愛と追憶の日々

●541 愛と追憶の日々 1983

 エマは母オーロラの過剰な愛を受け育つ。幼い頃に父を亡くしてからは二人暮らし。成長したエマは大学講師のフラップと結婚しようとするが、オーロラは猛反対。それでも二人は結婚。エマはオーロラと毎朝電話で連絡を取り合う。

 エマは幸せに暮らし子供も授かる。二人目の妊娠中にフラップが助教授になることとなり、街から引っ越し。母や友人から離れて暮らすことに。オーロラは、隣家の宇宙飛行士ギャレットとの仲を深め始める。

 子供も生まれ新しい生活が始まるが、フラップは仕事が忙しいという理由で家に帰ってこなくなる。金の工面にも困り始め、不満を募らせるエマはフラップと口論となる。3人目の妊娠中、エマはスーパーでの買い物で支払いの額を持ち合わせず、店員と口論となる。融資の件で知り合っていた銀行員サムがエマを助け、二人は不倫の仲となってしまう。その頃、フラップは学科長になる話が出る。しかしそれには引っ越しが必要で、サムと別れたくないエマは反対する。

 ある日家にフラップがいないため、大学に行ったエマはフラップが女学生と親密にしている場面を目撃、子供を連れて実家に帰ることに。オーロラは喜ぶが、フラップが迎えに来てエマは帰って行く。その時、ギャレットがオーロラに別れを告げにくる。

 フラップの新しい勤め先である大学へ3人目の子供を連れて訪れたエマだったが、そこであの女学生を目撃、フラップが新しい学校へ転職した理由が彼女であったことに気づく。その帰り道、子供と共に予防接種を受けたエマにシコリが見つかり、検査の結果悪性の腫瘍だと判明する。

 友人の誘いでNYへ行ったエマだったが、気分は冴えなかった。治療を続けるが効果はなく、エマの最期が近づく。エマにつきそうオーロラの前にギャレットが現れ彼女を励ます。フラップはエマと話し合い、子供達をオーロラに預けることに同意する。

 エマは息子たちに最後の話をし、息を引き取る。実家で行われた葬式に関係者が集まる。ギャレットはエマの息子を自宅のプールに誘う。

 

 見始めてすぐに、これは母と娘の物語だと感じた。母と娘のあまりに深い関係、男である自分には完全理解は難しいが、周りでそのような組み合わせを見てきたので、決して映画の中だけの話だとは思わない。父と息子ではありえない関係性を彼女たちは築き上げる。

 しかし観終わってあらすじを書いてみると、母娘の話であると同時に本作はエマの一生を描いた話だったのだと気づいた。つまり映画の中では30年ぐらいの時が流れている。これがわかると、子供の成長を映し出すことで、時が一気に経過したシーンが何度かあった理由もわかる。

 その一生を母の過剰な愛情を受けた娘の物語、そして彼女を見守った母親の物語。

 途中、母親の恋愛話も出てくるが、これはラスト、娘を失った母親を救済するためにギャレットがいるためだけのもののようにも見える。しかし、ニコルソンとマクレーンの老年の愛を描いたのも、この映画が名作となった理由の一つかも。

 親目線から言えば、ラスト、病室で息子に語りかけるエマの言葉が心に刺さる。まだまだ幼い息子を残して死を迎えなければいけない母親の本心がむき出しで迫ってくる。

 

 アカデミー賞を多数受賞している理由がよくわかる名作。