パリで一緒に

●644 パリで一緒に 1964

 リゾート地。映画プロデューサーが脚本家へ脚本仕上がり催促の電報を打とうとしていた。

 金曜日、その脚本家ベンソンはパリのホテルにいた。彼の元へタイピスト、シンプソンがやって来る。脚本をタイプするためだったが、ベンソンは脚本を全く書いていなかったことを告白、日曜にはプロデューサーが脚本の仕上がりを見るためにパリに来ることになっていた。決まっているのは、タイトル「エッフェル塔を盗んだ娘」のみ。

 ベンソンはシンプソンの美貌に惹かれ、彼女と自分を主人公とした脚本を話し始め、シンプソンはそれをタイプしていく。劇中二人が出会い、食事をし酒を飲むシーンを描いている時、実際に二人も食事をし酒を飲む。シンプソンは脚本に感動しつつ、アドバイスもする。いつしか二人は恋に落ちていた。

 酒を飲んで酔ったシンプソンを寝かせたベンソンは、夜一人で脚本を書き続ける。土曜日。目を覚ましたシンプソンにベンソンは書き上げた脚本を読ませる。その中でベンソンは大泥棒になっておりジレー警部に追われる立場に、シンプソンはジレー警部に協力してベンソンを捕まえるスパイとなっていた。ベンソンは映画「エッフェル塔を盗んだ娘」の完成フィルムを盗み、シンプソンは彼の計画を聞き出しジレー警部に告げる。しかしシンプソンはベンソンに惹かれ彼と共にパリから脱出するために空港へ。そこでrタクシー運転手に化けていたシンプソンの恋人で刑事のフィリップにベンソンは射殺されてしまう、というストーリーだった。

 それを読んだシンプソンは悲劇の結末に落胆、結末を書き換えるようにベンソンに話すが、彼はそれを拒否する。

 日曜日、ホテルで目覚めたベンソンはシンプソンがいないことに気づく。会った当初、彼とのデートをすると言っていたシンプソンを探しに街へ。映画と同じようにカフェでデートをしていたシンプソンを見つけたベンソンは、彼女に愛の告白をする。

 

 ヘップバーンの作品で未見の作品だった一本。60年前にこんなふざけた映画が作られていたことに驚く。今の時代のTVのコメディドラマのような展開。脚本家ベンソンが語るストーリーがそのまま映像化される。書き直ししようとすると映像が逆回転までする遊びは面白いが。ディートリッヒがホンのちょい役で登場する冒頭のシーンでビックリさせられる。

 劇中劇で自分に彼女を惚れさせる展開にして、実際にもヘップバーンがホールデンに惚れていかれる様子は無理があると思うが、コメディ作品ならば仕方なしか。

 それでも映画後半は、ベンソンが書き上げた脚本の後半が一気に映像化されて、「エッフェル塔を盗んだ娘」も形になる。これもメチャクチャな映画だが、話が成立している?のが可笑しい(笑

 

 この時代に作られた実験的作品ということでは評価するべきだろうが、あまりにいろいろと無駄遣いが過ぎる、という気もする。