鬼平犯科帳 第1シリーズ #21 敵

第1シリーズ #21 敵

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 左馬之介が男の跡をつけている。男は如意輪寺門前の花屋へ入って行く。左馬之介は花屋が盗人宿だと考え、男も盗人だろうと考え、鬼平に知らせに行く。

 左馬之介は旅帰り、三国峠を通った際の話をする。男が峠道を歩いていると、彼に対し親の仇だと言って斬りかかった若者がいた。若者は亀吉のせがれ与吉だと名乗るが、男は否定する。二人はもつれ合い与吉が崖から落ち、その際に持っていた刀が刺さり死んでしまう。男は与吉を弔いその場を後にしたが、その一部始終を左馬之介は目撃しており、男の跡をつけ始める。

 男は坊主の湯へ。男の名は五郎蔵、昔の盗賊の頭をしていた。そこで番人の嘉六に峠での話をする。亀吉は五井の亀吉という盗賊の頭で、五郎蔵とは共頭をしていたが、五郎蔵はすでに足を洗っていた。嘉六は昔の仲間の一人である伝八が亀吉を殺め、それを五郎蔵のせいにし与吉に吹き込んだのではと話す。五郎蔵は江戸でまた仕事をするつもりだが、支度金が足りないので金を貸して欲しいと嘉六に頼む。そこへ跡をつけていた左馬之介がやってくる。その夜、左馬之介は嘉六から金を借りる五郎蔵を目撃していた。

 話を聞いた鬼平は粂八を呼び出し花屋と五郎蔵を見張るように命じる。

 五郎蔵は昔の仲間の文助の元へ。彼は病に臥せていた。五郎蔵は死にいく文助のため、文助の昔の女で今は吉原にいるお浪を身請けするために盗み仕事をし金を稼ごうとしていた。その後五郎蔵は吉原にお浪に会いに行き文助のことやお浪を身請けするつもりだということを話す。

 店を出てきた五郎蔵は左馬之介を見かけ声をかける。左馬之介は偶然を装うが、五郎蔵は左馬之介が自分をつけてきているのを知っていた。蕎麦が食いたいという左馬之介に蕎麦を奢り五郎蔵は去って行く。

 五郎蔵は昔の手下がいる盗人宿へ。そこで江戸の呉服問屋で盗み仕事をすることを伝えるとともに伝八の行方を尋ねるが誰も知らなかった。手下たちに理由を聞かれた五郎蔵は、伝八は凄腕の鍵師だったが、押し込みの際に女を犯そうとする悪い癖があり、五井の亀吉親分に怒鳴られていた、前の仕事の時にもそんなことがあり、その半月後に亀吉が殺されるという事件があったが、その亀吉殺しの犯人が自分だと与吉が言っていたと峠の一件を話す。

 五郎蔵は花屋へ戻り、伝八のことを尋ねるが主人は知らなかった。しかし舟形の宗平なら知っているかもと宗平の居場所を教えてもらう。五郎蔵は宗平に会いに行く話を聞く。宗平は与吉が五郎蔵が親の仇だと出て行ったことを話す。五郎蔵は三国峠での出来事を正直に話すと宗平は五郎蔵の話を信じ、与吉が伝八から五郎蔵が親の仇だと聞いたと言っていたと話す。

 五郎蔵は宗平と文助の見舞いに行く。その帰り道二人は何者かに襲われる。五郎蔵は宗平を逃すが、鬼平が宗平を捕まえる。五郎蔵は文助の家へ行くが、文助は何者かに殺されていた。

 花屋に五郎蔵の手下がやってくる。五郎蔵は仕事は明日だと話すが、二人を盗賊改方が見張っていた。五郎蔵は手下たちのいる盗人宿へ行き、盗みに入る呉服問屋の図面を見せる。しかし手下たちはそれを奪おうとする。そこには伝八がおり、手下たちはみな伝八についていた。伝八は亀吉や文助を殺めたのは自分だと話し、五郎蔵を殺そうとする。そこへ鬼平たちがやってくる。驚く五郎蔵に左馬之介が事情を説明し、鬼平は亀吉の仇と取れと五郎蔵に話す。鬼平たちが手下たちを捕らえる一方で、五郎蔵は伝八と勝負をし彼を倒す。

 五郎蔵は役宅へ呼ばれる。そこには宗平がいた。鬼平は左馬之介や宗平に事情を聞き亀吉の仇を討たせたのだと話す。そして死んだ気になって世の中のために自分の仕事を手伝えと話す。宗平も鬼平の人柄に惚れたと密偵となることを承知したことを聞いた五郎蔵は話を受け入れる。鬼平は五郎蔵に支度金だと120両を渡し、文助のためにお浪を身請けしてやれと話す。

 五郎蔵はお浪を身請けし自由の身にしてやるが、どうやって文助のことを話そうか迷っていた。そんな二人を鬼平は見守っていた。

 

 初見時の感想はこちら。あらすじを追加した修正版。

 

 五郎蔵初登場の話。密偵となる彦十、おまさ、粂八の初登場の話もなかなかだったと思うが、本作はその中でも一番凝った話になっている。

 先にあげた3人は盗み働きの際に鬼平と知り合う、というパターンだったように思うが(彦十は違ったか)、五郎蔵は偶然知り合った左馬之介がその人柄に惚れ込み、跡をつけるというパターン。盗みから足を洗っていた五郎蔵がまた仕事をするために江戸に舞い戻ってくるのだが、それは仲間のため。しかも死んで行く仲間の昔の女を吉原から救い出そうとするためのもの。ここからして、五郎蔵が他の密偵とは一味違うことを印象付ける。

 仲間殺しの疑いをかけられた五郎蔵がその真相を暴いていく、というストーリー展開のため、昔の仲間である登場人物が多い。情報を伝えるためだけの人物だけで、花屋主人、坊主屋の番人、宗平がおり、さらに最終的には五郎蔵を裏切る昔の手下たち、きわめつけは五郎蔵に罪をなすりつける伝八まで。

 そのためか話は結構込み入っているが、ネットで調べると(私自身は原作を読んでいないので 笑)、原作の話はもっと入り組んだ話のようだ。というか原作では五郎蔵はまだ盗みから足を洗ってはいない状態らしい。それでも本作と同様、事情を知った鬼平が五郎蔵に仇討ちをさせてくれたことに感動した五郎蔵が密偵となるという展開は同じらしい。

 本作では原作にはない部分として、ラストで鬼平が五郎蔵のために120両の金を密偵の支度金として渡す。密偵の支度金、などは聞いたこともなく、これは純粋に盗み働きで五郎蔵が稼ごうとしていた金であり、その金でお浪を身請けしてやれ、と全ての事情を理解している鬼平の温情だった。滅多に感情をあらわにしない五郎蔵が、それを聞いて目を真っ赤にして男泣きをするという名場面。

 

 第1シリーズ終盤となったが、これで主な密偵が勢ぞろいしたことになる。ここからが密偵たちが活躍する鬼平となっていく。

 

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