鬼平犯科帳 第1シリーズ #13 笹やのお熊

第1シリーズ #13 笹やのお熊

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 役宅で鬼平は久栄とお茶を飲んでいた。そこへ沢田が老婆が訪ねてきたと知らせに来る。老婆はお熊といい、鬼平が若い頃に世話になった女だった。

 お熊は胴巻きに入った大金を見せ、相談したいことがあると話す。お熊の知り合いで弥勒寺の下男をしていた茂平が昨夜亡くなる前に2つの遺言を残した。千住の畳屋庄八に自分が死んだことを伝えて欲しい、神奈川宿の牛松の家にいる孫のおみつに胴巻きに入った金を渡してほしい、というものだった。胴巻きには58両もの金が入っており、それを知ったお熊が鬼平にどうしたら良いかと相談しにきたのだった。

 鬼平は佐嶋や同心たちに寺の下男だった茂平が58両もの金を持っていたのは不自然、茂平は盗賊の引き込みだろうと話す。茂平は3年前に行き倒れになっていたのを弥勒寺に拾われそのまま下男となっていた。鬼平はお熊とともに畳屋庄八の様子を見て来ると話す。

 お熊は畳屋庄八に会いに行き、それを鬼平、粂八、沢田らがつける。お熊から話を聞いた庄八は弥勒寺に遺体を引き取りに行くが、庄八の妻は密かにお熊の後をつけ、お熊の店の場所を確認する。その報告を聞いた鬼平はお熊の店に沢田を泊まり込ませ、お熊を五鉄に連れて行く。五鉄では彦十が待っており、鬼平は彦十にお熊の面倒を見させるつもりだったが、老人二人は口喧嘩を始めてしまう。

 その夜、畳屋を見張っていた粂八と酒井は、庄八が越谷の旅籠入升屋へ行き、翌朝畳屋へ帰ったことを鬼平に報告。鬼平は畳屋と旅籠が盗賊宿であると判断、見張りをするように命じる。

 鬼平はお熊に会いに行き、3年前に行き倒れになった茂平を診た医者にその時の様子を聞き出すように命じる。茂平は3年前行き倒れた時から胃を患っていたことがわかる。粂八と彦十は入升屋に客として潜入、すると入升屋の下男が畳屋を訪れる。鬼平はそれを聞き、盗賊たちの動きが早くなってきたと考える。一方、弥勒寺とお熊の店には怪しい者が見張っている様子はなかった。

 庄八が入升屋の下男を連れて弥勒寺に行ったと知らせが入る。それを聞いた鬼平はお熊に弥勒寺の様子を探らせる。入升屋の下男は茂平の代わりに弥勒寺で働くことになる。鬼平は下男が茂平の代わりに引き込み役となったのだと確信する。

 鬼平は今後の調べについて2つの手立てがあるといい、一つは盗賊たちの狙いを突き止め盗みに入ったところを一網打尽にするか、もう一つは畳屋夫婦を召し捕り白状させるか、だったが、鬼平は夫婦を召し捕るよう命じる。しかし畳屋夫婦を捕まえ庄八を拷問にかけるが、一味のことは一切白状しなかった。盗賊たちのことを知る手立てがなくなり、さらに夫婦を捕まえたことで時間がないことで困る鬼平だったが、畳屋につなぎに来る盗賊を捕まえて、つなぎ役を拷問にかけることで全てを白状させる。

 入升屋に続々と今市の十右衛門一味が集まって来る。鬼平たちは旅籠に押し入り一味を捕まえる。翌日には弥勒寺に入っていた下男も捕まえる。

 鬼平はお熊に彦十を同行させ、茂平の孫に金を渡しに行かせたが、牛松は借金が原因で夜逃げしてしまっていた。お熊は茂平の残した金で茂平の墓を立ててやりたいと話し、鬼平は了承する。お熊は茂平が大金を持っていたことを不思議がるが、鬼平は茂平は博打の才があったと答える。そして鬼平はこれからも御用のために働いてくれとお熊に話す。

 

 初見時の感想はこちら。あらすじを追加した修正版。

 

 笹やのお熊という鬼平の昔馴染みの老婆が登場する話。鬼平が若い頃無頼をしていたことは何度もシリーズの中で語られ、その頃の知り合いが登場する話も何話かあり、彦十もその頃からの知り合いである。

 話はそのお熊の知り合いが遺言を残すだけでなく、大金をお熊に託すところからスタート。その大金に疑問を持ったお熊が鬼平に話を持ちかけ、そこに犯罪の匂いを嗅ぎつけた鬼平が調べを進めて行く。

 調べは、怪しい畳屋をつけることで芋づる式に盗賊たちの宿などが判明していくので面白みはないが、その過程でちょこちょことお熊が活躍する。そんなお熊が途中で鬼平にもう死んでも良いと思っていたと五鉄で話し、それを聞いた鬼平が老人にも生きがいを作ってやらなければいけないと久栄に話す場面がある。今の高齢化社会を見据えたようなセリフがなかなか良い。

 

 少しだけ引っかかったのは、最初に亡くなる茂平が昔から胃を患っていたことがわかった場面。鬼平は茂平を弥勒寺の引き込みだと考えていたが、昔から病気持ちだった男を引き込みにするのか、という疑問を持つ。しかしこのことは結局最後まで明らかにされず、見ている側としてはちょっと消化不良だった。終盤やっと一味の親分である今市の十右衛門が登場するが、そこでの会話からすると、あまり深い考えを持たずに行動する男のように感じられるので、それだけのことだったのかも。

 

 初見時の感想にも書いたが、お熊役の北林谷栄さん、この時すでに80歳近いがまだまだ元気な老婆役を見事に演じている。改めてwikiを見たらこの前年にトトロでおばあちゃん役声優をやってるのね。そりゃ元気だなわけだ。ただ初見時にも書いたが、ラストで今後密偵となると話していたが、実はこの後のシリーズにもお熊は登場している。北林さんではない女優さんになってしまっているのが残念だが。

 

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