あきない世傳 金と銀6 本流篇 高田郁

●あきない世傳 金と銀6 本流篇 高田郁

 智蔵が亡くなり、五鈴屋は後継をどうするのかが問題となる。幸が3年限りということで七代目となる。そして江戸で新たな店の候補地が見つかり、無事入手するとともに幸はお竹を連れ、江戸へ旅立つ。半年の準備期間を終え、江戸店が開店の日を迎える。

 以下の12章からなる。

 

1章 中有 1750年

 智蔵 死去 誰が五鈴屋を継ぐかを忌明けに呉服仲間に報告すると決まる

 新町廓の呼屋、泉屋の番頭尚助が五鈴屋に来て、四代目の隠し子がいると話す

 

2章 女名前

 幸 泉屋の件、孫六と治兵衛に相談

 幸 尚助に町役に訴えると話し、尚助は逃げ出すが、読売で噂としてネタにされる

 幸 孫六から後継がない店で女名前を3年許してもらった過去の事例を聞く

 

3章 出帆

 幸 呉服仲間に幸が店を3年だけ継ぐことを訴える 川浪屋が助ける

 智蔵の死の知らせを聞いて戻ってきた佐七と賢吉が江戸へ戻る

 菊栄 幸が七代目を継いだことを喜び、五鈴屋を久しぶりに訪れる

 

4章 木綿と鈴紋 

 川浪屋 以前結を嫁に欲しいと言ってきた川浪屋が結婚

 幸 彦太夫に津門村の木綿で風呂敷を作りたいと相談、結が津門村へ

 結 木綿とともに綿買いの紋次郎を連れて戻る

 

5章 春日遅々 1751年

 江戸からの手紙で、真澄屋が江戸から撤退したと知らされる 

 幸 江戸店の候補が見つかったと知り、治兵衛に相談し、却下すると決める

 幸 街中で銀駒と出会い、その息子が智蔵の息子ではと尋ねるが否定される

 

6章 果断

 智蔵の1周忌 津門村の仁左衛門から縮緬が収められないと言われる

 江戸から、江戸店の候補として好条件の白雲屋が見つかったとの知らせ

 幸 周助を江戸へ送り、よければ白雲屋を買い取るよう指示

 幸 自分も江戸へ行くことに お竹に一緒に江戸へ行くよう頼む

 

7章 蟻の眼、鶚の眼

 幸 綿買いの紋次郎から江戸での綿商いの状況を聞く

 呉服仲間の寄り合いで、他国の店が現銀売りと掛売りをしていると聞かされる

 江戸へ向かう幸に、菊栄、修徳、亀三が祝いに

 幸 治兵衛から、蟻の眼と鶚の眼の言葉をもらい、江戸へ旅立つ

 

8章 七代目の誓い

 幸とお竹 江戸へ。様々な勉強をしながら江戸へ到着

 幸 店を譲ってくれた白雲屋に挨拶に

 幸 江戸店の披露目を半年後の赤穂浪士討ち入りの日と決める

 

9章 光と塵

 幸 お竹と江戸の古手屋の商売の仕方を見に行く

 江戸店での反物の見せ方を皆で話し合う

 

10章 知恵を寄せる

 幸 浅草寺の手水場で手ぬぐいがかけられているのを見て、賢吉と反物の見せ方として撞木を思いつく

 指物師和三郎に撞木を作ってもらう

 問題だった反物の塵を払うための絹のさいはらいを思いつく

 

11章 満を持す

 津門村の木綿でできた五鈴屋の名前入り手ぬぐいが届く

 皆で手ぬぐいを神社仏閣に置きに出かける

 手ぬぐいがきっかけとなり、湯屋で五鈴屋のことが話題となる

 開店前日、和三郎の一言で、店で帯結びなどを教えることを思いつく

 

12章 討ち入り

 江戸店開店を迎え、多くの客が集まる

 若い母親が客として訪れ言葉を残す、幸や店の者がそれに対してお礼を述べる

 

 シリーズ6作目。ざっくりとしたあらすじは冒頭に書いた通り。前作終わりで倒れたと知らせが入った智蔵だったが、本作冒頭では智蔵の初七日から始まる。まるでドラマにある「ナレ死」のような扱い(笑 直後に隠し子騒動が持ち上がるが、幸の毅然とした態度で瞬殺。それよりも後継者問題で幸は悩むことになる。結果、過去の事例もあり3年限りの条件付きで幸が七代目を名乗ることに。

 江戸での新たな店についての調べも進む。一方で幸は江戸店に向けて木綿についても勉強を始める。そして江戸店の候補が見つかり、購入。幸も江戸へ旅立ち半年後の開店に向けて様々なことを準備、そして開店の日を、迎える。

 

 智蔵の死があっさりと書かれたことが意外だったが、本シリーズでは時の流れが全体的に早いこともあり、話はどんどんと先へ進む。

 本作の見どころは、やはり江戸店開店に向けての準備とその当日だろう。撞木と呼ぶことになる反物を見せる指物、手ぬぐいを使った粋な宣伝、そして高価なために買うことができない反物に心を寄せる若い母親とそれに対応した幸や店の者たち。

 前作で書いたように感動よりもカタルシスを感じさせることが多い本シリーズ。撞木や手ぬぐい宣伝などはまさにそのものズバリ。しかしラストの若い母親とのやりとりはj久しぶりに本シリーズでの感動シーンだったかも。あぁお竹を江戸に連れて行くと話した場面も良かった。その後のお竹とお梅のやりとりも。

 ちょっと残念だったのは、智蔵の本当の隠し子?かもしれない銀駒の子供との対面シーンか。その前に偽隠し子騒動もあったため、驚かされたが、このシーンは必要だったのだろうか。流産した赤ちゃんを思い出すための演出のように感じられてしまった。それともこの先、この銀駒の息子が話に絡んでくるのだろうか?うーむ。

 

 ラストは本シリーズには珍しくこの先の明るい未来を予想させてくれるような終わり方だった。結局どんな終わり方をされても、次の作品を読みたいと思う気持ちは変わらないということか(笑