愚者のエンドロール 米澤穂信

愚者のエンドロール 米澤穂信

 

 神山高校1年生の折木奉太郎は、姉の勧めもあり、同級生である千反田える福部里志伊原摩耶花たちとともに古典部に入部する。奉太郎は自身の身の回りで起こる不思議な事柄の謎を解いていく。

 

 文化祭を控え、古典部では文集を作り始めていたが、千反田が2年F組が製作した映画の試写会に行こうと言い出す。皆で試写会に行く。待っていたのは入須冬実で女帝というあだ名を持つ生徒だった。試写会を見て感想を行って欲しいと頼まれ、映画を見る。映画は廃村で起きた殺人事件を扱っていたが、途中で終わってしまう。不思議がる皆に入須は、この殺人の犯人は誰だと思うかと尋ねてくる。 

 奉太郎たちは映画の脚本がある事情で未完成であることを告げられ、脚本作りに協力して欲しいと頼まれる。渋る皆に入須は、制作に関わった人たちの話を聞いて納得いくかどうか確かめて欲しいと言われ、2年F組の3人から話を聞くことに。3人はそれぞれ映画の結末予想を話すが、どれも実際に見た映画との整合性が取れていなかった。

 奉太郎は入須に言われ、映画を完成させるための結末を推理することになる。入須は奉太郎の推理を気に入り、映画を完成させる。古典部の皆で完成した映画を観るが、皆奉太郎が考えた結末に違和感を覚えたと話す。自分の推理に自信を持っていた奉太郎だったが、映画の小道具に関する事実を突きつけられ、自分の推理が間違っていたことに気づく。さらに入須が自分達に依頼してきた本当の理由にも…。

 

 

 前作「氷菓」が面白かったので、シリーズ第2作となる本作を読むことに。

 「日常の謎」系だった前作に比べ、映画の中の話とはいえ、密室殺人を扱っていること、また映画の脚本を完成させるという設定であり、本作の方が自分好みだった。

 ほとんどヒントがないように思えた映画の前半〜事件発覚まで〜だけで推理が組み上がって行くのも面白い。3人の生徒がそれぞれの推理を披露し、それを古典部の面々が否定して行く過程も良かった。3つの他の推理を否定しておいて、さらなる真相を突き止める、というのはミステリとして定番だが、その分真相がスゴいものでないとしらけてしまうが、本作ではそれが上手くいっていると思う。奉太郎の推理は見事だった。

 とここまでで終わればごく普通の推理小説ということになるが、もう一つどんでん返しが待っている。どんでん返しを作る?ために、奉太郎の推理が否定されるのだが、その理由が振るっている。ホームズの時代には叙述トリックがなかった、というのがその理由。途中、ホームズの短編集のタイトルが出てきたときにはちょっと興奮したが、底を突いてくるとはね。

 そして密室殺人の謎とは異なる、映画制作にまつわるもう一つの謎も明かされる。奉太郎の推理同様、こちらも見事だと思う。先に書いた「映画の脚本を完成させるという設定」を見事に使い熟しているオチ。

 

 前作を読んだ後に、このシリーズがアニメ化や映画化されているのを知って驚いた。原作シリーズを読み終わったら、そちらも見てみようと思う。