サイン会はいかが? 大崎梢

●サイン会はいかが? 大崎梢

 「成風堂書店事件メモ」シリーズの第3作、前作が長編だったが、今回は短編集に戻った。

 以下の5編からなる。

「取り寄せトラップ」〜本の取り寄せが本人たちがしたものではない事件が続く
「君と語る永遠」〜本屋に社会科見学で訪れた小学生ヒロキが不思議な行動を取る
「バイト金森くんの告白」〜バイト金森くんが学生時代に書店で出会った女性
「サイン会はいかが?」〜人気作家のサイン会が開かれるがそこで起きる事件
「ヤギさんの忘れもの」〜常連客がなくした封筒を幼子がしまった場所

 

 前作が意外な?長編だったが、本作は短編集に戻り、期待通りの仕上がり。本作はすべての話が書店内で起きる事件であり、このシリーズの真骨頂といったところか。

 第1作でも書いたが、このシリーズは謎解き後の爽快感が心地良い。第1話の「取り寄せトラップ」こそちょっと後味の悪い展開になってしまっているが、第2話以降はまさに「ほんわか」できる。特に「君と語る永遠」は傑作。この話ばかりは爽快感ではなく、感動させられた。これまた第1作でも書いたように、このシリーズは「おけら長屋」シリーズに匹敵すると思う。

 第3話以降も、「バイトくん」「人気作家」「常連客」と書店にはなくてはならない人たちが謎を提供、いつも通り多絵ちゃんが見事に解決してくれる。安定感もあり、爽快感も味わえる。続編はあと1冊のようだが、やはり読まずにはいられない(笑