コレって、あやかしですよね? 斎藤千輪

●コレって、あやかしですよね? 斎藤千輪

 ネット放送の「あやかしTV」は不思議な現象にスポットを当てる番組。ADの香月都はディレクター倉橋匠とともに番組を制作する。視聴者からの投稿を取材していく中で、都は様々な不思議な現象と出会い、その真実をみることになる。以下の3編からなる短編集。

 

多摩川に現れた龍の謎」

 視聴者「不思議太郎」が投稿してきた、多摩川に現れたという龍の映像。都たちは不思議太郎こと橋元昴の家へ取材に出かける。橋元から龍の鱗も見せられるが、倉橋はその鱗に疑問を持つ。取材を続ける中で、近所にあった老舗着ぐるみ工房を見つけ話を聞くうちに真相が見えてくる。

 

「墓場に揺れる怪火の謎」

 千葉に住む女子大生早見圭が墓場を撮影した映像を送ってくる。そこには火の玉と思われるものが映っていた。映像を見た番組のコメンテーターの妖は、火の玉が一定の動きをしていることに気づく。都たちは現地に取材に行く。圭以外の目撃者を探すと、同じマンションの上の会に住む少年敦史と出会う。倉橋は敦史が火の玉の正体を知っていることに気づく。

 

「化け猫に祟られた公園の謎」

 世田谷に住む主婦久保田ミドリから公園に現れた化け猫の映像が送られてくる。いつも通り都が取材に行くことに。他の目撃者からの証言も得られ、都たちは公園に張り込む。そして映像の撮影に成功する。さらなる調査を進めると、公園の地主である佐竹幸代とその息子公男と出会い、この母子の中で公園の土地に関する問題が持ち上がっていることを知る。倉橋は真相に気づき、ある罠を仕掛けることになる。

 

 著者の「ビストロ三軒亭」シリーズが面白かったので、他の作品を読むことに。

 テーマは妖。ネット番組のAD都が主人公であり、毎回怪しい噂話の取材をするが…というお話。ファンタジー系の話かとも思ったが、読んでみるとある程度正当なミステリになっている。しかも毎回ハートフルなオチがつく。

 ネタバラシは書けないが、どの話のオチも良かったと思う。

 昭和時代に男の子だった自分には1話目のオチはぐっとするものがあった。単なるニセUMA話に終わらせていないのが良い。2話目のオチはさらに泣かせる。子供たちが懸命に守ろうとしたもの、特に男の子敦史のウソにはホロっとさせられる。最終話3話目も、ある意味子供がテーマか。幼い頃に住んでいた家の前にあった小さな公園のことを思い出した。

 

 「ビストロ三軒亭」とは異なる趣の話だったが、裏表紙には「シリーズ第一弾」と書かれている。2019年発刊の作品らしいが、ネットで調べても続編は出ていないようだ。こんなシリーズならば続編も読んでみたいが。