ビストロ三軒亭の美味なる秘密 斎藤千輪

●ビストロ三軒亭の美味なる秘密 斎藤千輪

 舞台俳優だった神坂隆一は所属していた演劇ユニットが解散してしまったため、新たな劇団を探している最中。姉京子に誘われ、三軒茶屋のビストロ三軒亭で食事をした隆一は三軒亭でギャルソンとしてバイトをすることに。オーナーシェフ伊勢、ソムリエ室田、ギャルソンの先輩陽介と正輝と共に働き始める。シリーズ2作目。以下の3編からなる短編集。

 

「スフレ」

 隆一はCA長澤律子とその恋人である柏木省吾の担当となる。ダイエットを柏木に勧める律子の話を聞きながら、二人の仲睦まじい姿を隆一は見ていた。5日後柏木が一人で店に。彼は律子が浮気をしているのではと疑っていた。律子からのメールの写真を見た隆一たちはある真相を見抜き、律子の同僚で隆一の姉京子に連絡取る。

 

「カスレ」

 隆一はまさきのサポートとして、ダンサーであるヒカルとマユの担当をする。ヒカルが自分の家の前に置かれていた桐の小物入れや赤飯について話をする。容疑者は、知り合いのアメリカ人留学生、隣に住む婆さん、焼き芋売りの男性の3人。仕事を終えた隆一はヒカルと偶然会い、彼女を家まで送ることに。そこで焼き芋売りを見かける。店で隆一たちは、ヒカルについて話をし真相に辿り着く。その後、ヒカルの家にまた赤飯が置かれる。隆一はヒカルの家へ行く。ヒカルは赤飯とともに置かれたメモを見て真相を知ることになる。


「アントレ」

 店でワイン会が開かれ、陽介が隆一の俳優時代の先輩南を招待する。南は隆一が苦手とする相手だった。会で南は酒の銘柄を当て満足していたが、途中で貶していた日本のワインが褒められることになり、南は暴飲し始める。やがて南はトレイで意識を失ってしまう。後日南の見舞いに行った隆一は南の本当の想いを知ることになる。

 

「エピローグ」

 店のシェフである伊勢の昔の恋人マドカ。彼女は病気治療のためにアメリカにいた。伊勢友人であるタケトがアメリカに行った際にマドカを訪ねるが、彼女の叔母からマドカは旅に出たと言われた帰国した健人は伊勢に告げる。それを知った隆一は浅井小百合に連絡を取る。真相を話に小百合が店に愛犬エルを連れてやってくる。

 

 前作が意外に面白かったので、続編を読むことに。

 前作より1話少ない3話構成。前作では4話中3話が女性客に関係する事件を解決する話だったが(4話目はシェフに関係する事件)、3話中2話が男性客に関係するもの。そのためか少し話の雰囲気が変わったような気もする。

 「スフレ」の浮気疑惑は読んでいればその不自然な行動が目につき、読者にもわかりやすい話。「カスレ」も謎のポイントは方言であるため、知っていればすぐに気づいてしまうだろう。

 そういった意味では、1話目から登場し、明らかに嫌な態度を取り続けた南がメインの3話目が本作の見どころ。1話目でも、3話目の途中までも、徹底的に嫌な人物像だった南が、店で倒れてしまい、その結果隆一は彼の本当の想いを知る展開になるのだが…

 でもなぁ。だからと言って自分だったら、南の取り続けてきた態度は許せないけどなぁ。まぁ若い隆一が許したのだから、オジサンが何を言っても始まらないが(笑

 

 話はサブエピソードとして、隆一の転職や前任者の帰国などがあり、相変わらず隆一の心は揺れ動く。それでも最終話で、店に残ることを宣言した隆一。そしてエピローグでは、シェフとマドカの話に進展が。これは次回作でいよいよマドカの登場となるのか。期待したい。