あきない世傳 金と銀10 合流篇 高田郁

●あきない世傳 金と銀10 合流篇 高田郁

 力造が考案した新たな染物で浴衣を作ることに。白子の誠二が江戸にやってきて、賢輔が花火の図柄を考案する。五鈴屋隣の三嶋屋を菊栄が買取り、後にそれを五鈴屋に売る。川開きの日、船に乗った湯屋仲間が揃いの浴衣を着てお披露目。それが話題となり、新たな浴衣は売れに売れる。念願の仕事を終えた梅松はお梅と結婚をすることに。

 

 以下の11章からなる。

 

1章 秘すれば花 1757年

 新たな木綿反物の藍染めの試作品を力造が完成させる

 菊次郎に新たな浴衣の件で、秘すれば花という言葉を教わる

2章 初瓜

 幸 元御物師志乃から武家の女性の夏の装束、茶屋染めがあることを教わる

 隣の提灯屋三嶋屋から家屋敷を買って欲しいとの打診

 お梅、菊栄、鉄助が大坂から江戸へ出てくる

3章 嚆矢

 菊栄 この先江戸で暮らすことを宣言

 菊栄 幸と蔵前屋へ出向き、井筒屋三代目保晴こと惣次と会う

 店で売った反物を仕立てる方法を客に教え始める

4章 川開き

 賢輔が新たな図柄を生み出すのに苦労、川開きの花火へ誘うことに

 お梅は鉄助と大坂へ帰る日が近くが、梅松とのことをはっきりとさせずにいた

 花火の日、梅松は捨て猫を拾い、お梅が小梅と名付ける

 大坂へ帰る当日、お梅は小梅のために江戸に残ると宣言

5章 菊栄の買い物

 菊次郎が幸に会いにくる 菊栄に金銀細工の餝師を紹介したと話す

 菊栄 隣の三嶋屋を自分が買うと幸に告げる

6章 切磋琢磨

 菊栄 湯島の物産会に行ってくる そこへ賢輔をつれて行くことに

 師走 客のおかみさんたちが鼻緒作りに協力してくれ、多数の鼻緒を準備

 火事が起こり、千代友屋が被害にあう 幸は助けのための指示を出す

7章 羽と翼と 1758年

 行き倒れの旅人の知らせが店に入る 梅松が心配していた職人の誠二だった

 二代目吉之丞が話題に 菊栄は菊次郎に会いに行く

 菊栄 日本橋音羽屋を訪ねた様子を幸に話す 十二支柄は既に廃れていた

 幸 元気になった誠二に賢輔を会わせ新しい花火の図柄を見せる、誠二は柄の大きさについて賢輔に助言、寸法の大きい型紙で柄を作ることに

8章 雲霓を望む

 千代友屋 火事の際のお礼にくる 寸法の大きな型紙を探す

 賢輔 新しい図柄に花火を描くが、納得いかず 川開きの花火に出向く

 千代友屋が入手した大きな型紙に賢輔が新たに花火の図柄を描き、皆に見せる

9章 機は熟せり

 三嶋屋が引っ越し しかし菊栄はまだ隣に移ることのは先だと明言

 幸 花火以外の新たな図柄も含め、1年後の川開きで売り出すことに

 菊栄 幸に三嶋屋を五鈴屋として買うように進言 幸受け入れる

10章 揃い踏み 1759年

  新たな反物を浴衣に仕上げ、川開きの日に湯屋へ配ることを決め、500着をおかみさんたちに手伝ってもらい仕立てることに

 店を拡張するため、近江屋から壮太、長次を奉公人として譲り受ける

 川開きの日、湯屋仲間が船を繰り出すことに

11章 昇竜

 幸 菊次郎に会いに 吉次が来年娘道成寺をする 菊栄の釵をその時使うことに

 川開きの日、音羽屋が歌舞伎役者を乗せた船が話題になるが、湯屋仲間五百人の揃いの浴衣姿がさらに話題に

12章 あい色の花ひらく

 新たな浴衣が売れに売れる さらに木綿布の団扇が話題を呼ぶ

 力造、お才 梅松がお梅と結婚しないことを責めるが、梅松は少し待ってくれと話す

 新たな図柄も考案し、季節が移っても浴衣は売れ続ける

 冬の天赦日 梅松がお梅と結婚をすることが決まる

 

 シリーズ10作目。ざっくりとしたあらすじは冒頭に書いた通り。

 前作で不幸が襲い続けた五鈴屋に大きな転機。太物売りの店となったがそれを逆手に取り、新たなチャンスを掴む。前作から苦労していた力造の苦労が実を結ぶことになる。さらに職人誠二も仲間に加わり、賢輔の図柄もこれまでとは異なる大きさで描かれ、念願の浴衣が完成。

 売り出しも引札などではなく、川開きの日の船という方法。さらに布の団扇というアイデアも加わり、五鈴屋の浴衣は爆発的に売れる。

 大阪から菊栄、お梅も江戸へきて、五鈴屋のメンバーは出揃った感じ(笑 そのお梅と梅松の仲もやっと進み物語最後で二人は結婚する。

 

 前作での不幸が本作で一気に逆転、新たな浴衣の売り出しとお梅の結婚となった。前作の展開があまりに酷すぎたので本作の展開は留意が下がる思い。しかし本作の五鈴屋の成功はある意味、太物売りのお店としての完成形なのでは、とも思う。本シリーズも残すところあと3冊。気づけば幸も35歳となっている。賢輔の幸に対する態度が何度か描写されているが、どうもこの辺りもこの先ネタになってきそうな予感。菊栄の簪の話もあるし。

 前作のように不幸に見舞われた話も続きが気になるが、本作のように大成功をした話もやっぱり続きが気になるなぁ(笑 結局どんな展開でも次の作品を読みたいと思ってしまうのだから仕方ない。