鬼平犯科帳 第1シリーズ #22 金太郎そば

鬼平犯科帳 第1シリーズ #22 金太郎そば

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 酒井、沢田は醤油問屋横田屋での起きた盗賊事件を調べに向かう。途中、女でありながら背中に金太郎の彫り物をした金太郎そばの女主人お竹が出前に出かけるのを目撃する。お竹の姿が注目を浴び金太郎そばは繁盛していた。

 酒井たちは横田屋へ。店の者たちが寝静まっている間に85両の金が奪われ、さらに主人である伊太郎の髷が切られてしまっていた。金が入っていた箱には藁馬が残されていた。

 報告を受けた鬼平は藁馬を現場に置いていく盗賊藁馬の重兵衛の仕業だと確信する。しかしこれまで重兵衛は盗みはすれども店の人間を傷つけるようなことはしなかった。同心の調べで店の者に怪しいものはいないことも判明する。

 その頃金太郎そばでは、お竹が職人由松と夕食を食べていた。そのそばには藁馬が置いてあった。お竹は由松と木更津の旦那には感謝していると話し、1年前のことを思い出す。

 1年前、お竹はお竹そばという店を出していたが、客も入らず商売は上手くいっていなかった。さらに職人の一人が店に見切りをつけ出ていってしまい、由松だけが残った。最悪の状況の中、お竹は背中に金太郎の彫り物を入れ、客を呼び込もうとしていた。さらにお竹は江戸で一番と評判だった蕎麦屋無極庵に出向き、職人を一人1ヶ月で良いので貸して欲しいと頼み込む。店主は断ろうとしたが、お竹は背中の彫り物を見せ、自分が店に賭ける意気込みを話す。店主はその言葉を受け、職人房次郎を貸すことに。

 鬼平は酒井とともに美味いと評判の金太郎そばへ。そこで藁馬が飾られているのを見る。店の小女はそれは主人のお竹が木更津の旦那からもらったものだと話す。その時鬼平は店の中を盗み見ていた男に気づく。男は横田屋の番頭善助だった。鬼平は役宅へ善助を連れて行き事情を聞く。

 善助は10年前お竹と出会っていた。善助が以前勤めていた酒問屋金屋の主人が両親を亡くしたお竹を街で拾ってきたのだった。その後お竹は金屋で働くようになった。しかし金屋は潰れることとなり、息子の伊太郎は横田屋へ奉公に出ることとなり、番頭とお竹は働きながら病に倒れた金屋の主人の面倒をみることになった。お竹は伊太郎に惚れていたが、番頭は伊太郎の女癖が悪いことを知っていた。

 話を聞いた鬼平は伊太郎に遊ばれたお竹が横田屋の伊太郎の髷を切った一件と関わりがあるのでは、と話すが、番頭はお竹に限ってそんなはずはない、と答え、金屋の主人の49日が過ぎた頃横田屋の主人がやってきて伊太郎を娘の婿に迎えたいと言ってきたこと、その時それを聞いたお竹はきっぱりと伊太郎のことを諦めたことを話す。

 鬼平はお竹の一件を久江に話す。その後お竹は茶屋で働いていたが、1年後に蕎麦屋を買い取り自分で店を始めたらしいが、1年で店を買うのに必要な30両の金を稼げたとは思えないと話す。久江は女には触れて欲しくない古傷があり、それを男のようにきっぱりと捨てることはできないと話す。

 お竹は由松とともに金太郎そばが無事1年を迎えたことを祝い、寺に絵馬を奉納しにいく。そこでお竹は由松のお嫁さんを探さなければと話すが、由松はお竹に惚れていることを明かす。しかしお竹はそれを受け入れなかった。由松はそれがお竹が木更津の旦那に惚れているからだと勘違いして去っていってしまう。

 鬼平と酒井はお竹の背中の彫り物をした彫り師ちゃり文に会いにいく。そこでお竹に彫り物をした経緯を尋ねる。ちゃり文は茶屋で男を引いていたお竹を出会いその肌に惚れ彫り物をさせてくれと頼んだが断られた。しかしその後お竹の方から彫り物をしてくれと頼んできたとのこと。その際お竹は客として木更津の旦那と呼ぶ男と会った際に相手に惚れられ、藁馬と30両の金をもらった。そしてその旦那は1年後に帰ってくるので店を出していて欲しいと書き残していったとのこと。

 鬼平は久栄にわかったことを話す。そして店を出して1年の今日、木更津の旦那こと重兵衛が店を訪ねてやってくるだろうと話す。久江はもし恩人だと思っていた木更津の旦那が盗賊だとわかればお竹の性根は切れてしまうと心配する。

 お竹は一人で店にいた。重兵衛が店の前に現れる。鬼平が呼び止め事情を話す。重兵衛はお竹に会わずに捕まることを受け入れる。鬼平は横田屋の伊太郎にしたことは、惚れた女のためかと重兵衛に尋ねる。重兵衛は惚れたのではなく、観音菩薩のお姿を見ただけだと答える。

 鬼平たちが店の前から去った後、店の裏口に由松が戻ってくる。お竹は喜び由松を受け入れる。そんな二人を鬼平は見守っていた。重兵衛は島送りとなり、その後お竹の前に姿を見せることはなかった。金太郎そばはその後も繁盛を続けたという。

 

 初見時の感想はこちら。あらすじを追加した修正版。

 

 盗みに入られた横田屋の主人の髷が切られる事件と街で評判の彫り物を入れた女主人の蕎麦屋。一見何も関係ないように思える2つの事柄が結びついていくという少しミステリーめいた話。もちろん2つには関係性があったことがわかるのだが、それを過去を振り返るという形で徐々に明らかになっていく。

 そのため、過去の回想シーンが多いのもこの話の特徴。ゲストキャラであるお竹が1年前そば屋を開くが店が繁盛しないところからスタート、その後そのお竹が彫り物を入れ、江戸一番のそば屋の職人を借りることで店は繁盛する。さらに彫物師の語りにより、お竹が店を開くまでの経緯も明かされる。つまり過去を時系列で見せるのではなく、1年前を見せ、その後にその前を見せるという、ちょっと凝った作りになっている。

 

 この回想シーンの中で、10年前のお竹がまだ10代と思われる少女だったことが明かされ、その後現在のお竹を池波志乃が演じる。つまり話の中では20代の女性を池波志乃が演じていることになるわけで、ちょっと無理があるかと感じたが、ネットで調べると本作放映当時、池波志乃は35歳であり、それほど無理のあるわけではないことがわかった。随分と昔から見ている女優さんなのでもう少し高齢かと思っていたが、失礼な話だが意外に若くて驚いた。

 

 本作には池波さん以外にも、織本順吉さん、潮哲也さん(ライオン丸!)、山内としおさん(仕事人の田中様!)など懐かしい俳優さんが多く出演している。

 

 途中鬼平が事件の内容を久栄に話すシーンがあり、ちょっと珍しいと思っていたら、全てが明らかになった後、やはり話を聞いた久栄がお竹のことを心配し、それを聞いた鬼平が粋な計らいを見せるラストにつながって、なるほどと納得。鬼平に横田屋での一件を起こした理由を聞かれた重兵衛が最後に語るセリフがまたカッコ良い。いかにも鬼平らしいラスト。なので、お竹と由松の恋物語は少し余計だったかと思えてしまう。

 

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