遺跡発掘師は笑わない 出雲王のみささぎ 桑原水菜

●遺跡発掘師は笑わない 出雲王のみささぎ 桑原水菜

(ネット紹介記事より抜粋)

 次々と国宝級の遺物を掘り当てることから天才と呼ばれる若き発掘師・西原無量が派遣されたのは、神々の集う島根県出雲市。だが発掘現場の厳谷は、対立するふたつの旧家、降矢家と八頭家にゆかりの神域で、うかつに手をつけると祟りがある…と地元で囁かれている場所だった。不穏な空気の中、無量の手で青銅製の髑髏が出土。それと呼応するように、発掘現場では八頭家の跡継ぎ・孝平が遺体で発見されて…。シリーズ第2弾!

 

 前作に続きシリージ第2作。

 前作の事件から1年後が舞台。この間、萌絵は無量と会うことはなく、それでも無量と同じ世界に身を置くことを決意。そんな萌絵が研修も兼ね出雲の発掘現場に行くが、そこで無量と再会。さらに忍もカメケンの一員となり、3人が揃うという展開。

 物語は、例によって無量が現場で青銅の髑髏を発掘。その後に殺人が起こり…というおきまりのパターン。

 2つの旧家の対立、古くから伝わる言い伝え、南朝の皇統系統者、GHQ、3種の神器、と今回も真偽織り混ざった話題が続々と出てきてやっぱりワクワクさせてくれた。ゲスト登場人物たちのキャラも立っており、中でも高野が無量に語る想いはなかなかのものだった。その後の展開は残念なものだったが。

 無量が特別なものを発掘し、それが原因となり殺人が起こり、3人も事件に巻き込まれて行く、というのは2作目にして完全にパターン化されたようだ。

 それでも本作の特徴はこれ以外の部分にある。終盤明らかにされるが、もともと関係者の血縁関係に事件の謎を解く鍵があるのはほのめかされていたが、ラストで驚愕の事実がさらに判明する。正直何が何だか、という世界だったが(笑 ラストの展開はまさに横溝正史金田一シリーズを彷彿とさせる。そこまで入り組んだ血縁関係だったならば、途中で家系図を簡単に示すなどして欲しかった。

 歴史フィクション好きとしては面白かった。南北朝の分裂とその時期に3種の神器がん盗まれたというエピソードは他の小説でも読んだことがあるし。

 ちょっとパターン化しているのが残念だが、有名な遺跡のことを勉強できるというのは楽しい。もう少しだけ先のシリーズを読んでみるか。