あきない世傳 金と銀2 早瀬篇 高田郁

●あきない世傳 金と銀2 早瀬篇 高田郁

 五鈴屋に奉公する幸は徳兵衛の後添えとなることに。戸惑う幸だったが、治兵衛の言葉もあり後添えとなることを決意する。その治兵衛も倒れ店を去ることに。幸は惣次に商いについて教えてもらうようになる。

 以下の12章からなる。

 

1章 ひとつの提案 1738年

 富久、治兵衛 仲間の寄合で徳兵衛に後添えを迎えることを約束させられる

 治兵衛 富久に幸を徳兵衛の後添えにすることを提案

 幸 お竹の簪紛失に際し、簪に耳かきが付いている理由を答える

 富久 幸を嫁に迎えることを決断

 

2章 初午

 幸 初午の日、富久の供で北野村の旅籠へ そこで彦太夫、母房と再会

 その場で、徳兵衛の後添えとなるという話を聞かされる

 

3章 番頭の窮地

 五鈴屋で徳兵衛の後添えについて話し合いの場で、治兵衛倒れる 

 如月いっぱいで治兵衛、五鈴屋から去ることに

 

4章 幸の決心

 如月晦日、改めて関係者での話し合い 徳兵衛が幸を嫁にすることに同意

 幸 自分が選ばれた理由と話を流す方法を富久に尋ねる

 治兵衛、幸に今は商い戦国時代であること、幸は戦国武将になれるとを話す

 弥生朔日、富久が店の皆に幸の件を話し、治兵衛は店を去っていく

 

5章 ご寮さんの誕生

  幸 富久に連れられ呉服仲間の寄合に出席 質問ぜめにあうが答えられず

 その代わり、商売往来の項目を諳んじて、扇子の開き方の採決がされ認められる

 

6章 ご縁日

 幸 富久に連れられ仕立物師の喜助の家へ 富久は幸の祝言の晴れ着を依頼する

 祝言の日、彦太夫、母房、妹結と再会

 

7章 波紋

 祝言翌日、房と結は帰って行くが、結はいつか大阪のこの店で働きたいと望む

 幸 鉄助に商売往来に出てきた絹布を触らせてもらう

 徳兵衛 町内への祝儀銀は出さないと宣言

 幸 富久に連れられ「部屋見舞い(親戚過ぎへの挨拶回り)」をするが冷たくあしらわれる 最後に治兵衛の家へ行き、まず知識を身につけろと言われる

 

8章 三兄弟

 富久が病で倒れ、幸は代わりに貸本屋にいる智蔵へ着物を届ける

 送ってくれた智蔵に店前現銀売り、祝儀銀を払わないとどうなるかについて教えてもらう

 惣次 徳兵衛が明石縮を勝手に持ち出したことを非難

 

9章 肝試し

 幸 惣次に連れられ「肝試し」に

 それは店前現銀売りの店で明石縮の反物を銀60匁で買ってくることだった

 幸は店前現銀売りと五鈴屋の商売のやり方の違いを惣次に尋ねる

 幸 鉄助から反物について教えを請い、惣次はそれを了承する

 

10章 鵺

 幸 治兵衛を見舞い、現銀売りと掛け売りの違いを尋ねるが、惣次の屋敷売りに同行するのが一番だと言われる

 治兵衛の息子 賢輔から来年8歳になったら五鈴屋で奉公させて欲しいと言われる

 幸 祭りの客が自分のことを鵺のようだと言っているのを聞く

 幸 惣次に連れられ修得先生(漢方医)の家へ同行、帰りに自分は鵺だと話すと惣次も自分も鵺だと答える

 

11章 誓文払い

 惣次 誓文払いの日に店前現銀売りをすることを提案 富久は当初難色を示すが、惣次の分家を3年待ってもらうことを条件に了承

 店前現銀売りは大成功を収めるが、その夜徳兵衛は売り上げを盗もうとする

 それがきっかけとなり手代の留七、伝七が店を辞めてしまう

 

12章 縁と月日 1739年

 富久 徳兵衛を人別帳から外すことを考えるができず

 幸 治兵衛を見舞い、「縁と月日」という言葉を教えられる

 年が明け、治兵衛の子、賢輔が五鈴屋での奉公を始める

 

13章 新しい風 1741年

 富久の息子三代目徳兵衛が亡くなって23年目

 桔梗屋が惣次に伏見屋為右衛門の末娘の婿養子となる話を持ってくる

 幸 夜中に徳兵衛に襲われそうになるが、行灯が倒れ難を逃れる

 

14章 急転直下

 惣次 天神祭に伏見屋の見物船に誘われる

 翌朝 廓からの朝帰りの徳兵衛が頭を打ち意識不明に 祭翌日死亡

 幸 初潮を迎えたことをお竹お梅に教えられる

 徳兵衛の49日 富久が惣次に五代目を要請、惣次は幸を嫁にすることを条件にする

 

 シリーズ2作目。前作終わりで話が出た、幸が徳兵衛の後添えとなる話が進み、祝言をあげることに。しかし徳兵衛が望んだことでもなく、町内への祝儀銀も払わない。結果、幸は自分のことを鵺のようだと卑下することになる。

 治兵衛も倒れ店を去る中、幸は鉄助について着物のことを学び始め、惣次からも商いについて色々と教えてもらい始める。惣次が考えた誓文払の日の店前現銀売りがあたり店は賑わうが、その売り上げを徳兵衛が盗もうとしたことが発覚、その際の徳兵衛の言葉に嫌気がさした手代が二人店を辞めてしまう。

 さらに惣次に婿養子の話が舞い込む。惣次が返事を留保する中、徳兵衛が突然亡くなってしまう。婿養子の話が良い話であることを知りつつ、富久は惣次に五代目になって欲しいと懇願、惣次は幸を嫁とすることを条件にその話を受けようとする…

 

 前作からさらに増え14章構成の本作。前作が1作で6年が経過したのに対し、本作は3年が経過。それでも幸の嫁入り、徳兵衛の盗み未遂と突然死と大きなエピソードが満載だった。徳兵衛の阿呆ぼんさはどうしようもないレベルに達し、この先どう展開させるのかと思っていたが、まさかの突然死。そりゃそうだよなぁ、この店主では店の再建などできるはずもないし。

 

 でラストは、惣次の幸嫁取り宣言(笑 あぁここからがこのシリーズの本番なのね。できる人間だけが残った店となったし、圧倒的な同業者伏見屋との因縁もできたし、恩師とも言える治兵衛の息子は奉公にきているし。

 邪魔者がいなくなって、どんな展開が待っているのか、次の作品が早くも楽しみ。