カウボーイ

●699 カウボーイ 1958

 シカゴのホテルに上客であるリース一行がやってくるとの知らせが入る。フロント係のハリスはリースがいつも使っている部屋に滞在しているビダル一家に部屋を移ってもらうようお願いするように支配人に言われ、部屋へ。ハリスはビダル家の娘マリアと恋仲にあり、自分で書いた詩を手紙にして送っていた。しかしマリアの父がそれを受け取って見ており、二人の仲を尋ねられる。ハリスはマリアと結婚がしたいと彼女の父に話すが身分違いだと断られてしまう。

 牛追いの仕事を無事に済ませたリースがホテルにやってくる。ハリスはリースに自分も牛飼いになりたいと希望を伝えるが、牛追いに仕事はハリスが考えているような仕事ではないと断られてしまう。

 その後リースはポーカーを楽しむが負け続けて金をなくしてしまう。そんな彼にハリスは父親が農場を売った金があると言い出し、牛追いの仲間としてくれるならばと金を提供する。リースはその金を受け取りまたポーカーを始め今度は勝つことができた。

 翌日ホテルから旅立とうとするリースだったが、ハリスは金を提供したことでホテルを辞め一緒に牛追いの仕事をしようとする。しかしリースは金を返しハリスを追い返そうとする。それでもハリスは金を受け取らずリースと一緒に牛追いの仕事をすることに。

 リース一行は途中新たな仲間と合流、その中には元保安官のドクもいた。一行はメキシコのビダルの農場へ向かう。ハリスは牛追いの修行を始めるがなかなか困難なものだった。野営をしていた一行だったが、一人が毒ヘビを使ったイタズラをして仲間の一人が噛まれて死んでしまう。しかしリースは仕方のないことだと言ってのける。

 一行はビダルの農場に着く。ハリスはそこでマリアが既に他の男と結婚していることを知る。彼女と話したハリスは、彼女の父が農場に戻るとすぐにマリアを男と結婚させたことを知る。農場に滞在している時に祭りが行われる。暴れ牛との闘牛をすることになり、マリアの夫と勝負することが提案され、ハリスは立候補する。しかしリースが代わりに勝負に参加。リースはハリスがマリアのことで自分を見失っていることを指摘する。リースは見事に暴れ牛の角に輪っかをかけることに成功する。

 一行は牛を連れてシカゴへ向かう。街の酒場で他の男の女に手を出した仲間がいた。彼が男たちにやられそうになっているのを目撃したハリスは助けようと仲間に呼びかけるが、皆自業自得だと助けようとしなかった。一人で助けに行こうとしたハリスをリースは殴り倒して止める。

 一行の行く手に先住民が現れる。彼らは一行が引き連れている牛の中の迷い牛を狙っていた。ハリスは一人迷い牛を誘導しに行ってしまう。仲間たちは先住民と争いになるのを恐れその隙に逃げてしまおうと話すが、リースは牛を暴走させることでハリスを助けることに。先住民との戦いになり、リースはハリスを助けるために負傷してしまう。怪我をしたリースに代わりハリスがリーダーになって一行を導く。

 駅のある街に着き牛追いの仕事がひと段落する。仲間になったドクが牛追いを辞め友人の下で暮らすことを決意し、一行から去って行く。残った一行は牛を列車に載せる作業をしていたが、そこへドクが友人とトラブルになり射殺した後、自殺したとの知らせが入る。しかしリーダーとなっていたハリスはそんなことにかまわず作業を続けるように皆に命じる。それを聞いたリースはハリスが変わってしまったと話す。

 列車での輸送中、貨車の中で牛が倒れてしまう。そのまま放置すれば死んでしまうため、ハリスは危険を承知で貨車へ。それを聞いたリースは彼を助けるために貨車へ入って行く。リースに助けられたハリスは自分のやり方が誤っていたことを認める。

 シカゴへ一行が到着しホテルへ向かう。かつてフロント係だったハリスは立派に牛追いとなっていた。

 

 

 冒頭のホテルのシーンから西部劇っぽくない話でスタート。ハリスとマリアの恋愛話が中心となるのかと思いきや、ハリスが憧れていたカウボーイになりながらも苦労する話が続く。それでもハリスはマリアと再会。あぁこれでまた恋愛モードかと思ったら、マリアは既に結婚済、というオチ。

 しかしここから話は大きく展開。ハリスがリースにやり方に反抗しつつ、徐々にカウボーイらしくなっていく成長物語に。で最終的にハリスが一人前のカウボーイになりましたとさ、という結末。

 あらすじをざっくりまとめるとこんな感じで、ハリスの恋愛と成長の話なのだろうが、ちょっととっ散らかっている感は否めない。

 

 鑑賞後、wikiで本作の脚本にトランボが関わっていることを知った。先日観た「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」の中で、トランボが多くの映画脚本の修正に力を貸したシーンがあったが、本作もそんな感じで他の人が書いたものをトランボが修正したので、こんな散らかった感じになってしまったのだろうか。

 

 統一感のなさ、ということで思うのは、映画の中で起こる3つのエピソードに対するもう一人の主人公リースの態度。

 1つ目は野営をしていた一行で起こる毒蛇のエピソード。一人が毒蛇を見つけフザケて仲間うちにその蛇を投げるのだが、それが原因で一人が噛まれて死んでしまう。リースはその死に対し仕方がないと話す。

 2つ目は町の酒場で人の女に手を出した仲間が襲われそうになるのをハリスが助けようとするが、他の皆はそれを自業自得だと言う。それでも助けに行こうとするハリスをリースは殴って止める。

 3つ目は終盤、一緒に旅をしてきた仲間のドクがカウボーイの仕事を辞め友人と共に暮らすと言って一行から離れるが、その直後に自殺してしまったことがわかる。一行のリーダーとなっていたハリスはそれを聞き流し仕事を続けるように仲間に言うのだが、それを見たリースがハリスを嗜める。

 

 2つ目の自業自得だというのはよくわかる。この時代、すべてのことは自己責任だという考え方だったのだろう。しかし1つ目はどうなのか。自己責任とは言えず(別の人間の悪ふざけが原因)、それでもカウボーイの仕事上ではよくあることだった、ということなのだろうか。それなら同意はできないまでも納得はできるけれど。

 そして3つ目。先にあげた2つを「仕方ない」とするならば、3つ目もまさに同じなのではないのか。もちろん自分はドクの自殺は同情できる。1つ目の蛇に噛まれた死に対しても同じである。1つ目と3つ目の違いは何なのだろう。ハリスも同じように考えたのではないのだろうか。まさか3つ目だけは、カウボーイの仕事から離れた場所で起きたことなのだからなのか。

 うーん、よくわからない。ラストのホテルのシーンで、ハリスが冒頭でのリースと同じようにゴキブリを撃ち殺していることから、ハリスもリースと同じ立派なカウボーイになった、ということで映画の結末としてはしまっているのだろうけれど。