恋をしましょう

●611 恋をしましょう 1960

 クレマンは代々続く資産家の当主であり、女遊びで知られた人物だった。会社の広報のコフマンがクレマンを風刺した舞台劇が行われることを新聞記事で知り、クレマンに報告する。クレマンの秘書は舞台を中止にさせようとするが、クレマン本人は一度その舞台が観てみたいと言いだし、コフマンとともにリハーサルを見に行く。

 リハーサル風景を見て、クレマンは主演女優であるアマンダに一目惚れする。リハーサルはオーディションも兼ねており、クレマンは見た目が似ていることから、本人役として採用されてしまう。アマンダを食事に誘いたいクレマンは偽名を使い役を受け入れる。クレマンはアマンダを食事に誘うが、彼女は夜間学校に通っており、食事を断る。さらにアマンダは共演者のトニーと仲が良いこともわかる。

 秘書たちがアマンダのことを調べ、教会で男と会っていることを突き止める。クレマンはリハーサルに参加した後、アマンダを教会に送り、男が彼女の父親であることを知り安心する。

 クレマンの秘書は彼がアマンダにハマっていることを心配し、会社の名前を使って舞台を中止に追い込もうとする。それを知ったコフマンはクレマンに対し怒りを爆発させるが、クレマンは秘書の仕業だと見抜き、舞台存続のため、資金提供をするように秘書に命じる。秘書はクレマンがアマンダとの結婚を考えていると知り、考えを改める。そしてクレマンの要望を聞き、クレマンのために喜劇俳優を紹介、リハーサルの場でクレマンに喜劇を演じさせ、彼を高額で採用するように舞台監督に命じる。

 それでもクレマンはアマンダがトニーと演じる場面を見て嫉妬する。クレマンはアマンダと共演するために、歌を習いたいと言い出す。秘書はビングクロスビーを紹介、クロスビーはダンスを覚えさせるために、ジーンケリーを紹介する。

 歌と踊りに自信を持ったクレマン、秘書は舞台監督にクレマンを主役にするように命じる。トニーは主役を降ろされ落胆する。そんな彼を見たアマンダは、クレマンとの食事の誘いに乗り、その間にリハーサルでトニーに歌うチャンスを与える。

 食事に行ったクレマンとアマンダ。アマンダはトニーにチャンスを与えるために食事の誘いに乗ったことを正直に告白、クレマンも正直に自分の正体を告白するが、アマンダはクレマンが狂ってしまったと勘違いする。

 アマンダに自分が本当のクレマンだと信じてもらえないため、舞台を中止にし、アマンダにクレマンに抗議に行かせることに。会社に着いたアマンダとクレマン、クレマンがいつも通りに仕事をこなす姿を見て、アマンダはやっと状況を理解するが、クレマンが自分をからかっていたと思い、怒って帰ってしまう。しかしクレマンは彼女が乗ったエレベータを操作し、彼女を戻らせ愛の告白をする。

 

 モンローの作品はこのブログで4作目。本作は単なるセックスシンボルから脱却したとされるモンローの後期の作であり、遺作となる1本前の作品。

 物語は、良い意味で大人の童話。それは男にとっても、女にとっても。男性から見れば、金持ちで女には不自由してこなかったが、本当の自分の姿だけを見てくれる相手を見付ける話。女性から見れば、金持ちの男に見初められる話。

 ミュージカルと言われているが、舞台劇の俳優である設定であり、その舞台で歌われるシーンということで、他のミュージカルほど違和感はない。またコメディ色が非常に強い作品であり、序盤に登場するクレマンがジョークを売り買いする場面や、中盤クレマンが喜劇を習う場面などは可笑しくてたまらない。

 さらに言えば、終盤クレマンを舞台俳優として成功させるために、ビングクロスビーやジーンケリーが本人役で登場するのは、非常に贅沢でまるでお祭り騒ぎのよう。

 主役の二人、モンタンとモンローにも見せ場がたっぷり。モンローは冒頭のリハーサルシーンでの歌と踊りで魅せてくれる。モンタンは、できない俳優役のためコメディアンぶりが目につくが、終盤では見事な歌で魅せてくれる。

 ストーリーは単純だが、いくつかの伏線が効果を発揮している。クレマンが会社で受けたジョークを舞台リハーサルで話しスベるシーンや、これを受けての買い取ったジョークを披露するシーンなど。圧巻はエレベータのシーン。冒頭で会社のエレベータの特殊な操作を見せておいて、クライマックスでそれを再度使ったのは見事。

 ネットでの評価が低いのが残念だが、私にとってはモンローのベストかも。