秋日和

●619 秋日和 1960

 三輪の7回忌が行われ、三輪の兄や友人たちが集まる。三輪の妻秋子の前で、友人である間宮、田口、平山は三輪の娘であるアヤ子の結婚相手について話をする。中でも田口は、知り合いにちょうど良い若者を知っていると話し、アヤ子に勧める。家に帰った田口は妻にそのことを話すが、その若者は既に結婚が決まってしまっていた。

 後日、間宮の会社に秋子がお礼に来る。その場で間宮は田口の言っていた若者は結婚が決まっていたことを伝え、代わりに自分の会社にいる後藤を勧める。家に帰った秋子はアヤ子にその話をするが、彼女は結婚はまだ考えていないと答える。秋子は勤め先でもアヤ子の見合い相手を紹介されるが、同じ理由で断ることに。その頃、アヤ子は亡き父の形見であるパイプを間宮の会社へ持っていく。その場に偶然居合わせた後藤と対面することになり、間宮が後藤にお前を振った女性だよと紹介する。その夜、母秋子と外食をしたアヤ子は、これからも二人で時々外食をしましょうと話す。

 アヤ子は会社の同僚の結婚を祝って皆でハイキングに行く。そこで後藤の知り合いである杉山から後藤を振ったことを告げられ、再度紹介したいと言われる。間宮は外出先で偶然アヤ子が後藤と会っているのを目撃、会話をするが、アヤ子は後藤のことを気に入っているが、母親といる時間の方が楽しいと話す。

 ゴルフで田口と平山に会った間宮はそのことを伝え、秋子を再婚させればアヤ子の結婚話も進むだろうと考え、3人の中で唯一やもめである平山と秋子を結婚させようと考える。その場では断った平山だったが、家に帰り息子にその話をすると、息子は父の再婚に乗り気だった。平山は間宮の会社に行き、秋子との話を進めて欲しいと頼む。田口が秋子に会いに行き話をするが、秋子にそのつもりは全くなかった。3人はしばらく時間をおくことに。

 間宮の家に田口の妻がやってきて、間宮の妻と話をする。彼女たちの話を聞いた間宮はアヤ子の結婚話を先に進めようと考え、アヤ子を呼び出し、秋子にも平山との再婚話があることを伝える。それを聞いたアヤ子はショックを受け、家に帰り母を非難する。母秋子は何も知らず答えられないでいるとアヤ子は嘘をつかれていると思い込み家を飛び出してしまう。アヤ子は会社の同僚である百合子の家に行き、事情を話す。しかし百合子はアヤ子の母の再婚を理解、むしろそれを認めないアヤ子は赤ちゃんだと話す。それを聞いたアヤ子は百合子の家を飛び出し家に帰る。

 翌日会社であってもアヤ子は百合子と口を聞かなかった。百合子は秋子に会いに行き話をする。秋子も再婚話を知らないことを知った百合子は、間宮や田口、平山の会社に行き、母である秋子本人も知らないことをアヤ子に話したことを非難する。百合子に圧倒された3人は謝罪し、改めて百合子に事情を説明する。百合子は平山の良さを認め4人は祝杯をあげることに。百合子は自分の家である寿司屋に3人を連れて行く。

 事情を聞いたアヤ子は機嫌を直し秋子と温泉に行く。そこは三輪の兄がやっている宿だった。二人は仲直りをするが、秋子は平山との結婚はしないと宣言、アヤ子を結婚させるための嘘だった。

 アヤ子と後藤は無事に結婚をする。式から帰った秋子を百合子が訪ねる。その夜一人となった秋子はやはり寂しさを感じるのだった。

 

 「浮草」に続き、小津作品。いつもの都会が舞台の話なので、「彼岸花」系の話かと思って観ていたが、いつもの父娘の話ではなく、母娘の話だった。父娘パターンだと、娘の結婚に反対する父が定番だが、母娘だとそうはならず、母は娘の結婚を心から望んでいることに。そこへ亡き父の友人たちが参戦しちょっと話はこじれて来るが、大団円で話は終わる。

 話はそれるが、「彼岸花」の冒頭で友人の娘の披露宴に出席する主人公が描かれる。私が若い頃はこれ(新郎新婦の親の友人が披露宴に出席)が当たり前であったが、少し不思議に思っていた。その頃には既に、主役である新郎新婦が親の友人とそれほど繋がりがなかったためである。しかし「彼岸花」でも本作でも、友人の娘の結婚を気にする姿が当たり前のように描かれており、あぁ昔はこうだったのかと思い知らされた。

 本作の見所は、父娘ではなく母娘の関係性というのが一点だが、他に2つほど大きな見所があった。一つは伝説の女優原節子のカラー作品であるということ。初めてカラーで動く原節子を観た気がする。もう一つは、終盤大活躍するアヤ子の友人百合子。母親の再婚に難色を示す友人にズバッと本音を語り、それに関しておかしな点があったと気づいて今度は年長者である3人の男性をバッサリと切り捨てる。まだ数はあまり観ていないが、小津作品の中でも稀有なシーンだったのではないだろうか。この友人百合子を演じた岡田茉莉子さんは、晩年の作品でしか知らなかったが、実に可愛らしい姿と喋りで魅了されてしまった。

 俳優さんたちの若い頃、ということで言えば、主役と言えるであろう間宮を演じた佐分利信とアヤ子を演じた司葉子の組み合わせは、本作の17年後に製作された「獄門島」で共犯となる犯人を演じた組み合わせであり、ちょっと考え深かった。

 短期間で小津作品を4本観たが、もっと観たくなってきた。Amazonで探してみよう。