ランチ酒 今日もまんぷく 原田ひ香

●ランチ酒 今日もまんぷく 原田ひ香

 犬森祥子は同級生亀山が社長の「中野お助け本舗」で「見守り屋」をしている。見守り屋は、深夜の見守り、付き添いをする仕事。祥子は午前中に仕事を終え、酒を飲みながらランチができる店での食事を楽しみにしている。16編からなる短編集。

 

 

 シリーズ3作目。前作は10編だったが本作は第1作と同様16作に戻り、1話のページ数も30ページ前後からこれまた第1作と同様15〜20ページほどに。ただし私の感覚だけなのかもしれないが、これまでの2作品よりもランチの料理そのものの描写が多くなっており、より「飯テロ」ぶりを発揮している感じがする。

 それでいてランチ以外の部分、祥子の「見守り屋」の仕事ぶりや私生活もしっかりと描かれている。1話ごとのボリュームが減ったはずなのに、これは不思議だが著者の上手さなのだろう。

 

 話としては、前作で自分自身の生き方を模索し始めた祥子のその後が描かれ、角谷との付き合いや元夫の妻の妊娠、娘との生活を考え始める、など祥子が少しずつつではあるが、前向きになっているのがよくわかる展開となった。

 

 角谷と同じマンションへ引っ越し、娘との先々の暮らしなども考慮して新しい仕事を始めようとする祥子が最後に描かれており、「見守り屋」としての祥子を描く本シリーズがこれで完結だと感じる。

 と思って続編の情報をネットで調べていたら、どうやら「見守り屋」に新しい女性が参加することになり、その女性を主人公とした新たな「朝酒」というシリーズがネット連載されていることを知った。あぁなるほど、と思わせる展開。本になるのを待ちたいが、ネットで掲載されている小説を読んでしまいたいとも思う。悩みどころである(笑

 

 前作に引き続き、念のために本作の各話をメモしておく。

 

蒲田 餃子

 向井康太(42) 引っ越しにあたり人を呼んだことがないことに気づき…

 離婚したての頃、娘明里と回転寿司に行った時の思い出
西麻布 フレンチ

 角谷と食事 高そうな店に不安を持ち角谷に話す

 角谷と正式に付き合うことに

新大久保 サムギョプサル

 ミカママ 人気ブロガー 父の介護での愚痴

稲荷町 ビリヤニ

 梅田直子 仏壇屋 家族が旅行に行くため一人残る直子を見守る

 禁じられていた仏壇屋を夜中に開き、客の対応をする

新宿御苑前 タイ料理

 桂木瑠衣の赤ちゃん芽衣 キャバクラ嬢 
五反田 朝食ビュッフェ

 二十代女性 寝ているのを見守るだけ 個人的なことは話さない

 角谷とランチをした後、彼の泊まるホテルで休み、夕飯も一緒に
五反田 ハンバーグ

 角谷のホテルに泊まった翌日一緒に食事

 初対面の時のことを話される 角谷が東京で暮らすことを決める
池尻大橋 よだれ鶏

 占い師 政治家も頼りにする大物

 明里から電話があり会うことに 会う時のためにシュークリームを買って行く
銀座一丁目島風お好み焼

 中澤紀和 銀座のバーのマダム  旅行に行きたいと言った祥子を広島アンテナショップへ連れて行く

 明里から元夫の妻美奈穂が妊娠したことを聞く
高円寺 天ぷら

 小岩良太 上京して3ヶ月の学生 部屋の様子や暮らしぶりを親に報告するため
秩父 蕎麦 わらじカツ

 占い師 横にいるだけだが、疲れる

 角谷に小旅行に誘われる 娘明里のことを話す
荻窪 ザンギ

 横井華絵 キャバクラ嬢の娘 

 元夫と会う 妻の妊娠を娘がどう思っているか
広島 ビール

 フリーライター 占い師のことを聞かれる 角谷から聞いたと言われる
六本木 イタリアン

 元夫と娘と会食 元夫に三度目の正直の件を尋ね、答えを聞く

 角谷に振りライターの件を尋ね、真相を聞く 角谷に民泊を提案される
新橋 鰤しらす丼

 30歳女性 タワーマンション暮らしだが最近夫を亡くす

 角谷とランチ 提案を受け入れるが、占い師のことは喋らなかった
末広町 白いオムライス

 小山内学 女性と暮らすために引っ越し その前に祥子に母親と春佳のことを

 角谷の暮らすマンションへ引っ越し 最後に行きつけのうさぎ屋へ