セントラル・ステーション

●550 セントラル・ステーション 1998

 ドーラはセントラルステーションで手紙の代書屋をしている。彼女の楽しみは、家にその手紙を持ち帰り、同じアパートに住むイレーニとその手紙の内容を読み返し、無駄だと思う手紙は捨ててしまうことだった。息子を連れた母親が、酒飲みの夫に出す手紙を読んだドーラはその手紙を捨てようとするが、イレーニはそれを止める。ドーラは仕方なく、保留ということで引き出しにその手紙をしまう。

 翌日その親子が再度やってきて、手紙の書き直しをしたいと話す。前日は息子が会いたいという内容だったが、その日は母親自身が夫に会いたいという内容に変える。代書が終わってその親子が駅から出るとすぐに母親が交通事故にあって死んでしまう。

 9歳の息子ジョズエは途方にくれ駅で寝泊まりをするようになる。見かねたドーラは彼を家に連れて帰る。ジョズエはドーラの家の引き出しで、母が頼んだ手紙を見つけ父に直接渡しに行くと言い出すが、父が住むのはとても遠い場所だった。

 ドーラはジョズエを知り合いの女性の家へ連れていく。その女性は、孤児を外国に里子に出す仕事をしていた。ドーラはその女性から大金を得る。その夜、家に帰ったドーラは新しいTVを購入、イレーニに自慢するが、イレーニはジョズエがいなくなったこととTVを購入したことから、ジョズエをどうしたのかとドーラに尋ねる。ドーラが正直に話すと、イレーニはその女性は、子供の臓器を売っているのだと怒る。ドーラはその話を聞き、翌日女性の家に行く。別の子供達を紹介すると嘘をつき家に侵入したドーラは隙を見てジョズエを助け出す。

 ドーラは女性の仲間が家に来ていることをイレーニへの電話で知る。ジョズエはドーラのことを信用していなかったこともあり、ドーラはジョズエを父の住む場所へ行くバスに乗せ、家に帰れないためにドーラも一緒に行くことにする。

 道中ジョズエの扱いに手を焼いたドーラは、休憩所で自分だけ降車し、運転手にジョズエの面倒を見ることを依頼する。しかしジョズエも降車していた。金のない二人は親切なトラック運転手に助けられ、ジョズエの父のいる場所を目指す。途中、ドーラはその運転手に好意を持ちその想いを伝えるが、運転手は二人を置いて去ってしまう。

 困った二人は、ドーラの腕時計を担保とし、乗合バスに乗車し、ジョズエの父のいる場所を目指す。なんとか父のいる家にたどり着くが、すでに父は引越しをしてしまっていた。ドーラはジョズエに辛く当たり、二人は離れ離れになってしまう。ドーラはその街で開かれていた巡礼者の祭に紛れ混んでしまい、疲れもあり倒れてしまう。ジョズエはそんなドーラに寄り添う。

 金もない二人は途方にくれるが、巡礼者たちが大勢いるのを見たジョズエが、ドーラに代書屋をやらせることを思いつく。二人で代書屋を始め大成功、金を得る。二人はその金で食事をし、祭の場で記念撮影もする。

 父の引越し先を訪ねるが、そこからも父はいなくなっており、行き先も不明だと言われてしまう。ジョズエは父を待つと話すが、ドーラは待っても無駄だと話し、ジョズエに一緒に帰ろうと話す。帰るバスの乗車券を買おうとするが、バスは翌日だと言われる。困っていると、ジョズエの父の息子だと名乗る青年が声をかけてくる。ドーラはジョズエのことは内緒にする。彼は二人を自分の家へ誘う。そこには青年の兄弟も一緒に暮らしていた。ジョズエは兄弟と仲良くなる。兄弟はドーラに父から来た手紙を読んで欲しいと頼む。兄弟は文字が読めないのだった。

 手紙には父は母を探しに行っていること、金を稼いで必ず帰ること、ジョズエの母やジョズエを今でも愛していること、が書かれていた。

 翌朝、ドーラは寝ている兄弟やジョズエに黙って家を出てバスに乗る。そしてジョズエへの手紙を書く。ジョズエはドーラがいないことに気づき、ドーラを探すが彼女が乗ったバスは既に街から遠ざかっていた。二人は、記念撮影した写真を見て涙を流す。

 

 何の知識もないままに観たが、なかなかの良作だった。

 冒頭、様々な人の語りを聞くこととなり、何事かと思うが、それが代書屋に頼む手紙の内容だとわかり納得。本編の多くは、その代書屋であるオバさんと少年のロードムービーとなる。

 とにかく導入部の上手さが素晴らしい。文字の読めない人々が多いことを見せる代書屋の客の多さ、決して善人ではないその代書屋の彼女、客として登場する母と息子、その夫であり父がどのような人物かをわからせる手紙の内容。そして二人の旅が始まる。

 その後も、単なる父親探しの旅で終わらず、ドーラの恋、無一文になった二人を救うジョズエの知恵、二人の喧嘩と和解、など見せ場も多い。そしてジョズエの兄弟の家でこれまた手紙が重要なキーとなる。

 ラストでは、途中の記念撮影が伏線であったことが示され、感動的な結末。

 国を問わず傑作が生まれると感じさせてくれる作品。