白桐ノ夢 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●白桐ノ夢 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第25作。季節は夏。辰平からの手紙と殴られ屋向田源兵衛との出会い、家基への鰻差し入れと早朝道場への襲撃、武左衛門の怪我と女衆の深川見物、深川見物の続きと向田源兵衛仇討ちと奸三郎丸多面との対峙、武左衛門娘早苗の奉公と西の丸での奸三郎丸との戦いと向田源兵衛への手助け。

 読本を挟んでの25作目。前作で田沼の刺客5人の名が明かされ、その戦いの続きとなると思いきや、そちらは一旦休止で多方面に話は展開した。

 その1。新キャラ向田源兵衛の登場。「殴られ屋」というどこかで聞いたような名前の変な商売を始める源兵衛。謎めいているが、剣の腕は確か。その謎が明かされ、最後には磐音が手助けをし、旅立っていく。

 その2。女衆の深川見物。主要登場人物の中の女性陣が一斉に会し、深川見物へ出かける。シリーズでは裏で男たちを支える女性陣が楽しんでいる風景が描かれる。時代物では珍しい場面。

 その3。新たな敵、奸三郎丸多面の登場。日光社参で対峙したあの雑賀衆の親分の子供。2年で磐音と対決するほど成長したちょっとファンタジー?が入ったキャラクター(笑 このシリーズでは前にも「狐火ノ杜」でおこんが狐に助けられる、という話があったが、今回はそれ以上。田沼の刺客5人よりも恐ろしい敵かと思いきや、あっさりと今作の中で退治することに成功。

 その4。読本の読者からのアンケートにもあった人気キャラ武左衛門の今後を左右するかもしれない娘早苗の奉公話。最後に武左衛門が磐音に頭を下げに来る場面は久しぶりにちょっと泣けた。

 その他。新生尚武館道場がらみでいくつか。若手の総当たり戦が開始され、サブキャラ的な若手たちが輝き始めた感じがする。また、国瑞嫁桜子も新婚ゆえの悩みから尚武館で稽古をすることに。さらに、しばらく登場していなかった元雑賀衆の霧子と隠密弥助が登場。特に霧子は道場にいるはずなのに、ここまでほぼ出番がなかったのでちょっとあれっ?と思っているところだった。

 第二部と佐伯さんが言っていたが、まだまだ話は色々な展開を見せそうな予感。