鬼平犯科帳 第1シリーズ #24 引き込み女

鬼平犯科帳 第1シリーズ #24 引き込み女

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 伊三次が磯部の万吉を見つけたと急いで五鉄に戻ってきて、店番をしていたおまさに伝える。万吉は一人働の盗賊だが、腕を買われ諸方の盗賊から助っ人を頼まれる人物だった。伊三次は築地の蕎麦屋で万吉を見つけたが、自分の尾行では気づかれると思い、おまさに託したのだった。おまさは彦十に話をして一緒に万吉のことを調べ始める。

 おまさは橋でお元を見かける。お元は昔一緒にお勤めをしていた仲だった。おまさは声をかけずお元をつける。お元は袋物問屋菱屋に入っていった。おまさはお元が菱屋に引き込み女として入っているのではと疑い、彦十に相談する。おまさは鬼平にお元のことを伝えることに。話を聞いた酒井はお元が万吉と関わりがあるのではと考え、菱屋に見張り所を設けるよう鬼平に進言する。鬼平はおまさにお元に話しかければ本当のことを話すかと尋ねる。おまさがお元が昔のままなら話してくれるだろうが、女は変わるものだと答えると、鬼平はお元のことはおまさに任せると話す。酒井は不服だった。

 菱屋。主人の佐兵衛は店の娘である嫁やその父親から邪険に扱われていた。そんな佐兵衛のことをお元は心配そうに見つめていた。おまさと彦十は菱屋を見張る。店から出てきたお元をおまさがつけるとお元は川べりの茶屋へ。そこでおまさはお元に声をかけることに。お元は盗みの世界からは足を洗ったと答えるが、おまさはお元が引き込み女として菱屋にいる、しかも仕事が近いと確信する。しかしおまさは妹のように可愛がっていたお元が捕まるところは見たくないと彦十に話す。

 お元は店の蔵の鍵の型を取り、店に来ていた按摩にそれを渡す。按摩はそれを磯部の万吉に渡す。万吉は駒止のお頭が10日後に江戸に入ると按摩に伝える。

 同心たちは密偵たちが何も連絡してこないことに怒っていた。さらに密偵たちが裏切るのではと話すが、酒井はそれをたしなめる。その頃鬼平は生花をする久栄に愚痴をこぼしていた。

 おまさはお元と会う。お元は店の主人と割りない仲になり、一緒に逃げようと言われていることを告白し、こんな気持ちになったのは初めてだと話す。おまさはお元に幸せになるために主人と逃げるように話す。しかしそれを万吉に見られていた。

 その夜、板橋の宿場で押し込みがあった。日頃は上州で盗みを働くが数年に一度江戸へ出てくる駒止の喜太郎一味の仕業だった。知らせを聞いた鬼平は、喜太郎一味がいずれ江戸市中に現れる、万吉がつなぎでお元が引き込み女、万吉が今だに動き出さないのは、喜太郎一味を待ってのことだろうと話す。さらに酒井が持って来た書類から、3年前の喜太郎一味の調書から、喜太郎の女がお元だろうと考え、菱屋に見張り所を設けるよう酒井に命じる。

 彦十はお元を万吉がつけていたのなら二人は仕事仲間だと言い、鬼平に伝えるべきだとおまさに話す。おまさはお元のことなど全てを鬼平に打ち明ける。鬼平はお元は逃げても駒止の喜太郎が許さないだろうと話し、お元が喜太郎の女であり、板橋宿の事件のことを教える。

 菱屋の見張り所に同心たちが詰めていた。そこへ鬼平から言われたおまさが向かう。しかし動きがないため、同心たちはお元に誰かが何かを伝えたのではとおまさたちを疑う。酒井は同心たちをたしなめ、おまさを庇う。

 夜、店に按摩がやってくる。按摩はお元に明日駒止のお頭が会うのを楽しみにしていると伝える。お元は佐兵衛に明後日昼に船宿で待っていると伝える。店から按摩が出てくる。そこへ万吉が現れたため、同心たちが尾行する。しかし万吉をつけていた沢田は巻かれてしまう。万吉は喜太郎に会い、お元が怪しいと告げるが、喜太郎は自分の女であるお元を完全に信頼しており聞く耳を持たなかった。

 翌朝、沢田が万吉に巻かれたと戻ってくる。その時、お元が店から出てくる。おまさは酒井にお元の後を一人でつけさせてくれと頼む。酒井は了承するが、沢田に何事か命令する。納得田舎い同心小柳は鬼平に報告するが、鬼平は半刻ごとに知らせろと言うだけだった。夕刻になり報告に来た小柳に、鬼平はおまさとお元のことは忘れ、菱屋だけを見張れと酒井に伝えろと話す。久栄は鬼平にこれで肩の荷が下りたのではと言われる。

 夜、お元は一人で旅立とうとしていた。おまさが声をかける。そこへ万吉が現れおまさが密偵だと見抜き、おまさとお元を殺そうとする。そこへ沢田が現れ万吉を倒し、何も言わずにさっていく。見張り所に鬼平が現れ、今晩一味が動くと話す。一味が菱屋に現れ、鬼平や同心たちが一味を捕まえる。鬼平は店の佐兵衛にお元は二度と戻らん、あの女の子とは諦めるんだなと言い残し去っていく。

 役宅でおまさが鬼平にお元を逃がしてしまいましたと白状する。いかようなお裁きもと言うおまさに久栄は殿様の顔をご覧あそばせと言う。鬼平はおまさに、酒井や同心たちに礼を言いなと話す。お元は盗賊の世界から足を洗うことができ、一人旅立って行った。

 

 

 初見時の感想はこちら。あらすじを追加した修正版。

 

 修正版を書くのも20回を越えたため、ちょっとぼーっとしながら本作を見ていたら途中で、磯部の万吉と駒止の喜太郎のつながりがあることにどうして鬼平が気づいたのかわからなかった。このブログを書くために見返してやっと理解した。

 一人働きが主であるがその腕を見込まれて助っ人を頼まれる磯部の万吉が、江戸に現れたのは、誰かに助っ人を頼まれたから。その万吉がしばらく動きを見せていないのは、助っ人を頼んだであろう喜太郎の江戸への到着を待っているからではないか、と鬼平は推理したのね。

 さらにその後、おまさからお元が万吉につけられていたことを聞いた鬼平は、この3者が完全につながっていると見込んだわけだ。ドラマでは、3年前の調書から鬼平はお元が喜太郎の女であることを推理しているので、話が前後しているとも思われるけど、この辺りは大目に見ましょう(笑

 

 冒頭でいきなり話題となる磯部の万吉、そして中盤いきなり現れる駒止の喜太郎(正確には、その前に万吉が按摩に『駒止のお頭が…』と言っているけど)、この二人のつながりさえ理解できれば、本作は話が早い。つまり、喜太郎一味の引き込み女として菱屋に入っていたお元が、その店の主人に一緒に逃げよう(主人は妻である店の娘やその父親に邪険にされていた)と言われ悩む、そこへ昔の仲間だったおまさが現れて逃げることを後押ししてくれる、という話なわけで。

 

 で、やっと本題に入るが、密偵たちの昔の仲間が登場する話は良くあるパターン。多くの場合、悲劇的な結末を迎えるが、本作は珍しくそうはならないパターンだった。この結末があるからか、途中珍しく同心たちが密偵(おまさと彦十)の仕事に不満を漏らす。挙げ句の果てには、おまさたちがお元に情報を流しているのでは、とまで疑う始末。

 本作ではそれを咎めるのは、鬼平ではなく酒井の役割。見張り所で責められるおまさに酒井は声をかけ、昔の仲間だったお元のことで悩んだのは、おまさが優しいからだと慰める。他の話ではちょっと見かけない同心酒井の見せ場かもしれない。

 同心で言えば、万吉を尾行した沢田は巻かれてしまうが、その後、お元とおまさのもとに現れた万吉を見事に斬って捨てるカッコ良いシーンが待っている。さらに最後の捕り物の場面でも、いつも以上に剣が冴えていたと思うのは気のせいか。

 

 昔の仕事仲間だったお元のことで悩んだおまさ。あまり本音を言わないおまさに対する鬼平の心情を久栄が代弁しているのも見逃せない。これはラストだけではなく、途中のシーンでも同じ。さすが奥方様である。

 

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