愛は静けさの中に

●664 愛は静けさの中に 1986

 ジェームズは聾唖者の学校へ赴任してくる。11年生数人のクラスを受け持つことになり彼らが喋れるようになるため授業を始める。彼は昼休み食堂で働くサラという女性を目撃する。校長によれば彼女は5歳の時からこの学校におり、今は清掃の作業をしているが問題児らしい。

 ジェームズはサラに接触、彼女も話せるようになるよう努力をしようとするが、彼女は全く受け付けなかった。彼はサラを食事に誘う。サラは聞こえないはずの音楽に合わせて踊ろうと言い出す。そんな彼女を助けたいと願うジェームズはサラの母親に会いに行く。サラはかつて姉の男友達に誘われたが、彼らがサラに話すように求めたため心を閉ざしたことを知る。ジェームズはサラにそのことを話すが、彼女は男たちが自分の体だけが目的だったと話す。

 夜サラは一人学校のプールで泳いでいた。ジェームズは自分がサラを愛し始めたことに気づき彼女に告白、二人は付き合い始める。学校で家族参観の日がやってくる。ジェームズのクラスの生徒は音楽に合わせて歌い踊る。生徒たちもその家族たちも大喜びする姿を見てサラが怒り悲しむ。そして怪我をしてしまう。それを知った校長がジェームズを非難するが、彼はサラの仕事を辞めさせ一緒に暮らすと宣言する。

 二人は一緒に暮らし始めるが、ジェームズはやはりサラに話をして欲しいと求めてしまう。ある日サラは同じ聾唖者のパーティに誘われジェームズとともに参加する。パーティの主催者が聾唖者でありながら才能を発揮しているのを見たジェームズはサラにも話すための努力をするよう求めるが、サラは皆が自分たちの世界に引き込もうとしているだけで、私の世界を理解しようとしてくれないと話し家を飛び出してしまう。

 サラは絶縁状態だった母親の家へ行く。そこで母親から育て方に関して謝罪される。ジェームズはサラに会いに行くが拒絶されてしまう。サラは大学へ行くために仕事を始めていた。母親からジェームズが会いに来たことを聞いたサラは、学校の卒業パーティに参加しジェームズと再会する。久しぶりにあった二人はぎこちなかったが、ジェームズはサラに、音がある世界でもなく静寂の世界でもない、二人の世界を見つけようと話す。

 

 これまた全く知らない映画だった。そう言えば日本でも聴覚障害の主人公のドラマがあったなぁと思い出した。あのドラマはこの映画の約10年後の作品らしい。

 

 聾唖者と学校教師が主人公ということで、ラストは喋れるようになってハッピーエンドかと思ったが、そんな安っぽい話ではなかった(笑 聾唖者も障害以外は一人の人間である、という信念のもとで作られた話で、主人公教師の生徒はもちろんだが、ヒロインもその本音をぶつけるシーンがハイライト。健常者からすれば、彼らが話せるようになる手助けをしたいと考えるが、彼らからすれば健常者こそが彼らの世界へ近づく努力をすべきなのだろう。ラスト近く、ジェームズが話す努力をすることから逃げているとヒロインを非難するが、それが全く見当違いであることを私たちも認識すべきなんだろう。

 

 それにしてもヒロイン、マーリーマトリンが本当に聾であることは驚いた。聾唖者の気持ち、本音をぶつけるシーンの凄さはそこから来ているのだろう。単なる美人だと思って観ていた自分が恥ずかしい(笑