平台がおまちかね 大崎梢

●平台がおまちかね 大崎梢

 「成風堂」シリーズを読み終えてしまったので、同じ大崎梢さんの別シリーズをと思い読む。「成風堂」シリーズの(現時点での)最後の作品にも登場した出版社営業部員の井辻くんが探偵役をするもの。

 以下の5編からなる短編集。

 

「平台がおまちかね」〜井辻が初めて訪れた書店の店長に冷たくあしらわれた理由は…
「マドンナの憂鬱な棚」〜いつも元気な書店員の女性が元気をなくした理由は…
「贈呈式で会いましょう」〜自社の受賞作家が贈呈式直前に行方不明になってしまう
「絵本の神さま」〜井辻が訪れた書店が閉店、店主が残した謎の言葉の意味は…
「ときめきのポップスター」〜とある書店でポップコンテストが開催されるが…

 

 「成風堂」シリーズは書店員さんからの視点で事件が描かれていたが、本作は出版社営業部員からの視点。全シリーズ同様、書店や出版社の内情が描かれ、興味深い。

 「成風堂」シリーズもそうだったが、本作も事件解決後の爽やかさが特徴であり、気持ちよく読み終えることができる。

 「マドンナの憂鬱な棚」での各社営業部員たちの活躍、「贈呈式で会いましょう」での贈呈式での挨拶。極め付けは「絵本の神さま」のラスト。何気なく登場していた1枚の写真が見事な伏線になっており、感動してしまった。

 ラストの「ときめきのポップスター」では、先に読んだ「ようこそ授賞式の夕べに」以来、女性付きを公言して来た井辻くんの仲間真柴のがっかり話でオチがつく(笑 いや、読者にとって本当のオチは、成風堂の「あの」女性店員が名前だけ登場してきたこと。こんなところで2つのシリーズをリンクさせるなんて。見事。