クライマーズ・ハイ

●648 クライマーズ・ハイ 2008

 悠木は北関東新聞社の記者。友人安西とともに山を登る約束の日、帰社しようとしたところに日航ジャンボ墜落の一報が入り登山は断念することに。悠木はこの取材の全権を任される。墜落現場が不明な状態が続くが、情報を入手した部下佐山を現地に送る。

 悠木は安西が倒れたと聞き病院へ。くも膜下で昏睡状態の安西を見舞うが、そこで安西の妻から最近安西が仕事で忙しくしていたことを聞く。それは前社長秘書のセクハラ問題で、前社長秘書を口止めするために和解金を渡すというものだった。

 悠木は佐山から雑観を入手するが、輪転機の不調で記事締め切り時刻が繰り上げられており、それを知らされていなかったため、佐山の雑観を記事にすることはできなかった。悠木はデスクに噛み付く。デスクたちは、70年代の「大久保連赤」事件を自分たちが取材したことを誇りに思っており、今回の日航ジャンボ墜落については非協力的だった。

 佐山たちが現場から戻り、自分の雑観が記事になっていないことを怒る。悠木は彼らに見てきたものをそのまま書けと話し、それを一面で10日間の連載することに。

 安西を見舞った悠木は安西が悠木を山に誘った理由を妻から聞かされる。

 2日目、悠木は佐山の雑観を1面に載せようとするが社長の反対にあい実現できなかった。8月15日に首相が靖国参拝をしておりそちらが優先されてしまう。絶望する悠木だったが、市民が新聞をあてにしている姿を目撃し、再度墜落事故を記事にしていくことを決意する。悠木は部下から墜落原因がわかりそうだという情報を入手、慎重に取材させる一方で、各担当者に密かに墜落事故に関する記事を掲載するように依頼する。

 3日目、悠木は飲み屋でデスクと口論になる。「大久保連赤」が前半では北関東新聞社がリードしたが、後半実は全国紙に叶わなかったことを指摘されデスクは怒り狂う。悠木は事故原因を取材する記者に佐山を同行させ、スクープをより完全なものにしようとする。一方、悠木と口論したデスクは、会議の場で悠木の意見をアシストするようになっていた。

 事故調査委員会の会議の場に佐山たちは潜り込むことに。悠木は朝刊記事締め切り時刻を遅らせ、ギリギリまで事故原因をスクープすることを狙う。約束の時間になり、佐山から連絡が入るが、100%の核心を得られたわけではないと告げられ、悠木は事故原因を記事にすることを断念する。しかし翌日全国紙が原因を1面記事に掲載する。

 悠木は翌日1面に事故原因の記事を掲載する。それを見た社長が情けない記事だと勇気を罵倒、悠木は責任を取って辞表を提出し、社を辞める。

 現在。安西の息子と山を登った悠木は、その息子から自分の息子が会いたがっていると聞き、息子が住む外国へ行くが、その住居を見ただけで引き返す。

 

 映画タイトルから山登りの映画だと思っていて(笑 これまで観てこなかったため、今回初見。まさか日航ジャンボ墜落を扱った映画で、しかも新聞社が舞台とは。

 とにかく新聞社内の緊張感あふれるシーンの連続であり、どのシーンも圧倒される。冒頭から山登りのシーンがちょいちょい挟み込まれ、これがタイトルの理由かと思っていたが、この山登りのシーンが入らないと、あまりの緊張感高いシーンの連続で、観ているこちらが息切れしてしまいそう。

 ストーリーはフィクションのようだが、新聞社内部の抗争〜部署間の争い、は非常にリアル。それぞれの立場で正論を戦わせる口論はど迫力だと言って良い。現在ならば、報道優先なのだろうが、40年前が舞台というところがミソなのだろう。過去の成功体験を忘れられないデスクや販売局長の態度など、少しステレオタイプ過ぎるきらいはあるが、それがストーリーをより面白くしている。

 ただ、安西の悠木に対する想いや悠木と息子との軋轢など、映画の中ではよくわからなかった点も多い。おそらく原作ではそのあたりが丁寧に描かれているのだろうけど。

 

 あと残念だったのは、物語がどれ一つスッキリとは終わらなかったこと。スクープをモノにできなかったこともそうだし、悠木が本当に退社したのかもよくわからない。そしてラスト、息子の家を訪れた悠木がなぜかそのまま引き返した理由も。原作を読めばわかるのかなぁ。

 

 気になった点はあったが、現在一線で活躍している俳優さんたちの若かりし頃の熱演が見られるのは本作の最大のウリだろう。主演の堤真一さんはもちろん、脇を固める皆さんの演技のスゴいこと。

 久しぶりに見応えのある邦画を鑑賞できた。