鬼平犯科帳 第1シリーズ #09 兇賊

●第1シリーズ #09 兇賊

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 一人働きの老盗賊、鷺原の九平は40年ぶりに江戸から故郷である加賀の国の金沢近くの田近谷村を訪れる。年老いた九平は死ぬ前にもう一度故郷を見たいと思ったのだった。帰り道、倶利伽羅峠で休んでいた九平は二人の男が鬼平を殺す計画を話しているのを聞く。

 江戸。夜役宅で久栄と話した鬼平は夜回りに出かける。途中、居酒屋加賀やを訪れる。この店は九平が店主であり、芋酒が評判となっていた。鬼平は芋酒と芋鱠を楽しみ、店に来た夜鷹にも酒を勧め一緒に飲む。店を出た鬼平は浪人に襲われるが返り討ちにする。その様子を峠にいた二人の男のうちの一人が見ていた。声を聞いた九平は現場へ駆けつける。九平は役宅へ帰る鬼平をつけるが、門をくぐろうとした鬼平は九平にご苦労と声をかけ、九平はつけていたことを見抜かれ驚いてしまう。

 翌日九平は店を閉め逐電する。酒井は鬼平に昨夜の浪人の体に無数の斬られ傷があったことを報告、鬼平は金で雇われた殺し屋だろうと考える。そこへ沢田がやってくる。沢田は鬼平に命じられ加賀やを調べており、九平がいなくなったことを鬼平に報告する。話を聞いた鬼平は沢田に九平の似顔絵を描かせるように命じる。

 1週間後、倶利伽羅峠にいた二人、盗賊網切の甚五郎と文挟の友吉は大島屋を襲い店の者を皆殺しにする。翌日、沢田は九平の似顔絵ができたことを鬼平に報告、そこへ界がやって来て大島屋が襲われたことを知らせる。この1週間で皆殺しをする盗みは3件目だった。鬼平は去年同様の手口で仕事をした網切甚五郎の仕業ではないかと考える。

 九平はめしやいせやに匿ってもらっていた。店の女主人おしづは以前一人働きの盗人だった。3年前同じ店を狙っていた九平にその現場を押さえられ、盗賊から足を洗うように説教され、盗人の世界から足を洗い、九平の金で店をやっていたのだった。九平は自分の店に鬼平が来たことをおしづに話す。翌日、九平はおしづの店にほくろのある男、文挟の友吉が来ているのを目撃、店を出た友吉の後をおしづにつけさせる。友吉は百姓家に入っていったが、おしづはその家が盗人宿だと九平に話す。九平はその盗人宿を見張る。家から出て来た友吉をつけると大村屋という一流料亭に入る。翌日以降も百姓家を見張っていた九平は武家の小者が家から出てくるのを見かける。九平はその小者の後をつける。

 その頃鬼平は尾上監物からの手紙を受け取っていた。相談があるので暮れ六つに大村屋に来て欲しいという内容だった。その手紙を持って来たのは、百姓家から出て来た小者だった。彼らは大村屋に入っていく。九平は何が起きているのかわからなかった。その九平を似顔絵を持っていたおまさが発見、一芝居打って役宅へ連れていく。しかし鬼平はすでに大村屋へ出かけたあとだった。それを聞いた九平は、酒井に全てを打ち明ける。

 大村屋に入った鬼平を待っていたのは、網切の甚五郎だった。鬼平は彼の一味のものに襲われるが脇差一本で戦う。そこへ九平から話を聞いた酒井たちが乗り込んで来て一味を捕まえるが、網切の甚五郎と友吉は取り逃がしてしまう。九平に礼を言った鬼平は彼にある相談をする。

 半月後の倶利伽羅峠。網切の甚五郎と友吉がやってくるのを待ち構えていたのは鬼平と九平たちだった。鬼平は甚五郎を斬って捨て、友吉を連れて江戸へ。鬼平は九平に盗みを辞めるように話し、江戸に戻ったら芋酒を飲ませろと話す。

 

 初見時の感想はこちら。あらすじを追加した修正版。

 結果的にではあるが、一人働きをする盗賊が鬼平の命を助けるというお話。同じ第1シリーズの一つ前の話となる「さむらい松五郎」に登場する盗賊須坂の峰蔵も、残忍な手口で盗みをする他の盗賊を忌み嫌っていたが、本作で登場する九平も同じ理由で須坂の峰蔵一味のやり口を嫌っていて、鬼平を助けたようにも思えるが、それについての言及はドラマの中にはない。むしろ、ドラマ冒頭で九平が営む居酒屋を訪れた際の鬼平の言動に惚れた九平が、その人柄に惚れ、鬼平を救った物語とみた方が良いのだろう。

 前にも書いたが、この話はのちにSP版として再度使用されており、それを観たのが私が鬼平好きとなる理由となった。先に書いた冒頭の居酒屋シーンで夜鷹を演じた若村麻由美さんの演技が素晴らしかった。SP版でも九平とおしづの関係を示すシーンってあったっけ?

 

 九平を主役として話は展開するが、久栄の登場シーンにも注目すべき点が。冒頭の部分では、夜回りに出かける前に鬼平と会話をし、少し浮気を疑うようなシーンがあり微笑ましい。さらにクライマックス直前、大村屋に出かける鬼平を見送る久栄が、蜘蛛がそこにいたことに気づき、縁起が悪いというシーンがある。「夜蜘蛛は縁起が悪い」と述べるのだが、これは知らなかった。確かにネットで調べても「夜の蜘蛛は親でも殺せ」という言葉があり、歴史的に意味のある言葉のようだ。勉強になりました(笑

 

 九平と鬼平の関係性が面白い話だったが、そこを膨らませSP版としたのは見事。本作の方が原作に忠実に作られているのだろうけど、ラストの鬼平と九平との会話や後日談として最後に加賀やの様子を見せたSP版にどうしても軍配は上がるなぁ。あぁ久しぶりにSP版も観たくなった。

 

 

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