鬼平犯科帳 第1シリーズ #11 狐火

●第1シリーズ #11 狐火

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 おまさは叔母の見舞いの帰りに茶屋で瀬戸川の源七が働いているのを見かける。源七は狐火一味の一人であり、おまさは昔狐火の一員として一緒に仕事をしていた。先代の狐火の息子であった勇五郎とおまさは恋に落ちた仲だったが、一味の掟でその恋は許されるものではなく、別れていた。源七と一緒に店で働いていた若い女は、先代の妻お静に瓜二つだったため、おまさはその女がお静の娘なのではないかと考える。

 おまさは五鉄へ行き、彦十にその話をする。そしてこの一件を鬼平に伝えるかどうかで悩んでいた。それでもおまさは役宅へ。しかしこの時同心たちがまさに出張るところで忠吾から薬屋で皆殺しがあり、押し入ったのは狐火勇五郎だと聞かされる。おまさは鬼平とともに薬屋へ。そこで凄惨な現場を見て怒る鬼平に、おまさはこれは狐火の仕業ではないと訴える。

 おまさの言葉を不審に思った鬼平はおまさを料理屋に連れて行き事情を聞く。狐火は先代が亡くなっており、二代目を二人の息子、勇五郎か文吉のいずれかが継いでいると思われた。その何れにしても鬼平は狐火を許すわけにはいかないと話す。おまさは一人で押入られた薬屋のことを調べ、事件当日の昼間、店先で具合を悪くした女巡礼者がいたことを突き止める。先代時代の狐火にもおせんという女がおり、時々女巡礼者に化けていたことを思い出す。そのことを五鉄で彦十に伝えるが、源七の茶屋のことも含め、勇五郎が2代目になっていると考えると鬼平に伝えられないでいた。それを聞いた彦十は鬼平には内緒でもう少し調べようとおまさに話す。

 おまさは源七の店へ行き話を聞く。店にいた若い女はやはりお静の娘でお久と言い、近々嫁に行くことになっていた。しかし源七はきっぱりと足を洗っていた。そこへ勇五郎がやってくる。勇五郎は偽物の狐火が仕事をしていることを聞きつけ江戸にやってきていた。そしてそれが弟の文吉の仕業だろうと考えていた。

 鬼平は彦十からの知らせで源七の店を忠吾とともに見張る。夜になり、勇五郎は源七に文吉との跡目相続の際の話をする。話を聞いた源七は文吉たちの盗人宿のことを話題にする。3人とも先代が住んでいた家のことを思い出す。翌日源七たち3人はその家へ向かうが、勇五郎はおまさに一緒になって欲しいと頼む。船で移動する3人を鬼平たちもつける。行き先が先代狐火の家だと気付いた彦十は思い出話をする。鬼平は若くゴロツキだった頃、先代の狐火と仲良くしていたのだった。

 夜になりその家から男が出てくる。それを確かめた勇五郎は、文吉の盗人宿だと確信、一緒に行くという源七を気絶させ、おまさを待機させ一人で屋敷へ乗り込む。文吉を改心させようとするが、文吉は聞く耳を持たず手下たちとの斬り合いになる。そこへ鬼平が忠吾ともに現れ、一味を倒す。文吉は逃げるが勇五郎がトドメを刺す。それを見た鬼平は勇五郎を目溢しするが、二度と盗みができないよう左腕の筋を斬る。そしておまさに別れを告げる。おまさは勇五郎とともに京都へ向かう。

 しばらくして鬼平は源七の店へ。その日はまさにお久の祝言の日だった。しかし鬼平はそこにいたおまさに気づく。話をするとおまさは勇五郎とともに京都へ向かったが、途中の宿で流行り病に倒れ死んでしまったとのこと。おまさはまた鬼平の元で働きたいと申し出て、鬼平は笑ってそれを受け入れる。

 

 初見時の感想はこちら。あらすじを追加した修正版。

 

 おまさが主人公であり、昔の恋人を鬼平に売るかどうかで悩むという話。密偵が昔の仲間(の情報)を売るかどうかで悩む、というのはこの後も鬼平でよく出てくるパターンの一つだが、対象の密偵がおまさでありしかも昔の色恋沙汰が絡む、というのは長いシリーズの中でもこれ一本だったような気がする。

 ストーリーは、昔の恋人であり残虐な強盗を犯した狐火の二代目が本当にその事件を起こしたのかと疑うおまさが一人調べに入り、事件を起こしたのがあっさり偽物だと判明、おまさも二代目に協力し真犯人(二代目の弟)の居場所を突き止める、というもの。吉右衛門鬼平の唯一の映画のストーリーにもなっている話だが、1時間のドラマにするには少し物足りない感じもある。映画の方ももう一つのエピソードを加えているのがその証拠かもしれない。

 

 ただしっかりとした見せ場はある。源七の店で夕食をとっていたおまさが、近々結婚を控えるお久に想う人と一緒になるのが一番だと話すシーンは、定番とはいえ、鬼平の他の話では見られないおまさの見せ所と言える。

 さらにラスト、京都へ旅立ったはずのおまさを源七の家で見かけた鬼平がおまさとする会話。自分の密偵としての立場を捨て男と京都へ旅立ったおまさに、鬼平がちょっとした意地悪を口にする。これも他のエピソードでは見られない鬼平の本音が見られるシーンだろう。

 

 第1シリーズも11話目まで来たが、依然として忠吾はコメディリリーフとしては機能していない。この先のシリーズにおけるコメディリリーフとしての忠吾ももちろん良いが、まだそこに頼らなくても良い序盤の鬼平シリーズもなかなかである。

 

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