心の旅

●549 心の旅 1991

 ヘンリーは敏腕弁護士であり、患者マシューズと病院の裁判で病院側を弁護し無罪を勝ち取る。勝訴の祝いをした後、家に帰ったヘンリーは妻サラとパーティに出席、帰宅後、タバコがないことに気づいたヘンリーは近所の店にタバコを買いに行き、強盗に遭遇、2発撃たれてしまう。

 命は取り留めたヘンリーだったが、後遺症として、喋れず歩けず、さらに記憶障害まである状態だった。リハビリ病院へ移ったヘンリーは、療法士のブラットリーと共にリハビリを始める。そして会話も歩行もできるようになり、退院の日となるが妻サラや娘レイチェルのことを思い出せていないヘンリーは帰宅することを拒む。それでもレイチェルと話すうちに家のことを一つ思い出し、帰宅することに。

 家に戻っても記憶が戻らないヘンリーは金を持って家を抜け出してしまう。心配するサラだったが、ヘンリーは街で犬を買って無事帰宅する。仕事人間だったヘンリーだったが、事件後は家族との時間を大切にし始める。

 弁護士事務所のチャーリーはヘンリーのこれまでの功績を考え、仕事に復帰させる。自分が担当したマシューズの事件記録を読んだヘンリーは、患者側の訴えが正当であったことに気づき、同僚にそのことを告げるが、同僚はそれを否定する。

 ヘンリーはレイチェルと話す中で、彼女が学校の寄宿舎に入ることを望んでいないことを知り、サラに話すがサラはレイチェルのためだとヘンリーを説得する。レイチェルが寄宿舎へ行き、夫婦二人となり、二人は愛を確かめ合う。二人は散歩途中で、サラの友人に会いパーティに誘われる。出席したそのパーティでヘンリーは自分が仕事もできないのに復帰したことを悪く言われているのを聞いて落ち込んでしまう。

 そんなヘンリーの元へブラットリーが訪ねてくる。彼は自分の過去を話し、人の言っていることなど気にする必要はないとヘンリーを励ます。

 ヘンリーはレイチェルから学校生活への不安を書いた手紙を受け取り、学校に電話をするが、レイチェルとは話せなかった。家に着いた手紙を家政婦から受け取ったヘンリーはその手紙を見て、同じような手紙があったことを思い出し、その手紙を探す。そこには妻サラが浮気をしていたことが書かれていた。帰宅したサラを問い詰めるヘンリー。サラからそれが事実だと告白されたヘンリーは家を飛び出してしまう。会社に行ったヘンリーは資料を持って会社から出て街を歩く。なぜか気になったホテルに宿泊をするが、そこへ会社の同僚のリンダが後を追ってやってくる。リンダは自分とヘンリーが愛し合っていた、妻とも別れると言っていたと話し、それを聞いたヘンリーはショックを受ける。

 ヘンリーはマシューズの家を訪ね、裁判で明らかにしなかった証拠を見せ、夫人に謝罪する。さらにヘンリーは事務所に戻り、チャーリーに弁護士を辞めると話す。

 家に帰ったヘンリーはさらに謝罪、レイチェルを迎えに行くために学校へ行く。

 

 ハリソンフォード主演の作品だが、アクションはない(笑

 敏腕で冷酷にも思える弁護士が事件に巻き込まれ記憶をなくし、人間性を取り戻していく、という言わば単純なストーリー。しかし、感動的なはずのストーリーだが、先が読めてしまう展開がそのままストーリーとなっているためか、感動はあまりない、というのが正直なところか。

 ただ上手いと思わせるシーンもいくつかあった。ハリソンフォードがリハビリで歩けるようになったり、娘との会話で文字が読めるようになったり。事件後ずっと左足を引きずって歩くハリソンフォードはさすが。金に困っている妻サラにアドバイスをした友人が、パーティの場ではヘンリーを蔑んでいたのは、人間の怖さが表れている。復帰後のヘンリーに戸惑っていた彼の秘書が、会社を辞めるため別れを告げたヘンリーに見せる笑顔も良かった。なぜかクラッカー、リッツの絵を描き始めたヘンリーだったが、その意味が終盤に明かされたのには笑ってしまった。これらの中でも一番良かったのは、妻サラの元に帰ったヘンリーが発した言葉。付き合い始めの頃の話が見事に効いている。

 公開が1991年。のちにバブルが既に弾けていたと評される年だが、世の中はまだ景気が良く皆が浮かれまくっていた時代。こんな時に既に、地に足のついた生活こそ大事だというテーマを、スターであるハリソンフォードで製作しているアメリカは、やはり流石だと言わざるを得ない。