草原の野獣

●642 草原の野獣 1958

 エドとデイビーは、牧場主であり先住民との戦いをして土地を手に入れた父リーを持つ兄弟。長男エドはリーに似て、拳銃の腕も乗馬の腕も確かだが先住民を忌み嫌っていた。次男デイビーは優しく気弱な男だった。

 2人は父の命令で馬の輸送のため、人手を探しており近くの店で先住民ポールとその仲間2名を雇う。エドはその場にいたポールの妹クリーにちょっかいを出すが、クリーとデイビーはお互いに惹かれ合う。

 馬の輸送が始まるが、ポールも馬の扱いが上手くエドはライバル視する。ある時野生の白馬が見つかりエドとポールは手に入れようと必死になる。しかしエドはポールを崖から落下させ白馬を手に入れる。ポールの仲間がそれを見ていた。

 皆は馬を売り買いするための街に着く。ポールの死が事故ではないと彼の仲間2名が訴え、裁判となる。2名の証言が採用されエドが有罪になろうとした時、関係のない馬飼の男性が、現場を見ていたがエドはポールに近づいていないと証言、この証言が元となり、エドは無罪となる。

 その夜、馬飼と酒場で会ったリーは、彼が馬を10頭欲しがっていると聞き彼に馬を譲る約束をする。エドは酒場で女たちと飲み騒ぐ。デイビーはクリーの元へ行き、彼女に愛の告白をする。深夜、エドは騒いだ罪で牢屋に入れられるが、リーが保安官に会いに行き釈放してもらう。リーはエドにホテルでおとなしくしているようにと話す。

 翌日馬飼がやってきてリーから10頭の馬を譲り受ける。その中には馬飼が指定したあの白馬も入っていた。リーは何も言えず白馬も引き渡す。ホテルにいたエドは白馬が連れられていくのを目撃、馬飼に白馬を残すように言うが彼は聞き入れなかった。するとエドは馬飼を撃ってしまう。保安官にも反抗するエドだったが、リーの説得で捕まることに。大怪我をした馬飼の病床へリーは訪れ5000ドルを支払うので、ポールの事故に関する証言を変えないように依頼する。

 牢屋にいたエドが自殺騒ぎを起こし脱獄する。その際保安官助手を射殺して山へ逃げてしまう。保安官は捜索隊を結成、エドを追う。リーも独自にエドを追い山へ。そこで彼と話し合うが銃での対決になってしまい、リーはエドを撃ち殺す。街に戻ってきたリーは、デイジーとクリーに話しかける。

 

 これまた全く知らなかった西部劇。冒頭、エドの口笛でスタートするがこれがのどかな曲調で、そんな感じの映画かと思って観ていたが、全く異なっていた。

 テーマは父と息子の関係性とその育て方ということになるだろう。自分の土地を先住民たちと戦って手に入れたと自負する父リー。だからこそ先住民を毛嫌いするし、銃を持つことは自分がやってきたことを象徴するものだという考え。そんな父に反抗しいつか父を越えようとする長男エド。この二人の対立が映画の中で、これでもかと描かれる。そしてこれが結末のリーとエドの対決に集約されていく。

 そしてそんな反抗的な態度を取り続けるエドに対して、父であるリーがその教育を間違ったと述べるシーンがあるが、この教育もテーマ。同じ兄弟である次男デイビーが優しい男に育ったのに対し、長男エドがあぁなってしまった原因は何なのだろう?なかなか興味深いところである。

 次男デイビーと先住民の娘クリーの愛も描かれるが、これはあくまでサブエピソードの扱いだろう。保安官がリーに話す、自分たちが若い時とは時代が変わったのだ、というセリフが一番象徴的だった。