ふたりの花見弁当 食堂のおばちゃん4 山口恵以子

●ふたりの花見弁当 食堂のおばちゃん4 山口恵以子

 佃にある「はじめ食堂」は、昼は定食屋、夜は居酒屋を兼ねており、姑の一子と嫁の二三が、仲良く店を切り盛りしている。店の二人と客たちの中で起きる様々な出来事を描いた短編集。以下の5編からなる。

 

おせちのローストビーフ

 年末を迎え、はじめ食堂では常連客とともに忘年会をする。そして新年。万里の同級生メイたちが遊びに来る。要も着物を着て彼女たちを迎える。せっかく着飾ったのだからと皆で浅草に初詣に行くが、帰りに立ち寄った家電量販店で、学生が万引きをしているのを目撃、メイの友人ジョリーンがその若者たちを嗜める。

 

福豆の行方

 メイに彼氏ができ、嬉しそうに店で報告をする。拓馬というその彼は銀座の有名な寿司屋に勤めていた。ある日メイが拓馬を紹介したと万里を家に誘う。万里は話題の寿司屋の寿司を差し入れに持って行くが、その寿司を見た拓馬の行動に疑問を持つ。店の皆で拓馬のことを調べるが、銀座の寿司屋にそんな男は勤めていなかった。万里はそのことをメイに告げる。

 

不倫の白酒

 要が大作家足利の担当となる。はじめ食堂の常連だったワカイの女性社員永野が店で大規模な送別会をしたいと言ってきて、一子たちは引き受ける。後日、永野は叔父とともに店に送別会の下見を兼ねてやって来る。その叔父は要が担当することに足利だった。送別会の日、主役である係長は最後の挨拶で永野と不倫していたことを白状してしまう。翌日足利が、その翌日に永野が店に謝罪に来る。一子は永野に叔父への想いを断ち切るように話す。

 

ふたりの花見弁当

 店の常連、三原が皆を自分のマンションでの花見に誘う。店の皆、常連客、メイたちなど大勢でマンションに出向く。山手や後藤のダンスも披露し、花見は大盛り上がりとなる。花見後、皆で三原のマンションの部屋へ。そこで三原は亡くなった妻との思い出を語る。

 

サスペンスなあんみつ

 GW初日、山手と後藤が参加するダンス教室のパーティに店の皆で応援に行く。一子と二三はGWの休みに、二人で有名店での食事巡りをする。思い出の店にも行くが、どこも昔とは変わってしまっていた。二人は最終日、銀座であんみつを食べることにし、甘味処に入る。しかし店の中の様子がおかしいことに気づく。すると店内の一人の客が帰る際に大騒動が起こる。

 

 シリーズ4作目。2作目がちょっと異色作だったが、本作も前作に引き続き通常運行

 常連客の顔ぶれは変わらず、1話目で登場するメイの友人、ジョリーン(なんていう源氏名!)が初登場したぐらいか。そのジョリーンの活躍が1話目。2話目はメイの失恋物語。3話目は、二三の娘、要が大作家足利の担当となる話がメインと思いきや、その足利の姪、永野の話。4話目は三原のマンション生活と亡くなった妻との思い出話。5話目は、山手と後藤のダンス披露の話と思いきや、一子と二三が遭遇する大捕物の話。

 

 ちょっぴりミステリー感のある話もあるが、基本的には常連客たちが引き起こすちょっとしたエピソードがメインであることに変わりはない。だから安心して気楽に読めるシリーズとなっており、それが魅力でもある。

 要が大作家の担当になったことや山手たちのダンス教室に三原が参加するのか、などの話があったが、これが次回作への伏線となっているのか?「おけら長屋」もそうだったが、レギュラーメンバーだけでは、話のネタが尽きるのは意外に早いので、徐々に常連が増えていくのか?

 気楽に読めるシリーズだけに、次も楽しみである。