スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 心をつなぐスープカレー 友井羊

●スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 心をつなぐスープカレー 友井羊

 前作に続きシリーズ第6作。以下の5編+2αからなる。

 

プロローグ

 理恵が麻野に真剣な表情であることを伝えようとしていた…

 

「人参リモートワープ」

 理恵がリモート会議をしていると同僚の千秋が「人参がワープした…」という謎の言葉を残す。後日、理恵は同僚の小倉から恋人の千秋から別れを告げられたが理由がわからないと相談される。謎の言葉の意味から真相が明かされる。

 

「奏子ちゃんは学校に行かない」

 露の同級生奏子はクラスの皐にクッキーをあげるが皐はアレルギー症状を発症してしまう。それが原因で奏子は登校拒否となってしまう。露は奏子から事情を聞き、真相を解明しようと調査を始める。

 

「ひったくりとデリバリー」

 理恵は「イタリヤ惣菜カリヤ」という新しい店を見つけ取材する。店は繁盛していたが、理恵は店の主人狩谷はるかから店のデリバリーで問題があることを告げられる。さらにその後、配達員がひったくり強盗と間違えられる事件まで発生する。理恵は麻野の推理を聞き真相を解明する。

 

「在宅勤務の苦い朝」

 緑川規子は夫昭宏と結婚3年目。仲の良い夫婦だったが、夫がリモートワークを始めたことがきっかけとなり、規子は夫の浮気を疑うようになった。しずく屋で食事をとっていた規子は麻野に事情を説明すると麻野は意外なアドバイスをする。

 

ビーフカレーは巡る」

 理恵が取材で知った「えんとつ軒」が店を閉めることに。店主たつ子の娘勇美は母の作るビーフカレーのレシピを受け継ぎたいと思っていたが、たつ子は理由も言わず頑なに拒否をする。理恵は麻野の助けを借りようとするが、たつ子のカレーは麻野にも関係する店のレシピだった…

 

エピローグ

 理恵は「えんとつ軒」の件の報告を麻野にする。しかしそれはリモートでの会話だった…

 

 前作では麻野の母親が登場、麻野と理恵の仲も進んだように思え、本作での展開を期待していたのだが…。前々作と同様、本編の他にプロローグとエピローグがあり、そのプロローグがさらに期待をさせてくれたのだが、本編に入りプロローグのことはすっかり忘れていた。そしてエピローグで意外な真実が明らかになる。

 本作でシリーズも第6作。定番の展開、登場人物、と安心して読むことのできるシリーズになったが、そこを逆手に取った全編に施された見事なトリック。エピローグを初めて読んだ時には、「えっ?!」となってしまい、もちろんいくつかの場面を読み返すことに。いやぁお見事。コロナ禍の現在の状況を上手く利用している。デリバリーの話なども出てきて、話をまさに今風にしているなぁ、と全く別の感心をしていたのに(笑

 

 伏線が上手い。2話目、4話目で理恵が全く登場しないのだが、これまでのシリーズのことを考えるとこれも不自然さはあまりない。キチンと読んでいれば、スープのシーンで黒板の材料紹介の説明がないことにも気付くし、麻野と理恵の会話にも少し引っかかる場面もある〜「先日いただいたこちらのハム…」など。

 

 意外な面白さのあった本作、当然次の作品も期待したくなる。