バラ色の選択

●613 バラ色の選択 1993

 ダグはホテルの接客係として、お客のためにいつもフル回転で働いていた。そればかりではなく、上司である支配人から、同じホテルのベテラン従業員を守るためのフォローまでする人情家でもあった。お客である中年夫婦の妻が不機嫌であれば、何もしない夫のために妻へのプレゼントを提供する働きぶり。そんなダグはホテルの香水ショップで働くアンディを食事に誘うがいつも彼がいると断られていた。

 ある日富豪クリスチャンがやって来る。彼が女性と密会するために部屋を用意したダグだったが、クリスチャンの相手がアンディだと知り驚く。しかしダグはクリスチャンに自らの夢であるホテル購入の資金を援助してもらおうとしており、アンディとのことを責めることはできなかった。

 ダグが国税局の男性ドリンクウォーターに目をつけられる。ホテルの資金とするため、高額のチップを集めていることを突き止められていたのだった。

 クリスチャンには妻がおり、そのためアンディとの約束を反故にすることも。クリスチャンの代理としてアンディのステージを観たダグは彼女を家まで送るが、彼女の気をひくためにクリスチャンが離婚寸前だと嘘をつく。

 アンディはダグの言葉を信じ、クリスチャンの別荘に向かう。それを知ったクリスチャンは妻とパーティーをしており、ダグになんとかするように依頼。パーティー会場に駆けつけたダグは嘘を並べ、なんとかその場をごまかし、アンディを家まで送る。途中、アンディはこれまでのダグの言葉が嘘だったことを知り、クリスチャンと別れ街を出ると言い出す。アンディの家に着くとクリスチャンから電話が入る。ダグはなんとかアンディを慰め、クリスチャンの電話に出るように話す。

 その後またクリスチャンからアンディの面倒を見るように言われたダグは、仕事を人に任せアンディの元へ。二人で食事をし、お互いの夢を語り合う。アンディは大きな劇場で歌うこと、ダグは夢であるホテルを持つことを。クリスチャンとの待ち合わせの場所へアンディを送るが、ダグはクリスチャンが他の女性と会っているのを目撃、アンディの話し相手になる。その場で、ホテルのお客である中年夫婦と再会、ダグはまたも夫婦のために一役買って出る。夫婦の仲を取り持った二人は良い雰囲気となるが、クリスチャンからの電話が入り、アンディはいつものホテルの部屋へ。部屋で口喧嘩をしているとクリスチャンが到着、彼はダグにホテル購入のための援助を決めたこと、アンディには妻と別れたことを話す。

 クリスチャンのファッションショーが開催され、ダグもアンディも会場へ。そこでダグは援助資金の契約書を渡される。ダグはクリスチャンが妻と別れたと聞いたと話すが、そんなのは嘘だと言われる。アンディはクリスチャンとイタリア旅行に向かうが、彼がある男に金を渡しているのを目撃、それがダグに付きまとっていた男性だと気付き、クリスチャンに事情を聞く。彼はダグのアイデアを奪うために、国税局の男性を使いダグを脅していたのだった。それを聞いたアンディはクリスチャンの車から降りる。ダグもクリスチャンが妻と別れるつもりがないことをアンディに告げるために、街中を走り彼女を追う。

 ダグとアンディは結ばれ、ホテルから誤って送られたダグのホテル計画の書類を受け取ったあの中年夫婦の夫は、彼に資金提供を申し出る。

 

 主演がマイケルJフォックスだからなのか、1990年代前半の映画だからなのか、難しいことを考えずに、気楽に観ることができる、いわゆる「大人の童話」系の話。

 ただ既に人気絶頂のスターだったマイケルが主役のため、ストーリーはよくできていると思う。凄腕のホテルマンであることを冒頭から示す一方で、彼が仕事だけの人間ではないことを、ベテランホテルマンやお客である中年夫婦とのやりとりを使って見せているが、それが見事な伏線となっており、ラストのハッピーエンドにつながる手腕は素晴らしい。まさに「大人の童話」。

 バブルの名残のようなホテルマンとしての活躍も描きつつ、恋する女性が他の男性と不倫関係に陥るのを見守るしかできないモヤモヤ感も演出しておいてのラストのハッピーエンドは、いかにもこの時代の娯楽作品だった。