家康(七) 秀吉との和睦 安部龍太郎

●家康(七) 秀吉との和睦 安部龍太郎

 前作に続き7巻目章立ては、秀吉討つべし、和議、関白秀吉、天正地震、両雄闘角、バテレン追放令。

 前作終わりで始まった小牧・長久手の戦いを有利に進めていた家康。秀吉から和睦を打診されるが応じずにいると、織田信雄が秀吉と和睦してしまう。大義名分を失った家康は、秀吉からの和睦に注文を付け、有利な条件を飲ませようとするが、その間に秀吉は他の地域を制覇して行く。一方で家康は北条家、真田家との関係で問題が発生、やがて秀吉が関白となり、家康は追い込まれてしまう。

 いよいよ家康は秀吉との決戦を決意するが、その時、天正地震が発生、財や兵を失った秀吉は家康に好条件での和睦を申し入れてくる。

 

 前作を読んでから約1年半が経過。この間このブログでも戦国時代のことを学んだつもりだが、織田信長のことが中心で、しかも本能寺の変止まりとなっていたため、信長の死後の流れについてはよくわかっていなかった。不思議だったのは、小牧・長久手の戦いで優位となった家康が、なぜその後秀吉の軍門に下ったのか、ということだったが、本作ではその理由がとてもわかりやすく説明されていた。

 当然のことながら、当時家康の敵は秀吉だけではなく、周辺地域での問題をまだまだ抱えていた状態。一方秀吉はその財の力を持って、西の方面で勢力を伸ばすことに成功しており、冷静に判断すれば圧倒的に家康不利の状況。なるほどね。小牧・長久手の戦いでの家康からの視点でばかり見ていてはダメなのね。で、そんな家康が助かったのは、大地震が原因だったとは。去年の大河ドラマではないが、家康は天に見守られている、のかも。

 

 一方で、本作終盤で、秀吉と家康が本能寺の変に関して会話するシーンがあり、前作で家康が推理した変の真相がその通りであったことが語られる。多くある説の一つなのだろうが、小説仕立てにされると不思議な説得力がある(笑 ネットで著者のことをちょっと調べたが、著者は戦国時代のことを検証するには当時の外国勢力のことを考えずにはいられない、という考えの持ち主であり、本能寺の変もその後の秀吉の朝鮮出兵も外国勢力に一因があるということらしい。

 

 本作は晴れて秀吉の時代となった時点で小説は終わっている。秀吉天下の衰退に家康はどう関わっていくのだろう?これまた早く続編を読みたい気分でいっぱいである。