ドラゴン危機一発

●640 ドラゴン危機一発 1971

 チェンは叔父に伴われタイにやってくる。タイにいる従兄弟シュウとともに仕事をするためだった。到着して早々、チェンは道の氷水売りの少女がチンピラに絡まれるのを目撃、それを助けたのはシュウだった。チェンはシュウの家族とともに暮らすことになり、叔父はチェンにケンカでは問題が解決しないのでケンカだけはしないようにと言い残し帰って行く。

 チェンはシュウの働く氷工場で働くことに。彼が氷を運んでいるとその氷が割れてしまう。中からは粉の入った袋が見つかるが現場監督たちはそれを隠そうとする。仕事が終わり帰宅しようとすると、シュウの身内2人が工場長に呼ばれる。工場長は氷の販売だけではなく麻薬の密売をしていることを告白し、2人に協力するようにと金を渡そうとするが、2人はそれを断る。すると帰ろうとしていた2人を工場長の部下が襲い殺してしまう。2人の遺体は氷漬けにされ隠されることに。

 帰宅しない2人を心配するシュウたちは翌日工場長を問いただす。工場長は2人は社長に呼ばれたと答える。シュウは仲間を伴って社長の家へ。そこで2人のことを問いただすが、社長は2人のことは忘れた方が身のためだと答えたため、シュウは今日中に2人が帰宅しなければ警察に連絡すると訴える。シュウたちが帰ろうとすると社長の部下たちに襲われ殺されてしまう。

 シュウたちまでもが帰ってこないため、シュウの妹チャオメイが大変心配する。チェンは明日工場長に確認すると話しシュウの妹を落ち着かせる。翌日チェンたちは工場長にシュウのことを尋ねるが工場長は仕事をしろと命じる。チェンたちは仕事をボイコットし、工場長の部下たちと乱闘になるがチェンは叔父との約束を守り手を出さないでいた。数で優っていたチェンたちだったが、そこへ社長の部下のチンピラたちが駆けつけ大乱闘に。チェンも巻き込まれとうとう手を出し、チンピラたちを一蹴する。するとチェンが工場長に呼ばれる。それまでいた現場監督がクビになり、チェンが監督となることに。チェンは仲間たちとともに喜び、家に帰る。しかしそれを聞いたチャオメイはシュウのことを尋ねる。何も答えられなかったチェンは明日再度確認すると話す。

 翌日チェンは社長が会いたがっていると言われ料理屋に会いに行く。しかし社長はおらず、いたのは工場長と接待役の女性たちだった。酒を勧められたチェンは慣れない酒を飲んで酔っ払ってしまい、その場にいた女性ウーと一夜をともにする。翌日目覚めたチェンは正気に戻り、売春宿から立ち去ろうとするがそれをチャオメイに見られてしまう。家に戻ったチェンだったが、工場長に接待されたことを知られ、仲間たちから軽蔑されてしまう。

 チェンは改めて社長に会いに行くが、そこで社長は一芝居打ち、シュウたちのことを懸命に探しているふりをする。チェンはそのことを報告するが、仲間たちはまだチェンのことを軽蔑したままだった。チェンは売春宿へ行きウーと再会する。そこでウーから社長が麻薬に手を出していることを聞く。深夜工場に戻ったチェンは倉庫にあった氷の中に麻薬が入っていることを発見、さらに仲間たちの死体も氷漬けにされているのを目撃する。そこへ社長の息子たちがやってきて、チェンを殺そうとする。乱闘になるがチェンは一人で皆を倒す。

 チェンはなんとか家に戻る。しかしそこで仲間たちが皆殺されているのを発見。チャオメイも行方不明に。社長の仕業だと確信したチェンは社長宅へ乗り込む。部下たちを倒したチェンは社長と一騎打ちに。その間に屋敷にいた女性が監禁されていたチャオメイを逃す。チェンは社長を倒すが、そこへチャオメイが警察とともにやってくる。

 

 BS東急松竹でやっていたブルースリー特集最後の作品。今回初めて本作がブルースリーの事実上初の主演作だと知った。他の作品に比べ、まだブルースリーの真骨頂である怪鳥音やヌンチャクが出てこないのはそのためらしい。

 ストーリーは麻薬密売を影の生業としている工場での争いであり、リーの仲間たちが次々と行方不明となる中、彼が真相に迫って行くというもの。ただ観客は全てその裏事情を知らされているため、謎解きの緊張感はない。その分、リーのアクションだけを存分に楽しめる仕掛けになっている。ただ初主演作ということもあるのだろう、敵の多くはタイ人であり、敵の格闘シーンはちょっとお粗末。ボスとの戦いもナイフが用いられており、のちの作品に比べると迫力に欠けるのは残念。

 

 リーの主演5作品(今回の作品の中から、「死亡の塔」を除き「燃えよドラゴン」と含める)を久しぶりに観ることができ満足。アクション以外の演技、特にコメディセンスにもあふれていたリーの作品をもっと観てみたかったなぁ。