鬼平犯科帳 第1シリーズ #16 盗法秘伝

第1シリーズ #16 盗法秘伝

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 鬼平は叔母の法要のため浜松へ行った帰り、鬼平は連れの忠吾と別々に帰ることにする。途中、川を船で渡ったところで鬼平は若い男女をゴロツキらしい男たちが嬲っているのを目撃、二人を助ける。しかしそこへ役人がやってきて二人を捕らえると言う。理由を聞くと女おもよは奉公先から3両の金を盗んで逃げており、男弥吉はおもよの夫だった。鬼平は仕方なく二人を役人に渡す。

 そんな鬼平の様子を見ていた男が声をかけてくる。男は善八といい、鬼平の態度に惚れたと話す。先ほどのおもよは升屋に奉公していたが、升屋はあくどい商売をしており奉公人たちにもきつく当たっていると言う。その後鬼平は善八を巻こうとするが彼はしつこく鬼平についてくる。

 鬼平は見付宿に宿を取るが、その夜善八が盗みに行くのを目撃する。翌朝善八は鬼平の部屋に来て一緒に朝飯を食べるが、宿では昨夜見付の南中泉で盗みがあったと言う噂で持ちきりだった。鬼平は善八の髪に蜘蛛の巣がついていると指摘する。

 二人は一緒に旅をするが、善八は鬼平に自分の仕事を手伝って欲しいと話す。すると昨日の弥吉が二人の前に現れる。弥吉は賭博にハマりその借金の代わりに妻であるおもよを奉公に出せと言われ、その後升屋市五郎からおもよを妾に欲しいと言われたと話す。善八は役人と升屋はグルなのだと話す。

 二人は弥吉を連れ金谷の宿へ。そこでも女中から升屋と役人がグルだと聞かされる。その時升屋の店先に役人鬼頭監物がやってきて、升屋市五郎とその妻が迎えに出るのを鬼平たちは見る。その夜鬼平は升屋に忍び込み、おもよを救い出し川の船で待つ弥吉に引き合わせ、金を渡し逃げるようにと話す。翌朝、役人たちは逃げたおもよを探すために川止めをし、宿を調べにくる。その頃忠吾が金谷の宿へ到着するのを鬼平は目撃する。忠吾は女郎がいると言われ宿へ。その夜女郎が忠吾の部屋にやってきて手紙を渡す。それは鬼平からのもので、同封された書信を駿府道中奉行代官米倉に届けるようにというものだった。

 その夜鬼平は善八が盗みの準備をしているのを目撃。善八は鬼平に盗みの手助けをして欲しいと頼む。二人は宿を出る。善八は誰かに盗みの秘伝を教えたかったと話し、升屋の図面を見せながら盗みの7か条を伝える。二人は升屋に忍び込み、蔵から千両箱を盗み出す。翌日升屋では市五郎が役人鬼頭監物たちに怒鳴る姿があったが、鬼平たちは岡部の宿にいた。

 二人は風呂に入る。善八はどこかに昨日の金を隠しに行った後だった。善八は鬼平に金を渡し風呂へ。鬼平は善八が常に身につけていたお守りの中を確かめる。風呂を出た鬼平は善八から渡された盗法秘伝の巻物を読む。そこへ戻ってきた善八はお目あて細見を見せる。そこには善八が30年以上かかって調べ上げた30軒以上の家の詳細が書かれていた。善八は盗人の生き方を鬼平に語る。そこへ役人たちが鬼平を探してやってくる。役人たちは弥吉が鬼平に書いた手紙を持っており、おもよが逃げたのを鬼平が助けたことを知っていた。役人たちが鬼平たちの部屋に押し入った時、忠吾が駆けつけ鬼平のことを話す。それでも鬼頭監物は鬼平を斬ろうとする。鬼平が立ち会っている最中、道中奉行の米倉が駆けつける。その夜米倉と鬼平は酒を飲みながら話をする。そこへ忠吾が善八がいないと告げる。

 善八は隠しておいた金を取りに行ったがそこへ鬼平が現れる。お守りの中に隠し場所が書かれていたのだった。鬼平は前に善八からもらった金を渡し堅気になって暮らせと話し去っていく。

 

 

  初見時の感想はこちら。あらすじを追加した修正版。

 鬼平が盗賊と仲良くなるパターンの話。このパターンもシリーズの中で何話かあるが、本作はベストではないだろうか。コミカルな部分もあるし、実際に鬼平が盗賊として狙った屋敷に忍び込むシーンまである。原作の著者池波正太郎氏も自らが選ぶ5作の中に本作の原作をあげているようだし。

 話の中で善八が盗人の心得を話すのだが、その中身が興味深い。夏は盗みはやめておけ、などあまりに具体的で驚かされる。それを巻物にし、さらにお目みえ細見なるものまで鬼平に見せる。時代小説で盗賊が図面を用意するのを読むことがあるが、細見まで登場するのはあまり読んだことがない。池波氏が本作に力を入れていた証拠だろうか。

 

 本作の見どころはこれ以外にもある。あまりシリーズで伏線が張られることはないように思うが、本作ではそれがいくつか現れている。

 一つ目は冒頭で鬼平が助けようとする夫婦。これがきっかけとなり善八が鬼平に惚れ込む、という流れだが、これも伏線であり最後に役人たちが鬼平を捕まえにくる理由になっている。

 二つ目は善八のお守り。盗みに入った後の風呂のシーンで登場する。その時はよくわからないが、最後に善八が盗んで隠していた金を取りに行くところを鬼平に見つかる。お守りの中に隠し場所が明記されていたことを鬼平が明かす。

 三つ目はその後のシーンで鬼平が差し出す金。途中盗んだ金の一部を善八は鬼平に渡すのだが、それを最後にこの金で堅気になれ、と鬼平が善八に返す。鬼平の金ではなく盗んだ金の一部なのだろうが、それを渡してしまう鬼平の豪快さ。

 そして四つ目はちょっと気づきにくいが、金谷の宿で鬼平と善八が升屋が役人と結託しているのを目撃するシーンの直前。部屋で女中から升屋と役人のつながりを聞いているシーンで、実は善八がこよりを作っている。何をしているのか見たときには不思議に思ったが、これは升屋に盗みに入り蔵の錠前を外すときに善八が使用しているのだ。

 伏線がこれだけ多い話も珍しいと思うが、どうだろうか。

 

  いろいろと書いたが最後に忘れちゃいけないもう一つ。前作でおそらくシリーズ初めてコメディリリーフとしての役割を果たした忠吾が、本作でもその役割を存分に発揮している。鬼平と別れて旅をする忠吾だが、鬼平の誘い文句通り女を求めて宿を探す。店先の醜女女中の文句に騙され宿を決めるが、部屋を訪れたのがまさにその醜女。鬼平からの手紙を受け取る下りはあるが、それを忘れさせるほどのお笑いをその醜女女中と演じてみせる。コメディリリーフ忠吾の面目躍如といったところ(笑

 

 前作の財津一郎さんに続き、本作のゲストはフランキー堺さん。第1シリーズは豪華なゲストが目白押しだが、2話続けて盗賊が主人公という似た話にもかかわらず、これをぶつけてくるのは製作陣の自信の表れだろう。

 

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