最終章があるからだろう。それまでの3章が伏線そのものと言える文章表現となっており、最終章のトリックを見破れる人はいないのでは。最終章で描かれる「店長」の本屋に対する愛や書店の抱える悩みなど、グッと来るものがある。それも含めて見事な最終章と言える。

 注意書きがある文体も面白かったし、ちょこちょこ出て来るバイトや店長のキャラも抜群に面白い。シリーズ化して欲しいと思うが、最終章の出来が凄すぎるので、これ一冊で完結なんだろうなぁ。残念だけど。