遥かなる山の呼び声

●718 遥かなる山の呼び声 1980

 男が一人大自然の中を歩いている。その男が嵐にあい、牧場を営む母と息子の家へ一晩止めて欲しいと頼みに来る。母民子は物置に男を泊める。その夜、牛の出産が始まり、男はそれを手伝う。翌朝男は出て行くが、民子はお礼にと息子武志に持たせてお金を渡す。その際、男は武志の父親が亡くなっていることを知る。

 夏。男はしばらくぶりに民子の家を訪れ、食わせてらもうだけで良いのでこの牧場で働かせて欲しいと頼む。民子は男の態度を怪しみながらも雇うことに。男は以前牧場で働いたことがあるといい、民子の仕事を手伝う。近所の主婦は男が家に来たことを注意するように民子に話す。主婦の娘は武志とともに男に馬に乗せてもらうなど、武志は少しずつ男に懐いていく。ある晩民子は男の名前を武志に聞くように言う。男は田島耕作と名乗る。民子は田島に事情を聞こうとするが、田島は詳しいことは聞かないで欲しいと話す。

 ある日、民子の家に虻田がやってくる。彼は民子に惚れており結婚したいと考えていて様々な差し入れを持って来ていた。虻田は改めて民子に結婚の意思がないかを尋ねるが彼女は断る。虻田は民子に乱暴をしようとするが、民子に拒まれ帰っていく。田島がその場に訪れるが、民子はどうして助けてくれなかったのかと怒る。

 民子の夫の3回忌が行われる。集まった近隣の住民は民子が一人で牧場を続けていることを心配する。虻田がまた差し入れを持ってやってくる。またも結婚の話を出す虻田だったが、民子に断られる。執拗に迫る虻田に民子は悲鳴をあげる。それを聞いた田島がやって来て虻田に水を浴びせかける。虻田は逃げ帰るが、しばらくして兄弟を連れて戻ってくる。ケンカとなるが田島は虻田の弟たちを一蹴する。虻田は謝り手打ちをしようと言い出す。それを武志が見ていた。その夜物置に食事を運んで来た武志は田島の活躍を褒めるが、母に見たことを喋ってしまったことを白状し、田島に叱られる。そこへ虻田兄弟がやって来て、手打ちだと言い酒を飲みに誘うが田島は断る。すると虻田は酒や女を連れ込んで物置で宴会を始める。

 作業をしていた民子が腰を痛め入院することに。留守を預かった田島は武志をともに仕事をこなす。虻田もそれに協力する。見舞いに来た近所の人間に民子は農場を続ける理由を話す。ある夜民子がいないため武志は物置に来て田島と一緒に寝たいと話す。田島は自分の父親が自殺した話を武志にする。

 民子が退院して家に戻ってくる。民子の従兄弟勝男が妻を連れ民子の家にやってくる。夕食時、勝男は民子の民子の女学生時代の話をする。その後民子は夫と駆け落ち同然で田舎を飛び出したが、駅に見送りに来たのは勝男だけだった。翌日勝男は民子は可哀想なんだと言い残し去っていく。

 田島は乗馬が得意で武志や民子を馬に乗せる。駅に田島の兄がやってくる。兄は土産だとコーヒーサイフォンを渡す。教師をしていた兄だったが、田島が起こした事件がきっかけで教師をやめ塾を開いていることを話す。兄は田島にいつまで今の所にいるつもりだと話すと田島はできる限りいたいと思っていると答える。

 その夜コーヒーを入れている田島の元へ民子がやってくる。民子は博多にいたことを話す。田島は仕事が辛くないかと尋ねると民子は仕事を続ける理由を語る。そして田島にいつまでいてくれるのかと問い、田島は奥さん次第だと答える。

 田島は牧場の馬に乗り草競馬に出場、見事優勝する。しかし会場に刑事がきており、田島に声をかける。その後田島と民子、武志は街の祭りを見にいく。民子が田島の服を買いに行くが、その間に田島は刑事たちが自分を見張っているのに気づく。

 その夜、田島は民子にまた旅に出ると話す。理由を問われ、2年前に妻の葬式で暴言を吐いた相手を殺してしまったことを告白する。その夜、牛が病気となる。獣医を呼んで徹夜で治療をしてもらう。民子は田島に本音を伝える。治療のかいがあり牛は持ち直す。

 翌朝民子は武志に田島が出て行くことを伝える。武志は信じられずにいたが、パトカーがきて田島は刑事に連行されて行く。民子は武志にお金を渡し田島に渡させる。

 冬。田島の裁判が行われ懲役刑となる。田島は刑事に列車で護送される。ある駅で停車中、虻田が列車の窓から田島を見つけ声をかける。列車が動き出し田島の乗る車両に民子と虻田がやってくる。虻田は田島に聞こえるように民子の現状を尋ね、民子が牧場を辞め何年の先に帰ってくる夫を待つために中標津の街で働いていると話す。民子は刑事に断って田島にハンカチを渡す。

 

 

 健さんの没後10周年ということでBS松竹東急が健さんの映画を何本か放送していたうちの1本。このブログでまだ取り上げていなかったので鑑賞。

 昨年秋にNHKでリメイク版とその続編が放送されたものを見ていたので新鮮味はないかなと思っていたが、リメイク版はオリジナルとは異なる設定などがあったため、オリジナルの良さを改めて感じることに。NHK版は阿部寛が少し喋りすぎだと感じており、映画もそんなだっけと思っていたが、やはり健さんは寡黙だった(笑 ハナ肇演じる虻田が最初に民子を襲った時、何もしないで怒られた健さんがもどかしい。しかしその後再度同じことが起こった時の健さんは素早かった。虻田3兄弟との対決もあっという間に相手をのしちゃったし。

 健さんが武志に幼少時代のことを語る場面や民子の駆け落ちなど、リメイク版にもあったかしら?改めて観てみるとオリジナルは作りが丁寧だと感じる。健さん演じる田島や倍賞さん演じる民子の人となりをキチンと描いているんだなぁと今更ながら。

 

 本作の見どころは何といってもラストシーン。ハナ肇演じる虻田のわざとらしいセリフが泣かせる。あまりシーンに合っていないBGMが流れるのも今見ると不思議に調和しているように感じるのも不思議。健さん映画の中でも、山田洋次監督作品の中でも一番だと思える、記憶に残るラストシーン。「黄色いハンカチ」にも負けない名ラストシーンだと思うがどうだろうか。

 

 そういえば今回初めて知ったが、武志役の吉岡秀隆さん。本作の出演がきっかけで「男はつらいよ」の満男役に抜擢されたのね。確かに本作でも少年ながら見事な役者ぶり。もともと「シェーン」にインスパイアされて作られた作品らしいが、ラスト前、パトカーに連行されて行く田島を追いかける武志少年の叫びは切なかった。「シェーン」のラストには叶わないかもしれないが、それはこのシーンが映画のラストではなかったためだろう。

 余談だが、初めて観た時はこの別れのシーンの後が続くのが解せなかったが、ラストの列車の中のシーンを見て納得した覚えがある。

 

 もう一つ蛇足。NHK版を見て、このストーリーを4つの季節に区切っていたのが不思議だったが、オリジナルである本作もそういう設定だったのね。春に出会いがあり、夏に健さんが戻ってきて、慣れ親しんだ後に秋の祭り。そして裁判が行われる冬。あぁなるほどね。

 wikiにも4つの季節ごとのあらすじが書かれている。そのwikiにはラスト、民子が田島に渡すハンカチが黄色だと書かれていたので、確認したら確かにその通り。しかし「黄色いハンカチ」ほどの黄色ではなかったことをメモしておこう。 

 

 同じBS松竹東急でその「黄色いハンカチ」も放送された。なぜかこのブログではまだ取り上げていないので、そちらも観ることにしよう。

 

あきない世傳 金と銀13 大海篇 高田郁

●あきない世傳 金と銀13 大海篇 高田郁

 五鈴屋として吉原での衣装競べに出るが優勝はできず。それでも幸は菊栄と新店舗を開き、力造が吉次のための新色を生み出すなど、商売は順調に伸びる。そんな中、新店舗が二重に売られていたことが発覚、店を閉めることに。以前の木綿の買い占めや店の二重売りなどが音羽屋の仕業だと判明、音羽屋は捕まってしまう。様々な試練を乗り越え、五鈴屋江戸本店は16周年を迎える。

 

 以下の13章からなる。

 

1章 北国春景 1764年

 幸と菊栄 大文字市兵衛に誘われ吉原へ行き、吉原の変化を聞く

 吉原では太夫がいなくなり、客層も変化

 幸 五鈴屋も同じだと思う

2章 新たな時代へ

 元号が変わる

 大阪から鉄助、手代3名、丁稚2名が江戸へやってくる

 今津文次郎から 以前あった綿の買い占めは偽名、伊勢屋吉兵衛によるものと判明

 大吉 手代に

 幸 新店舗を検討、菊栄も新店舗を探し見つかるが大きすぎ 笄が完成

 新たな貨幣である銀貨が発行される

3章 秋立つ

 歌扇の衣装 黒地に5つの白紋染

 お才から田原屋が音羽屋へ恨みを持っていること、音羽屋は若い時に小紋染を考えついていたことを聞く

 幸 砥川と吉原へ 扇屋宗右衛門と花扇と会う。その後歌扇と会うが、彼女は衣装競べへの参加を勘弁して欲しいと話す 幸 歌扇の立場を話す

 幸 結と4年ぶりに再会、今後のことで忠告される

4章 華いくさ

 幸 新店舗を探すが良い物件がなく、菊次から白粉商末広屋を勧められる

 衣装競べを誰かが煽っていると聞く

 長月一日 衣装競べが行われる その場に音羽屋と惣次が同席しているのを見かける

5章 時運

 衣装競べの結果、音羽屋の花扇が1位、歌扇は2位となる

 幸は菊栄と新店舗を分けて使うことに

 菊栄の笄 相撲開幕日に売り出し 銀3匁で

6章 幕開き 1765年

 新店舗の暖簾を力造に頼む

 江戸本店13周年 砥川から音羽屋が吉原で法外な儲けを出していると聞く

 冬 浅草で火事が発生 暖かくするための手段で孫六織子と紋羽織を思い出す

 幸 新店舗に移る前夜 菊栄からお守りとして笄をもらう

 町会で贔屓屋と会う

 新店舗で早速賢輔が穂積家から嫁荷の注文があるかもしれないと話す

 初午 菊栄の店開店 歌扇が菊栄のために歌を歌う

7章 次なる一手

 幸 新店舗呉服町店を井筒屋が探っていると聞く

 力造 吉次のための新しい色に取り組み1年半、まだ気に入ってもらえず

 寄合で相撲双六のおかげで売り上げが伸びたことが報告される、恵比寿屋は下野国のい木綿栽培の現状を話す 幸は紋羽織のことを皆に話し教えてもらう

 幸 砥川の妻が吉原の出だと知る

8章 恋江戸染 1766年

 近江屋が鮒寿司を持ってくる その際佐助が以前小間物屋の娘さよと恋をしていたことを聞く、それが縁談を断る理由らしいと

 穂積家の嫁荷の注文が正式に決まる

 力造が吉次のために作っていた新しい色、王子色が完成する

 如月29日、芝居町で火事

 町会 贔屓屋盆踊りを提案 幸 王子色で揃いの小物を作り売ることを提案

 文月15日 吉次の新たな演目初演 王子色が人気となる

9章 奈落

 寄合で下野国で木綿を白くする技法が見つかったと報告される

 呉服町店が二重売りされていたことが判明 売った末広屋が不正を働いた模様

 名主に買ったもう一方の相手の名前を聞くと、井筒屋保晴だと判明、井筒屋は店を五鈴屋に売るつもりがないとのこと

10章 激浪

 呉服町店を閉めることに

 江戸2カ所で時間をおいて火事発生 幸 逃げる途中に気を失う

11章 一意攻苦

 火事で町がまた元気をなくす、富五郎が五鈴屋へ 以前の支払いだと20両を差し出す

 幸 組合の会所の再建に積み立てておいた100両を出す

 幸 田原町の店全体で一緒にできることを思いつく 菊栄は新店舗を田原町

 寄合 田原町の店を双六にすることを提案

12章 分袂歌

 幸 和三郎に町全体で統一した看板を作ってもらうことに

 音羽屋が謀書謀判で捕まる 幸 惣次に音羽屋が捕まった理由を聞く

 幸 捕まった結の身元引き受け人として迎えに行くが、結は一人去って行く

13章 金と銀

 幸 和泉屋から紋羽織の手法を教えてもらう

 幸 賢輔に助けてもらった礼を言い、賢輔の気持ちを知ることに

 田原町の店を双六に見立てたことが評判となる

 江戸本店16周年 16年前の開店日に店を訪れた母親が娘を連れて店へ

 

 シリーズ13作目にしてシリーズ最終作。ざっくりとしたあらすじは冒頭に書いた通り。

 吉原での衣装競べと新店舗の話で終わるかと思ったが、そんな簡単な幸せで終わらせてくれる著者ではなかった(笑 新店舗を菊栄と一緒に始めてそれが上手く行き始めた時には、あぁこれで終わりかと思ったが、その新店舗が二重売りされていることが発覚、しかも家の権利は相手側にあるとされ、五鈴屋と菊栄はともに店を閉めることに。そこから音羽屋が捕まり、結局二重売りも音羽屋が絡んでいたことが判明、そこに惣次も一枚噛んでおり…。

 最終巻となる本作でも、幸は試練を与えられるのであった(笑 幸は江戸本店に力を入れることとし、町会の皆と力を合わせて町全体を盛り上げる工夫をして話は終わる。

 

 何冊か前の感想でも書いたが、著者の「みをつくし」シリーズも終盤バタバタした感じがあったが、本シリーズも同じような結末となってしまった。新店舗の二重売りによるトラブルは本当に必要だったのかしら。このトラブルでシリーズ最終巻であるにもかかわらず、バタバタとして終わってしまった感じが強い。いろいろと汚いことを仕掛けてきた音羽屋が最後に因果応報の報いを受けるのは当然だが、そのための新店舗閉店だとしたら、ちょっとなぁ。

 それ以外にも、賢輔の幸への思いや佐助が縁談を断る理由などこの話をもう少し読みたかったのに、と思う伏線めいたものが多すぎる。紋羽織の件も中途半端だし。力造が編み出した吉次のための王子色を、町会全体の盛り上げと一緒にラストに持ってきてもよかったのではないかと思うんだけどなぁ。

 

 それでもラスト、江戸本店16周年の店先を描いた場面は良かった。6巻の最終章で描かれたあの若い母親がここで再登場してくるとは。あのシーン、金のない若い母親の気持ちがわかるだけに幸たちが何もできず、お待ちしています、と声掛けで終わったのが妙に印象に残っていたが、シリーズ最後にそれを持ってくるとはなぁ。ここは涙せずにはいられなかった。と考えると、新店舗である呉服町店は閉店していないとこのシーンは説得力がないので、やっぱり二重売りのトラブルは必要だったのか(笑

 

 13作あったシリーズも本作で終了。「みをつくし」は食べ物がテーマであったためとっつきやすい話だったが、本シリーズは着物や反物がテーマで男である自分にはちょっと身近とは言えないものだったが、まぁ楽しく読むことができたシリーズだったかな。

 特別編ということで、後日談を語るものが2冊発行されているらしいが、これはまたしばらく時間を開けて読んだほうが良さそうだ。

 

 そう言えば、NHKでドラマ化されたものも全て観たが、あちらも原作にまして話の進み方が早かったように思う。なかなか良いドラマだったと思うが、原作を知らない人は話にちゃんとついていけたのだろうか。ドラマは智蔵と幸が一緒になるところで終わったが、原作からすれば半分も進んでいない状態。シーズン2が製作されるのだろうか。幸役の小芝風花さん、ドラマに引っ張りだこの状態だから、作られるとしてもちょっと先の話になりそう。

 

 

氷菓 米澤穂信

氷菓 米澤穂信

 

 神山高校1年生の折木奉太郎は、姉の勧めもあり、同級生である千反田える福部里志伊原摩耶花たちとともに古典部に入部する。奉太郎は自身の身の回りで起こる不思議な事柄の謎を解いていくが、そんな奉太郎を見たえるが彼にある謎を解いてほしいと頼んでくる。それは古典部にも関わる話であり、文集を作る題材にもなるため、奉太郎は皆とともにその謎解きに挑むことに。

 

 9章からなる連作短編集。

 あらすじはwikiに詳しいため割愛。謎の部分だけを簡単に紹介。

 

2章 部室が一時的に密室となった謎

3章 同じ本を毎週金曜日に借りていく複数の女生徒の謎

4章 えるが昔伯父と会話した内容、その時えるが泣いた理由

5章 壁新聞部遠垣内がその部室である生物講義室を探されるのを拒む理由

6章 32年前の文集に記載された、33年前にえるの伯父関谷に起きた事柄の謎

7章 姉からの手紙で知らされた33年前の真相と奉太郎の推理の食い違い

8章 弓道場で発生した新たな謎 内容は明かされない

 

 

 Amazonのオススメにあった一冊。日常の謎系ということで読むことに。

 高校が舞台であり、入学したばかりの高校生奉太郎が主人公。省エネで動こうとする彼の周りで起きるちょっと不思議な事件。好奇心旺盛なえるがその謎を解いてほしいと奉太郎に頼み、彼は仕方なくその力を発揮するというパターン。

 

 謎がいかにも高校生らしい、本当にちょっとした謎なのがよかった。ただ2章の部室密室の謎はあまりに無理筋だと思い、その先を読むのに躊躇したが、これ以降の謎はなかなか面白かった。後半、謎はえるの伯父に33年前に起きたことに集中していき、それを過去の文集などを手掛かりに推理していく様は高校が舞台であることをうまく生かした設定だと思う。一番の謎に思われたこの謎を奉太郎が解いた後に、ちょっとしたどんでん返しがあるのも上手く、文集のタイトルの意味や文化祭の別の呼び名などが用意されていたのも見事だった。

 

 気軽に読み始めた小説だったが、なかなか凝った仕上がりで驚いたが、アニメ化や映画化もされているようでさもありなん、といったところか。

 本作はシリーズ化されているようで、続編もちょっと読んでみようと思う。

 

博士の異常な愛情 1964

●717 博士の異常な愛情

 西側諸国高官の間で1年前からソ連で最終兵器絶滅装置が作られているとの噂があった。

 アメリカ空軍基地のマンドレイク大佐は上官であるリッパー将軍からR作戦実施を命じられる。その作戦は滞空警戒中のB52部隊によるソ連への核兵器攻撃だった。作戦と同時にマクドレイクは私物のラジオを回収、基地の封鎖も命じられる。

 命令を受けたB52のコング少佐は命令を信じられず基地へ確認を取るがやはり命令は間違っていなかった。そのため妨害を受けないように作戦通り通信を切断する。その頃ダージドソン将軍はR作戦命令が出たことを知らされペンタゴンへ急行する。

 マンドレイクは基地内で偶然ラジオを聞き、国内に危機が迫っていないことを確認。それをリッパーに伝え命令の中止を訴えるが、リッパーは命令は自分の考えで出したことを伝える。

 ペンタゴンではダージドソンが大統領に事情を説明、命令解除のための暗号も不明だと伝える。大統領は駐米ソ連大使をペンタゴンに呼び、ソ連首相に電話をし事情を説明、B52を追撃するように依頼する。しかし大使は攻撃された場合、絶滅装置が発動すると話す。

 その頃軍の指示で基地は攻撃されるが、封鎖状態にあった基地側の兵士も応戦していた。マンドレイクはリッパーから話を聞き、軍への反撃に加担することに。

 ペンタゴンでは大統領がストレンジラブ博士に絶滅装置について話を聞いていた。

 基地では攻撃が激しくなり、兵士たちが投降、それを見たリッパーは絶望し自殺してしまう。

 その頃コング少佐のB52はソ連軍の攻撃を受け、通信機器が故障、燃料タンクからも燃料漏れが発生する事態に陥っていた。

 軍の兵士たちが基地内へ入ってきてマンドレイクを発見、連行しようとするが、話を聞いたマンドレイクは大統領に事情を説明するため電話をしようとする。マンドレイクはリッパーだけが知る攻撃命令解除の暗号を突き止めていたのだった。

  マンドレイクの電話で、攻撃命令が解除される。安心したペンタゴンソ連へ連絡。全34機のB52中、30機が帰還、4機が撃墜されたと考えていたが、撃墜されたのは3機だけだった。コング少佐のB52だけが通信を受けることができず、攻撃を続行していた。大統領はソ連首相にB52の攻撃目標を伝え、撃墜を依頼する。しかしコング少佐のB52は燃料不足から攻撃目標を近場の基地へ変更していた。

 コング少佐のB52攻撃目標に到達するが、爆弾投下のためのハッチが故障で開かなかった。少佐は手動でハッチを開くが、爆弾とともに投下され、爆弾が炸裂する。

 ペンタゴンでは絶滅装置が作動したことを受け、ストレンジラブ博士が人類が生き延びるための手段を説明していた。それに対しダージドソンも熱弁をふるい始める。

 核爆発の映像とともにWe'll meet againが流れ映画は終わる。

 

  これも子供の頃からタイトルだけは知っていたが初見。

 核抑止力の元の冷戦状態の米ソを描いた作品だが、コメディとして描かれている。登場する政治家や軍のトップは皆どこかおかしい。事件の引き金を引く将軍は、今で言う陰謀論者だし、一見真面目そうな大統領はソ連首相を子供のような言い合いをするし、軍のトップの将軍は女好きの激情型だし。

 トップ下の人間がまともなのもある意味皮肉なのだろう。マンドレイクはいち早くリッパーの異常さに気づき攻撃命令を止めようとするし、B52パオロットの少佐も命令が間違いではないかと基地に確認を取ろうとするし。ただこの少佐、最後は爆弾にまたがって西部劇のカウボーイみたいになってしまっていたが(笑 ラストのペンタゴンでの言い合いも全く現状を理解していないトップらしさが出ていてブラックコメディのラストにふさわしい。

 

 アメリカ映画のスゴさはこのような作品を冷戦時代にコメディとして作ることができることだと思う。それともキューブリックがスゴイのか。彼の監督作品を観たいなぁ。

 

アラジン

●716 アラジン 2019

 船で航海する家族。父親が子供たちにアラジンの話をし始める…

 アラジンは市場で相棒の猿アブーと盗みを働く一方で、盗んだ食べ物をお腹をすかせた子供たちに分けてやる優しい青年だった。市場にジャスミン王女がきて、やはりお腹をすかせた子供たちに売り物であるパンを与えるが、店主は金を払えを怒ってしまう。店主はジャスミンを王女だとはわからず、金を持たないジャスミンのブレスレットを奪おうとする。そこへアラジンが現れ、ブレスレットを店主に渡すが巧みに奪い返す。店主がそれに気づき二人は追われるハメに。なんとか逃げた二人はお互いのことを話し合う。ジャスミンは正体を隠し王女の侍女だと話す。帰ろうとしたジャスミンはブレスレットがなくなっていることに気づき、アラジンを疑い怒って帰ってしまう。アラジンはブレスレットを盗んでいなかったが、アブーが盗んでいたのだった。

 ジャスミンは城でアンダース王子と会う。彼女は婿を取り結婚させられようとしていた。アラジンはアブーからブレスレットを受け取り、城に潜入。ジャスミンに返しに来る。そして翌日もまた会いに来ると話し帰ろうとするが、ジャファー大臣に見つかってしまう。ジャファーはジャスミンが本物の王女であることを告げ、アラジンは結婚できないと教える。そしてアラジンが金持ちになりたいのならば、と魔法の洞窟で魔法のランプをとって来るようにと話す。

 アラジンはアブーとともに洞窟へ。中で魔法のじゅうたんを助け仲間になる。そして魔法のランプを見つけるが、アブーが掟を破ったため洞窟の主の怒りを買う。ランプをジャファーに奪われそうになるが、アブーが盗み返す。ランプは手に入れたが、洞窟に閉じ込められたアラジン。しかしアブーがランプをこすりジーニーが現れる。ジーニーに力で洞窟から脱出したアラジンは3つの願いを言えとジーニーに迫られる。

 アラジンは王子になりたいと告げ、ジーニーの魔法で王子となり、ジャスミンに会いに行く。夜、アラジンは魔法のじゅうたんでジャスミンとともに空を飛ぶ。しかしそれをジャファーのインコであるイアーゴが見ており、翌日アラジンはジャファーに海へ落とされてしまう。ジーニーがアラジンを助けるために2つ目の願い事を使ってしまう。城に戻ったアラジンはジャファーがジャファーが悪いヤツである事を国王に告げ、ジャファーは牢に入ることに。アラジンは国王に気に入られジャスミンと結婚できることに。ジーニーは嘘をついたまま結婚するのはよくないと忠告するが、アラジンは聞く耳を持たなかった。アラジンはランプに戻ってしまう。

 ジャファーはイアーゴの力を借りて脱獄。アラジンは街へ出ていたが、イアーゴによりランプを盗まれてしまう。ランプを手に入れたジャファーは国王の前へ。そしてランプの力で自らが国王となり、国王やジャスミンを捕まえ、戦争を起こそうとする。ジャスミンは衛兵であるハキームに考え直すように話しハキームは同意する。怒ったジャファーは2つ目の願い事を利用し最強の魔術師になる。

 ジャファーはアラジンを別世界へ飛ばし、国王を痛めつけジャスミンに結婚するように迫る。ジャスミンは仕方なくジャファーの願いを聞き入れる。結婚式当日、アラジンが魔法のじゅうたんでやって来る。隙をついてジャスミンがジャファーからランプを取り戻すが、ジャファーは魔法の力でそれを奪い返す。打つ手がなくなったアラジンだったが、ジーニーよりは強くなれないとジャファーを挑発する。ジャファーは3つ目の願いとしてジーニーよりも強くなるように命じる。それによりジャファーはジーニーに代わりにランプに吸い込まれてしまう。

 全てが解決し、アラジンは最後の願いとしてジーニーを自由にする事を望む。ジーニーは晴れて自由の身となり侍女とともに世界旅行へ出ることに。国王はジャスミンを次の王とすることにし、国王となったジャスミンは法律も変えることができるようになった。城を去るアラジンの前にジャスミンが現れ、二人はキスをする。

 

 これも金ローで放送されていたので鑑賞したもの。ハリーポッターシリーズと同様、ディズニー映画もTV放送があると娘がよく観ており、それを横で眺めていた記憶があるが、本作を観て自分がアラジンのストーリーを全く知らなかったことに気づいた(笑

 

 アラジンという主人公が魔法のランプを使って悪者を退治する話、だと思っており、まぁその通りの話なのだが(笑 ランプの入手はその悪者にそそのかされたからだし、悪者も一度は捕まってしまうし、なんてあたりは全く知らなかった。

 ヒロインが人質を取られて仕方なく悪者と結婚することに同意する、なんていうのはこんな昔からあったストーリーというのもちょっと驚いた。あぁ昔話は現在の様々な話の基になっているのね、やっぱり。

 ジーニーとアラジンの間に友情が芽生えるというのも知らなかったが、これはアニメ版でも同じなのだろうか。ランプの精がご主人様の言うことはなんでも聞く、というイメージがあったが(実際終盤その通りになるが)、命令以外のことをランプの精が自分の考えで行ってしまうのね。そう言えば終盤、衛兵も同じ立場に立たされるけど、これは現代ならではの改変なのかしら。なんか政治的な意味合いが強いような気もするけど。

 ということで有名なアニメ版を見たいと思ったけど、Amazonではレンタル扱いなのね。そうか、ディズニーチャンネルがあるからAmazonでは無料で見れないようになっているのか。ちょっと残念。

 

伊東園ホテル本館/別館/松川館の喫煙所

伊東園ホテル本館/別館/松川館の喫煙所

 

 先日伊東にある伊東園ホテル別館に宿泊してきた。伊東園グループはここ1、2年で全室禁煙になったらしい(公式HPを見てもいつからそうなったかは不明)。喫煙者である私は館内でタバコが吸えるかどうか不安になり、事前に喫煙できる場所があるかどうかネットで調べたが確認できなかった。この3館は湯めぐりができるため、別館以外の大浴場にも入ることができた。その際に3館の喫煙所の場所を確認できたので、同じように感じる人のためにメモ。

 

別館

 1Fフロント

 フロントの左に「喫煙所出入口」がある。ガラスの向こうに小さく見えているのが灰皿。ドアから外に出ると駐車場のとなっており、その一角に灰皿がある。屋根がないため雨が降っていると濡れるので注意。



本館

 本館外、看板が見えるが、その手前に灰皿がある

 看板下の灰皿

 本館内にある案内図。エントランス横に「喫煙コーナー」とあるのが、上記写真の灰皿のことだと思われる。ただし案内図では「喫煙コーナー」がエントランス左になっているが、実際には右にある




松川館

 ネットの口コミで唯一情報があったホテル。喫煙所が随分と遠かった、との口コミがあった。現地をみるとその口コミの理由が判明。喫煙所の写真を取り忘れたので、地図とその他写真で説明する。

 Googleマップでの伊東園ホテル3館。松川館の左下に建物が見えるが、これも松川館の一部。

 次に松川館の中にあった案内図

 福寿荘と末広荘の記載があるが、上記マップで「松川館」と記載があるのが、福寿荘。その左に見えていた建物が末広荘だと思われる。この2つの建物は地下通路で繋がっている。

 次の写真は、その地下通路。

 ずいぶんと長い通路であるのがわかる。写真がなく申し訳ないが、松川館の喫煙所は、この末広荘の1F玄関出口にある。つまり、松川館に宿泊する客の多くは、福寿荘側に泊まっていると思われるが(上図案内図参照、一部末広荘側にも客室はある)、喫煙者はこの地下通路を通って福寿荘側に行かないと喫煙所にたどり着けないと思われ、それが先に書いた口コミの内容と一致していると思われる。

 

結論

 伊東園ホテル本館、別館、松川館の3館ともホテル敷地内に喫煙所がある。

 ただし松川館は宿泊する部屋によっては、ホテル内?を長く移動しないと喫煙所にたどり着けない可能性あり。

 本館は1F玄関外に、別館は1Fフロント横に、それぞれ喫煙所あり。宿泊する部屋から遠い可能性もあるが、1Fに喫煙所があるならば許容範囲内ではないだろうか。

 

 

 



 

 

 

 

 

ナイル殺人事件

●715 ナイル殺人事件 1978

 2022年製作のリメイク版を見たばかりなので、オリジナルである本作を鑑賞。基本的なストーリーは同じなのであらすじは省略して、リメイク版との違いを。

 

・リメイク版冒頭のポアロの軍隊時代のシーンは当然なし

・ジャッキーとサイモンがリネットと出会うシーンにポアロは存在せず。ポアロが事件関係者と出会うのはリネットたちの新婚旅行先であるエジプト。

ポアロの相棒となるのはレイス大佐。リメイク版のブークの立場?

・リメイク版では、リネットの結婚パーティの参加者が船に乗ることになるが、オリジナルである本作では、彼らは偶然船に乗り合わせることになっただけ。船に乗る前のホテルから同行している。

 

 ストーリー上の違いは、上記の通り。2時間20分の映画だが、1時間が経過したところで、ジャッキーがサイモンを誤射事件が発生。その後、40分かけてポアロの取り調べが行われ、10分弱で第2、第3の事件が発生。残りの30分でポアロが謎解きをする、という時間配分での展開。

 

 ポアロが容疑者たちを取り調べ、彼らに犯行のチャンスがあったことを画面上で示すのはリメイク版と同じだが、オリジナルである本作の方が、その描き方が実に丁寧だった。40分も時間を使っているからだろう。

 

 第1の犯行に使われた、スカーフとマニキュアの紛失もキチンと描かれているが、初見であれば気にせず見過ごしてしまうような描き方。特にマニキュアの紛失の方は、理由を知っていても、あの描き方ではなんだかよくわからないと思う(笑

 

 リメイク版での感想で、ポアロの謎解きシーンがあっさりし過ぎだと書いた。本作では30分弱が使われている。リメイク版の謎解きシーンの時間を計ってみたら実質約15分程度。子供の頃に見た記憶だったが、間違いではなかったようだ(笑

 

 これもリメイク版での感想で、物語前半部分にあたる、サイモンとリネットとの出会いやジャッキーがしつこく新婚二人の前に現れるシーンが丁寧に描かれている、と書いたが、本作でもこれは丁寧に描かれていた。というか、本作の前半部分はほとんど記憶になかった。前半で記憶に残っていたのは、神殿?でジャッキーが突然新婚二人の前に登場するシーン。

 ジャッキー役のミアファローの表情が記憶に残っている。前半の狂気に満ちた表情、後半始めの誤射してしまった後の取り乱した表情、そしてラスト、ポアロに真相を見抜かれた後の表情。彼女の出演した作品はこの1本しか観たことがないが、未だにその表情は忘れられない。

 

 出演している他の俳優のことで。金持ちの婦人の付き添い看護婦?役はハリーポッターの先生だし、女性作家はジェシカおばさんな訳で。当時は豪華俳優陣と言われてもピンとこなかったが、この歳になるとこの映画もなかなかスゴい人たちが出ていたことがわかる。この映画のwikiを見ていたら、あの有名なバッグのバーキンの由来になった女性まで出演しているらしいし。そう言えば、船に皆が乗っているところで、この俳優陣が横一列に並ぶシーンがあったけど、そういうことなんだろうなぁ。

 

 

 最後にミステリーとして。改めてポアロが第1の事件で引っかかった部分に感心した。現場にジャッキーを示すJの血文字を残しながら、一番容疑をかけやすいはずの彼女の拳銃を隠した、という矛盾。ポアロさすがだ(笑

 しかしさらに考えると、どうしてサイモンはあの拳銃を川へ投げ捨てたのだろう?銃弾を補充して2発しか撃っていないように細工したのだから、捨てる必要はなかったのでは?消音に利用したスカーフやマニキュアのついたハンカチは捨てる必要があったと思うが。そのための重しに拳銃を使った?いやいや、本作では重しに灰皿も一緒に入っていたからなぁ。と思ってネットで調べたら、yahoo知恵袋に同じ質問をした人がいた(笑 そうか、あのままだと拳銃がサロンで発見され、その拳銃でリネットが殺されたことがバレちゃいけないのか。納得。