准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき 澤村御影

●准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき 澤村御影

 青和大学文学部の深町尚哉は少年の頃不思議な体験をし、それが基で他人の嘘を聞き分ける能力を持ってしまう。大学で民俗学Ⅱを受講した彼は、准教授高槻彰良からレポートの件で呼び出され、高槻の調査に同行するようになり、一緒に事件を解決して行くことに。

 以下の3編からなる短編集。

 

いないはずの隣人

 尚哉は民俗学の講義で、自らが経験した不思議な体験をレポートで提出する。それを読んだ高槻が彼を呼び出し詳細を聞こうとするが、他人の嘘がわかることを隠したい尚哉はその部分については高槻に話をしなかった。高槻はそんな尚哉に興味を持ち、バイトとして不思議な体験の調査に同行してほしいと頼み尚哉は了承する。

 そして自分の借りているアパートが幽霊屋敷かもしれないと訴えて来たOL桂木菜々子に会いに行く。


針を吐く娘

 夏休み、尚哉は高槻から幽霊画を一緒に観に行こうと誘われる。そこで高槻の幼馴染で刑事の佐々倉健司と高槻の研究室の博士課程1年生方瑠衣子と一緒になる。帰りに寄った谷中銀座で、高槻の講義の受講生原沢綾音と牧村琴子と出会い、彼女たちから相談を持ちかけられる。それは原沢が講義で出した藁人形を見たという内容のレポートだったが、その後原沢の周りで針が多数目撃されるようになったというものだった。

 

神隠しの家

 夏休みが終わり後期の授業が始まる。尚哉は高槻とともに高校2年生の水谷はなからの相談を聞きに行くことに。彼女の友人松野紗雪が神隠しにあったという内容だった。しかし紗雪は2日後には発見されていた。水谷はなは一人で廃墟の家に肝試しに行くという紗雪の誘いを断ったが、彼女は一人で廃墟に行った日に行方不明となり2日後に発見されたのだった。高槻と尚哉はその廃墟を調べに行く。

 

 これまたAmazonからのオススメの一冊。民俗学に興味はあまりないが、軽めに読めそうな感じに惹かれ読んでみた。

 見たものを全て記憶できる高槻と他人の嘘が聞き分けられる尚哉のコンビ。バディものが好きなので、若い准教授と大学生である組み合わせはアリなのだが、特殊能力を持った二人はどうなのよ、と思って読み進める。それでも彼らの能力が超人っぽくは描かれておらず、気にはならなかった。

 それよりも、准教授でありながら子供っぽい高槻と少年時代の経験から孤独を感じていた尚哉というキャラクターが興味深く面白い。キャラクターで言えば、高槻の幼馴染佐々倉と研究室のドクター瑠衣子のキャラも立っており、登場人物の設定は申し分ないと言える。

 話はどの話も途中でネタバレがわかる程度のミステリで、肩肘張らずに読めるのも良い。と思ったらジャニーズでドラマ化されているのね。いかにもそれっぽい感じ。それでも小説として成立しているし、シリーズ化もされているようなので、今後も読むのが楽しみになりそうな予感。高槻の人物像の謎や尚哉の少年時代の体験の謎をどのように解き明かして行くかも楽しみだし。

 あぁまたひとつ面白そうなシリーズを知ることができたようだ。