ベニスに死す

●612 ベニスに死す 1971

 船に乗っている一人の男性、アッシェンバッハ。彼は療養のためベニスにある島を訪れる。ホテルに入った彼は、夜レストランで一人の美少年、タッジオを見かけ、目を奪われる。タッジオは家族と一緒にホテルに来ていた。

 アッシェンバッハはタッジオに心を奪われ、海岸に出ても彼ばかりを目で追ってしまう。タッジオに恋してしまったことに気づいたアッシェンバッハは、自分の信念を貫くために、島を去ることを決意、ホテルをチェックアウトしミュンヘンに帰ることに。荷物を先に駅に送り、後から駅へ向かうが、係員の手違いで荷物が別の場所へ送られていたと知らされる。それを聞いたアッシェンバッハは、荷物を待つ間、ホテルに戻ることに。手違いに起こった彼だったが、ホテルに戻ることを喜んでいた。

 アッシェンバッハのタッジオに対する気持ちは高まるばかり。タッジオが家族とともに街へ繰り出すあとをつけるまでになっていた。アッシェンバッハは街のあちこちで消毒をしていることに気づき、何のためか尋ねるが地元の人間は誰も答えようとしなかった。銀行を訪ねた彼は、行員からヨーロッパで疫病が流行りベニスの街も危険にさらされていること、一足でも早く街を去った方が良い、をアドバイスされる。しかしアッシェンバッハはタッジオがいるベニスから離れることはできなかった。

 アッシェンバッハはだんだんと疫病に侵され始める。さらにタッジオが街を去る日が来てしまう。海岸でタッジオの最後の姿を眺めていたアッシェンバッハはとうとう疫病で倒れてしまう。

 

 タイトルは昔から知っていたが、今回が初見。内容も知らずに見始めたので、冒頭30分、主人公が美少年に惹かれたことはわかったが、それ以外何事も起こらない展開に驚かされた。しかし驚きはその後も続く。

 心を奪われた少年と言葉を交わすこともなく、映画は続いていく。そして病気に侵された主人公が少年の姿を見ながら倒れるラスト。

 

 このような話で一本の映画が成立していることに驚く。主人公と少年は一言も会話を交わさず映画は終わる。というか、主人公のセリフもほとんどないまま。あるのは、過去、主人公が友人と交わした美に関する会話がメイン。とにかく不思議な映画。

 さらに言えば、現在と過去の出来事が入り混じり、どの部分が現在かがわかりにくい展開でもある。主人公が美容院?で若返り化粧までするシーンを最初は過去のものかと思ったが、ラスト、倒れてしまう主人公が頭から気を流していたように見えたのは、白髪染めが熱で溶けたあとだと考えると、美容院も現在のことだったのか。

 

 美少年演じるアンドレセンは確かに一度見たら忘れないほど美しい。現在ならば大騒ぎになりそうな感じだが、wikiなどを読むと当時も結構な騒ぎとなったようだ。そりゃそうだろうなぁ。

 

 北野武監督の最新作が公開されることが報じられたが、そちらも男色がテーマらしい。昔からこのテーマは映画監督にとって扱いたいテーマだったのだろうか。