ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

●608 ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 2017

 1940年5月、ドイツがヨーロッパに侵攻する中、イギリス与党のチェンバレン首相はドイツに対し有効な対策を立てなかった責任を問われ野党から辞職を迫られる。与党内ではハリフォックスが次期首相と目されていたが、野党は彼が首相になることに反対、チャーチルを押していた。

 そのチャーチルは新しい秘書に対し傲慢な態度を取り、秘書レイトンは止めようとするが、チャーチルの妻がチャーチルを叱責、皆に好かれる首相となるように説得する。チャーチルは国王から次期首相の任命を受ける。

 チャーチルは国会でドイツへの徹底抗戦を呼びかける演説をするが、チェンバレンとハリフォックスはチャーチルの方針を支持しなかった。戦況はドイツがフランスまで侵攻、フランスへ出向いていたイギリス軍もダンケルクの海岸まで撤退をしていた。

 チェンバレンとハリフォックスは、ドイツとの和平を目論んでおり、チャーチルが和平交渉を受け入れないという言質を取りそれを理由にチャーチルの首相解任に動く。国王はハリフォックスと友人であり、チャーチルに恐れをなしていたが、イギリスがドイツに侵攻された場合に備え、カナダへの亡命が現実的になったことを受け、チャーチル支持に廻り、本人にその旨を伝える。

 チャーチルダンケルクに取り残されたイギリス陸軍兵たちを救うため、民間の小舟を集め救出する作戦を実行、しかしそのためにはダンケルク近くにいる別部隊を見棄てなければいけない状況だった。

 ドイツの侵攻が進み、チャーチルはドイツとの和平を受け入れるかどうかで悩みぬく。そんなチャーチルは市民の声を聞けと言われ、地下鉄に乗り込む。そこに乗り合わせた市民たちに話をし、今後のイギリスの態度を尋ねるが、皆徹底抗戦を望んでいた。それを受けチャーチルは自信を取り戻し、閣僚にその話をする。さらに国会でも徹底抗戦をすることを再度宣言し、皆に受け入れられる。

 その後、ダンケルクからの救出作戦は成功、チェンバレンは半年後に死亡、ハリフォックスも辞任、最終的にイギリスがドイツに勝利したことを告げ、映画は幕を閉じる。

 

 第二次世界大戦開始当初のイギリスが舞台。ドイツの侵攻が激化した中、新たに首相に任命されたチャーチルが悩みながらもドイツへの徹底抗戦という方針を貫き通すまでが描かれる。

 正直、現代史特に第二次世界大戦の詳細はよく知らなかったので、非常に勉強になった。名作「カサブランカ」などでパリがドイツの手により陥落したことは知っていたが。

 イギリスが、いやチャーチルがこの時ドイツとの和平に乗っていたら、戦況は大きく変わっていたかと思うと、この映画で描かれている彼の決心は、その後の世界に大きな影響を与えたことがわかる。鑑賞後、ネットでこの映画の内容が必ずしも史実ではないと知ったが、イギリスがドイツと戦い続けたことは間違いなく、チャーチルは偉大な人物だったということに変わりはない。

 映画としては3週間ほどのイギリス政治の揺れを描いており、緊迫感のあるシーンが続く良い映画だったが、一番気に入ったのは、チャーチルが秘書レイトンの兄が戦死をしたと聞くシーン。レイトンが大げさに涙を見せるわけでもなく、チャーチルもそんなレイトンに慰めの言葉はかけない。それでも二人の心の中が垣間見れたようなこのシーンは、本作の白眉のシーンと言えるだろう。

 イギリス映画はあまり見ることがなかったが、映画製作はハリウッドだけではないというイギリスの意地がわかる傑作だった。